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第26回フェブラリーS(2009年) [競馬ヒストリー研究(32)]

先日、2021年度のJPNサラブレッドランキング及び重賞競走等の年間レースレーティングが発表された。それとともに、葵SのGIII格付け申請の承認とニュージーランドTのGII格付けに対する警告というリリースがJRAより併せて発出された。

特に、「ニュージーランドTのGII格付けに対する警告」というトピックは聞き慣れない事象だけに競馬ファンの間でも話題を集めた。2007年に日本が国際セリ名簿基準委員会(ICSC)のパート1国に認定され、重賞競走の格付けをICSCやアジアパターン委員会(APC)、日本グレード格付管理委員会がレースレーティングを基に管理するようになってから、今回のように格付けの降格が差し迫る事例は初めてであるだけに、今年の同レースとその後の動向が注目される。

 

APCの規則ではGI・GII競走の降格基準に関して、年間レースレーティングが2年続けて基準値(2歳戦及び牝馬限定戦を除くGIの場合115)を3ポンド超えて下回った場合に警告が発せられ、その翌年も3ポンドを超えて下回った場合は委員会の審議対象となり、過半数の承認を得た場合降格となる。

そしてこのことは今週行われるフェブラリーSにとっても対岸の火事ではない。同レースは2019年に基準値を3ポンド超えて下回る111.75を記録し、2020,21年は3ポンドを超えることはなかったが2年とも112.75と、依然として危険水準にある。今回はそんなフェブラリーSから最も高い年間レースレーティングを記録した年を振り返りたい。

 

2009年のフェブラリーSは前3年の優勝馬カネヒキリ、サンライズバッカス、ヴァーミリアンらの7歳世代と、前年米国遠征を敢行しGIIのピーターパンS勝ち等を収めたカジノドライヴ、ダート5戦4勝で底を見せていない上り馬エスポワールシチー、ジャパンダートダービー勝ち馬サクセスブロッケンらの4歳世代による層の厚い世代対決が注目された。

 

エスポワールシチーが前3走同様に逃げ、中盤に入っても緩めることなく進む。カジノドライヴ、サクセスブロッケンは外からこれを行かせて番手へ。1番人気のカネヒキリもその直後に続いた。

逃げたエスポワールシチーが残り600mから11秒3まで急加速して後続を離しにかかるも、2番手のカジノドライヴが抜群の手応えで追い出して捕らえにかかり、そこに坂上でカネヒキリとサクセスブロッケンが内外から並びかける。

ゴール前で3頭が激しく競り合った末、最後にサクセスブロッケンがクビ差出てゴール。勝ち時計の1分34秒6はコースレコードであった。

勝ったサクセスブロッケンの年間レーティングは当レース1着による117ポンド。2着のカジノドライヴ、3着のカネヒキリも当レース2,3着による116ポンドをそれぞれ獲得した。4着のエスポワールシチーは同年のその後4走を全て勝利し、ジャパンCダート1着で118ポンドを獲得。

これら1-4着馬の年間レーティングの平均値116.75ポンドが2009年フェブラリーSの年間レースレーティングとなった。実績馬がどれも凡走することなくまさに激闘と呼べる競馬を見せてくれたことや、上位馬がその後の競走で更に高いレーティングを獲得したこともあり、これが2016年の115.00を引き離してレース史上最高のレーティング値となっている。

 

近年はフェブラリーSとその後のダートGI級競走におけるメンバー構成や好走馬が乖離するとともに、それらの競走で好走した馬はこの時期に中東の大レースへ出走することが多く、それらの要因もあってレーティングの伸び悩みを招いている。競走条件の変更などによってテコ入れを図ることも一つの策として考えられるが、四半世紀にわたって定着した条件にメスを入れて競走体系を変えることも簡単ではないだろう。

同様に簡単とは言えないのだが至極単純な方法と言えるのは、上位馬が自力でレーティングを上乗せすること。2月に施行されるため、先のエスポワールシチーのようにその後の競走でレーティングを更新する機会が多いのは当レースの強みである。

我が国の競馬における財産とも言うべき貴重なGI格付けを死守してもらうべく、今後フェブラリーSで4着までに入った馬たちにはその後もより一層活躍していただき、願わくば4頭それぞれが115ポンドというレーティング値をクリア出来るように応援していきたい。


昨年は道中内々を通った馬が掲示板のうち4頭を占めましたが、唯一外から差し込んで4着に浮上したのがレッドルゼル。緩めのペースを中団で追走したことも踏まえれば着順以上の価値がある内容です。この後には昨年2着したドバイ遠征も控えていますし、レースレーティング的にもこの馬が好走すれば心強いのではないでしょうか。

逆にアルクトスは昨年好位の外々を進んで沈んだだけに見直したいと思います。また、メンバーレベルの低下と無関係ではないように思えますが、近年は芝実績馬が上位に食い込む頻度が増えました。ソダシの扱いについても前走よりは少し迷ってしまいます。

それではー

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