政治家レイシズムデータベース2023年1月
反レイシズム情報センター(ARIC)です。
ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。
今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。
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今回は、今月問題化された北海道大学教員によるTwitter上のヘイトスピーチとそれに対する大学側の対応の問題について紹介する。
今回の事件は、北海道大学教授の境信哉氏によるTwitter上でのヘイトスピーチに関して、CRAC NORTHが2023年1月17日付で所属大学に申し入れを行ったことをきっかけとして広く認知された。
そこで取り上げられていた具体的な投稿は例えば下記のようなものだ(投稿はいずれも実名でなされていた。現在いずれも削除されている)。
この投稿は、沖縄・辺野古での基地建設に反対する座り込み運動に対して西村博之氏が揶揄したことを受けて発せられたものである。「辺野古の抗議はたまに行われるだけ」という段階から事実に反しているが、それだけでなくそれが「朝鮮人中心」であるというデマを利用して座り込み運動に対するバッシングをおこなっているのだ。これは明らかに運動が「朝鮮人」によってなされていることを理由に攻撃対象としていいというメッセージを発するヘイトスピーチである。人種差別撤廃条約の定義の核心((人種/民族などの)①グループに対する②不平等な③効果)に即して問題を整理すると、下記のようになる。
といえる。
アイヌ民族の民族性を抹消する投稿であり、アイヌ文化保存の動きを攻撃するための口実とされてきた歴史否定を追認するものだ。人種差別撤廃委員会の一般的勧告では、人種差別撤廃条約締約国に対して「先住民族の固有の文化、歴史、言語、および生活様式が、国家の文化的アイデンティティをより豊かにすることを認識かつ尊重し、その保持を促進すること」を要請している(「人種差別撤廃委員会 一般的勧告23(1997)先住民族に関する一般的勧告」)が、一連の投稿はこれに反するものといえる。
上記のような発言が現役の大学教員によってなされていたことは、非常に深刻な問題として受け止めるべきである。なぜなら、公人、しかも学者の立場からデマやヘイトスピーチを拡散し、お墨付きを与える差別煽動効果が一般人によるものよりも協力に作用するためだ。
上記の申し入れに対して大学は1月20日付でホームページ上に「本学教員による不適切なSNS投稿について」と題した文章を掲載した。
以下、その一部を抜粋する。
大学の対応として、発言を容認しない姿勢を表明していること自体は非常に重要な点であるといえる。また申し入れが行われてから早い段階で動いた点も一定評価できるだろう。
しかしながら、境氏の責任追求が十分なものとは言い難い。境氏は実名でヘイトスピーチを投稿しており、客観的な状況として公人の立場から差別にお墨付きを与えていたにもかかわらず、北海道大学は名前を明らかにしていないままだ。それゆえ、大学側で「啓発プログラムの実施を徹底」という形で対応するといってもその実態が不透明なものとなってしまうことに対する懸念が残る。
また今回の事例において境氏の投稿に対する評価は「民族マイノリティに対する不適切な発言」あるいは「排外主義的な発言」と表現されているが、頑ななまでに「差別」という言葉を使用していない。何が(人種差別撤廃条約水準で禁止されている)差別に当たるのかという判断基準を明らかにしていないのである。
今回の境氏の行為は明らかに差別煽動であり、そこが問題化されなければならない。大学側は、本当に再発防止を心がけるのであれば何が禁止される差別なのか明確に示した上で反差別ポリシーを打ち立てる必要があるだろう。
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*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。
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