政治家レイシズムデータベース2022年3月
反レイシズム情報センター(ARIC)です。
ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
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このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。
今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。
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ロシア―ウクライナ間の戦争が勃発したことで、日本はウクライナからの「避難民」受け入れを表明した。しかしながら、日本は同時にウクライナからの移住者を一般的な難民受け入れと分ける姿勢を示している。
今回は政治家の発言を取り上げた上で、日本のウクライナからの「避難民」受け入れをめぐる問題点を整理したい。
極右議員と入管当局の主張
日本の「避難民」受け入れの問題点を端的に示す事例の一つとして、自民党議員の小野田紀美による発言が挙げられる。
自民党参議院議員・小野田紀美
「【ご注意】
今回ウクライナから避難された方々は、部会の提言にも記載しているように侵略戦争からの一時的な「避難民」であり難民ではありません(難民の定義は画像参照)。避難民として、日本もしっかり支援して参ります。意図的に難民扱いをして他のイシューをゴリ押す動きが見られるゆえ念のため。」(Twitter、2022/3/4)
こうした主張の問題点は、「避難民」受け入れを難民政策と分けることで、事実上の難民受け入れ措置をウクライナ出身者に限定し、日本の難民政策が他地域の難民申請者を排斥してきた問題を覆い隠そうとしているということにある。
日本の排他的な難民政策の問題点を示す事例としては、例えば昨年物議を醸し廃案となった入管法改正案が象徴的なものといえる。昨年廃案となったこの改正案は難民申請を複数行う者に対する国外退去処分を可能とするものであったが、こうした日本の難民政策に対してはUNHCRからも懸念が表明されていた(「日本の難民制度、国連も問題視 入管法改正、手続き中送還可能に」2021年5月16日、時事ドットコムより)。
そして重要な点は、こうした主張が極右議員による極端な発言などではなく、そもそも入管当局が同じような見解を表明しているということだ。3月20日付の東京新聞記事では、ウクライナ出身者とミャンマー出身者とで難民としての待遇が大きく異なるということが取り上げられており、そのなかで下記のような内容が記されている。
「入管庁の担当者は「両国を比較して検討したわけではない」としつつも、ミャンマー人の中に、技能実習や留学の資格で入国後、就労制限なく長期滞在できる「難民」の認定を受けようとする人たちがいる点を制約の理由に挙げる。」
ウクライナとミャンマー出身者とでの受け入れ政策の違いについて、ミャンマー出身者は経済的な理由から難民認定を希望していることを挙げ、臆面もなく民族による待遇の差別を正当化しているのである。難民申請の傾向と関連づけて出身によって事実上難民を選別するこの理屈はまさしくレイシズムにほかならない。
終わりに
今回扱った難民差別の問題は、ウクライナからの難民を「避難民」として表現しているという次元にとどまらず、基本的に申請者を排斥する日本の難民政策そのものが有している根本的な問題として捉えなければならない。また、ウクライナからの難民に対してのみ日本が積極的な受け入れ姿勢を示していることに関して、単に他の難民との待遇の違いを指摘するのみならず、普遍的な難民受け入れ政策に結実させるようにはたらきかける必要があるだろう。
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*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。
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