【企業秘密】 #903
私の勤める会社は100年以上続く老舗の食品加工会社
たまにテレビや雑誌や新聞の取材が入る
有名なヒット商品もあり今の5代目社長も次々と新しい商品を生み出している
今の社長はまだ32歳と若い
会長も50代なのでバリバリ働いている
家で遊んでたら良いのに
ここの会社は企業秘密が多くて
取材に来ても映せないモノが多い
なのに取材に来る
しかも私たち社員さえも知らないレシピがあり
それは会長と会長の弟さんである専務しか知らない
若社長も知らない
教えてもらえないのだ
我が社の幹となる商品なのに
その秘伝のスパイスは誰も知らなかった
もうこの商品を一度でも食べると病みつきになり止まらなくなる
でも皆さんおかしいと思ったでしょ
加工品なのだから
品質表示があるから秘伝のスパイスと言っても書いてあるのだから丸わかりじゃんって思うでしょう
でもコレがどうやってもアノ味にならないのです
秘伝のスパイスについては会長と専務がそれぞれ持つ鍵を使わないと開けられない仕組みになっている
そんなある日の事だった
会長は若くして事故に合い急死してしまった
しかもその翌月に専務である弟が自死してしまった
立て続けに起こった不幸
しかも厄介な事に会長の鍵は若社長の手元にあったのだが
専務の鍵が見当たらない
これは大変な事になった
これでは生産が後二月で止まってしまう
お取引先も全国にあり生産を止める訳には行かない
困った若社長は考えた
これをテレビ番組にしてしまえば良い
若社長は思っている
もう秘伝のスパイスなんて古くさい
社外秘にはするが社員には知っておいてもらって良い
皆んなで作り上げて来た会社なんだから皆んなで共有すれば良い
若社長の企画はスグに大手のテレビ局が飛びついた
ドキュメントで会社の歴史や製品について番組は進められ
最後にあの秘伝のスパイスのレシピが金庫から出される
ひとつの鍵は若社長が持っているので
もうひとつの鍵とダイヤルは日本でも屈指の鍵のエキスパートに開けてもらうと言った流れである
撮影が始まった
ドキュメントはあらかじめ撮ってあり
編集され収録が流されていた
この金庫開けだけは生放送で放映される
さぁいよいよ金庫に取り掛かる
番組の序盤より鍵のエキスパートが金庫に戦いを挑んだ
一時間経った中盤で中継が入りレポーターが鍵のエキスパートと話をしている
まだ開かないようだ
番組終了までに間に合うのか
刻々と時間は迫って来た
さぁどうなる
番組終了まで後10分という所で鍵が開いた
グッドタイミングだ
さぁ中を開いた
中からはこれまた箱が出てきた
これにも鍵がかかっていたが
これはアッサリと開き中から大学ノートが出てきた
これがあの秘伝のスパイスレシピが書かれているのかっ
若社長が手を取りページをめくって行った
何か神妙な顔をしている
リポーターはすかさず若社長に話しかけました
どうですかっ
秘伝のスパイスのレシピは
すると若社長は
「あっあのちょっちょっとすみません
これはあのぉ
どうしよう
すみません
また後日改めてご報告させて頂きます」
それだけ言って深々と頭を下げカメラの前から消えて行った
広報の女性がリポーターに駆け寄り
なんとか繋いで番組は無事に終了した
その後
若社長は弁護士と相談し警察の方にも届けを提出した
この後この会社は営業停止命令が出て
検察に回され
亡くなった兄弟二人を告訴した
若社長は何も知らなかったので罪の対象にはならなかったのだが
どういうルートでどのようにして手に入れたのか
まだ捜査の序盤だったので不明であるが
この秘伝のスパイスには微量のアヘンが使用されており
それ以外にもススメの干した肝臓なども使用されていた
中毒性があったのはこのアヘンが原因だと思われた
会社はその後倒産し莫大な借金を作った
もう食品加工業界に戻る事は不可能だ
今はあのテレビ局ではその後の若社長の足取りと
一体いつからこの秘伝のスパイスが作られたのか独自に調査を開始した
私はお昼休みにタダで食べられたので
よく食べていただけに怖くなったが
別に依存症とか中毒症状は出ていない
他の社員もその他大勢の日本国民もそのような人は出なかった
後に化学的に調べてみたところ
アヘンは検知されておらず
現在は使われていなかった事が分かったが
スズメの内蔵は使用されていたので
どちらにせよ営業再開は不可能であった
という事で私は今失業保険をもらいつつブラブラしている
ほな!