![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68688495/rectangle_large_type_2_13fd49c66028f8a3aa4fa65a9e3703f3.jpg?width=1200)
政治家レイシズムデータベース2021年12月
こんにちは。反レイシズム情報センター(ARIC)です。
ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
noteの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。
今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。
―――――――――――――――――――――――
12月に更新した記録では、やはり武蔵野市の住民投票条例案に対するバッシングが多く見られた。
この件については先月掲載したnote記事の方でも言及しているので、ぜひそちらも参照されたい。
12月21日、外国人に対しても日本人と同じ条件で住民投票を認める武蔵野市の住民投票条例案が市議会で否決されることになったが、今回はそれに乗じたヘイトスピーチを紹介する。
今回も、人種差別撤廃条約第一条の「人種差別」の定義(*1)をまとめた下記の三つのポイントから公人の発言の問題を解説していく。
人種差別を判断する上での重要なポイントは、
①(人種/民族などの)グループに対する
②不平等な
③目的又は効果を有する
という三つの観点である。
それでは具体的な事例を見てみよう。
住民投票条例案バッシングの核心は国籍による「区別」ではない。
今回の記事では、今月記録した差別のなかでも特に深刻な事例として、前回の記事でも言及した豊島区議会議員・くつざわ亮治氏によるTwitter上の投稿を取り上げる。
彼は武蔵野市の住民投票条例案をバッシングするために、条例案を支持する人の民族的な属性を取り上げて攻撃するヘイトスピーチを行なっているのである。
こちらがそのツイートだ。
「武蔵野市外国人投票条例賛成派の動きも活発だと、現地から通報ありました。撮影者報告「1枚目、保守系街宣の妨害で見かけたことがある、しばき隊メンバーの朝鮮系女性」「2枚目、武蔵境駅構内で禁止されてるプラカを掲げる高齢女性」スパイ防止法が早急に欲しいです。」(Twitter、2021/12/21)
(差別を目的として一般市民を晒し上げる投稿であるため、画像部分を加工した。)
上述のポイントから問題を整理すると、下記のようにあてはめることができる。
① コリアン(「朝鮮系」と括った人)に対して
② 民族的属性を強調した上で「スパイ防止法が早急に欲しい」と排除を求め、
③ 差別を煽動している
わざわざ「朝鮮系」という民族的属性を強調した上で住民投票条例案支持者を攻撃していることから、本人が差別を行う意図をもっていることがわかる。
(もちろん、対象の方が実際にコリアンであるかどうかは、この投稿が人種差別であるかを判断する上で全く関係ない。)
さらにそれは彼のブログ記事(*2)からも裏付けられる。
ブログ内で彼は下記のように書いている。
「撮影者報告「保守系街宣を妨害に来てたしばき隊メンバーの韓国朝鮮系女性とプラカ禁止の武蔵境駅構内でそれやってる高齢女性」だそうで
外国人の政治活動は禁止されてるんじゃないのかよふざけんなー
スパイ防止法が欲しいですなぁ、それあれば引っ張ってきて背後の組織や金の出どころを尋問できるのに」(くつざわ亮治ブログ(選挙ドットコム)、2021/12/21)
このように沓沢氏は、相手が「韓国朝鮮系」であることを挙げて不当に取り締まりを求めているのだ。彼の主張の差別煽動効果は、上記のTwitterの投稿に「スパイ防止法と同じく在日朝鮮・韓国・中共人の国外追放法も早急に欲しい」「こいつら殺したい」といったコメントが寄せられていることからも明白である。
沓沢氏の一連の投稿が深刻なのは、一般市民の画像を公開した上でヘイトスピーチを行なっているということだ。公人がこうした行為にお墨付きを与えることで、差別を目的として同じように個人の情報を暴露して攻撃することが今後さらに横行することも考えられる。
沓沢氏の投稿の深刻さは、個人の問題にとどまらず、公人が一般人の個人情報を晒し上げたヘイトスピーチをTwitter、そして選挙ドットコムといったプラットフォームが野放しにしているということに及ぶ。Twitterはさることながら、選挙ドットコムもいまや選挙に関する重要な情報源といえるサイトであり、そこが極右政治家による差別の場としても機能しているのだ。サイト管理者は反差別ガイドラインを明確にし、投稿を削除する責任があるだろう。
(また今回紹介したTwitterの投稿のURLは伏せたが、見つけた方には削除のため通報をお願いしたい。)
終わりに
武蔵野市では最終的に住民投票条例案が否決されたが、このことから「外国人」へのヘイトスピーチが自治体の決定に対していかに影響を及ぼすかということが改めて明確になったと思われる。
こうした動きは以前から各地で生じ、地域へ差別・歴史否定を浸透させてきたが、今後も極右議員がヘイトスピーチを通じて自治体の政策にどのような影響を及ぼすのかをウォッチしていく必要がある。
こうした公人によるヘイトスピーチを発見した方は、ぜひARICまでご通報いただきたい。
(1)「この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。」
(参照元:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html#1)
(2)参照元:「武蔵野市外国人住民投票条例案は反対多数で否決!20211221」(くつざわ亮治ブログ(選挙ドットコム)、2021/12/21)
*このブログ内では攻撃対象となっている方の画像がそのまま掲載されているため、URLは伏せてある。
―――――――――――――――――――――――
*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ぜひTwitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてください。