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【僕の場合】 #680


とある国の
とある村で
とある時代に
僕は生まれた

お父さんに憎くても絶対に
人を殴ってはいけない
人を殺してはいけない
そう教えられてきた

僕が14歳の時に内紛が起こり
お父さんは敵対するグループに殺されてしまった

村では自警団と称して兵隊を作った
10歳以上の男は皆んな強制的に入れられた

そこでは敵対するグループを見つけたら必ず撃ち殺せと命令された

人を殺しちゃいけないのに

でも
もし僕がそんな事を言ったら
きっと僕は殺されてしまう

死ぬのは嫌だ

他の子供たちはライフル銃を持って喜んでいる
まるで新しいオモチャを貰ったみたいにウキウキしている

毎日どこかで戦闘がある

殺した子もいれば
殺された子もいる

殺した子は英雄扱いされた
殺された子の親は泣き叫んだ

僕もとうとう人殺しをしてしまった
同い年くらいの男の子が血まみれで倒れている
僕は失禁し昼間食べた物を全て吐き出してしまった

僕は人殺しした事を伝えなかったが
僕が銃で撃ち殺したのを見た子が村中に言いふらかしていた

リーダーたち大人からは称賛されたが家に帰ったらお母さんは僕に言った

「可哀想に怖かったでしょ
死んじゃった子も可哀想だよ」

それだけ言って抱きしめられた
涙が出た

戦闘はドンドン激しくなり
どこから調達してきているのか知らないけど
武器が増え種類も増えた

この頃になると殺す事に少し慣れたような気持ちになっていた

内紛は5年続きそれぞれのリーダーとの和平交渉が成立し国は2つに分裂しそれぞれが独立した国となった

僕は仕事を探すか学校に行き直すか迷っていた
お母さんは学校を勧めてくれたが結局働く事にした

平和な毎日を過ごしていた

もう人殺しをしなくて済む

平和になったのに平和が嫌いな人もいるようだ

時々殺人事件がある

今は内紛時では無いので罪になる

殺した人は殺人犯として刑務所に入れられる

僕は何人も殺したのに刑務所にはいない

30歳になった時に結婚をした

お嫁さんとお母さんはとっても仲良く上手くいっていた

1年後赤ちゃんが生まれた

家の中が明るくなった

僕はその子にお父さんの名前をつけさせてもらった

子供が小さい頃から
腹が立っても
人を殴っても
人を殺してもいけない

そう言い聞かせていた

子供が16歳の時
あれ程言っていたのに
ケンカして相手をナイフで刺してしまった
幸いケガだけで済んだが子供は刑務所に入れられた

僕はショックでそれが原因なのか10代の内紛で人殺しをした場面がフラッシュバックするようになり
精神を病んでしまった

薬を飲みながら騙し騙し仕事に行っていたが
容態は酷くなる一方で仕事が出来なくなってしまった

妻には迷惑をかけてしまい
僕の代わりに働いてくれた

出所した息子も僕の代わりに一所懸命働いてくれた

最近では起きている時の半分は10代に戻っており頭の中で爆発音がし人がバッタバッタと倒れていく

半分は平和な現実だ

僕は思った
こんな状態が続いたら
頭が狂ってしまうよ





ほな!

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