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SS2戦目はドライだったが..

2020/08/02

 まだ体作りも半ばで体重も十分落としきっていない2020年前半。自分のペースとは関係なく試合は巡ってくる。さいわい2戦目は晴れ。しかしシーズンは8月の真夏。

 チームメイトとの接触等のアクシデントを乗り越え、ステージは決勝へ。SS相当の実力がある訳ではないので、1周目でホールショットで揉まれ、あれよあれよのうちに後ろの方を走ることになるのだがシーズンは真夏。灼熱のアスファルト。ヘルメット越しに感じる輻射熱。ただ走っているだけで奪われるスタミナ。減量のために摂食制限を課している自分には相当厳しい状況で、目がかすみだし体力の限界を感じ始める。全15周の試合。そろそろ限界かな?と思い出した頃にやっとの思いで掲示板を見ると無情にも表示は「残7LAP」。

序盤のまだ頑張ってる頃

まだ半分!成人後相当期間があるが、経験上これ以上体力を使ったら死ぬと思えるレベルで表示は残7。絶望感と共に視野が徐々に狭くなっていくのがわかる。まるでと双眼鏡を逆さに見た時のような視野だ。ヘルメットのせいではない。真後ろでエキゾーストノートを奏でるあのうるさいエンジンの音でさえ小さくなっていく。

「かーさん...俺は疲れたよ。」

 自分の呼吸はやかましいほどよく聞こえる。映画インターステラーのクーパーがブラックホールに落ちていく時の呼吸音。不思議なミスマッチ感。視野も自分から離れていく。心身共に落ちていく。辺りも暗くなり何か別の世界で起きていることを窓越しに見ているかのような感覚。事象の地平線が小さな光の丸になっていく。世の中に自分一人しかいない。全ては別世界の出来事。呼吸以外何も聞こえない。ここは静かだ。アニメ版の明日のジョーや、はじめの一歩など、自分との葛藤中に音がなくなる描画がピッタリとはまる。俺は一体何をやっているんだ?レース。ここはどこだ?誰か俺を助けてくれ。苦しい...。ハッとすると突然騒音が耳に飛び込んでくる。目前に迫るコーナーの壁。慌てて切り遅れたステアリングを回す。

 結局どう走ってきたのかわからないままチェッカーを受け、どう帰ってきたかも記憶になく、その後はパドックのチェアで暫く身動きが取れなくなってしまった。

「父ーさん、辛くてもお片付けしないと永遠に帰れないよ。」

 大観選手に声をかけられやっとの思いで立ち上がることができたときには試合後1時間ほど過ぎていた。激しい減量後のモータースポーツ世界観は正にボクシングアニメの描画そのものなのだ。


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