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第9回香港国際C(1995年) [競馬ヒストリー研究(23)]

いよいよ今週は香港国際競走。年間の主要カーニバル開催でも掉尾を飾るこの舞台で4競走合計17勝を挙げ、数々の栄光を掴んできた日本の競走馬。

その記念すべき一つ目の勝利を歴史に刻んだ馬と言えば、1995年の香港国際Cを制したフジヤマケンザンである。

 

同年12月、中山記念など重賞3勝を挙げる8歳(現:7歳)馬フジヤマケンザンが香港国際Cへ出走した。

デビュー5戦目で菊花賞を3着したものの、その後はGIを9戦走って一度も掲示板に乗ることが叶わなかった同馬。ビッグタイトルを求めて地方競馬最高峰の帝王賞に出走するなどもしたが、その次に活路を求めたのがこの香港であった。

初の海外遠征ながら、好調に色気を持って臨んだ前年の当レースは出遅れが響いて4着、同年4月のQEIICでは2番人気に推されるも10着に大敗。背水の陣となる3度目の挑戦がこの香港国際Cであった。

1988年に創設された当レースに日本調教馬が初出走してから当時はまだ3年目。スタンド下で見守る日本人は担当厩務員と関西テレビの杉本清アナのみという、日本陣営にとってはひっそりとした状況でスタートを迎えた。

 

フジヤマケンザンの相手となる主な出走馬は、1番人気がマイル以下でデビューから6戦6勝でチェアマンズプライズ、スチュワーズCといったローカルGIを制していた地元馬Mr.Vitality。

デビューから14戦7勝2着6回3着1回の堅実派で、前々走に英国グッドウッド芝10FのGIIIを制したゴドルフィンのTriariusが2番人気。

3番人気はムーランドロンシャン賞で同年のカルティエ賞年度代表馬Ridgewood Pearlの2着に肉薄し、ジャックルマロワ賞3着等欧州マイル路線で上位の実績を残す吉田照哉氏所有の仏国馬Shaanxi。

他にも加国のロスマンズ国際S3着があるVolochineやニュージーランドオークス馬Marquise等、グレードはGII(国内格付はGI)ながらも各国のGI好走級馬が数多く揃った。

 

当時は芝1800mで施行されていた当レース。2コーナーの奥から大きく伸びた引き込み線からスタートし、内の3番手という好位置につけた蛯名正義鞍上のフジヤマケンザン。

逃げるVentiquattrofogliが直線に入ってリードを広げるも、間を割って同馬を猛追、ゴール前で交わして3/4馬身差先着した。

ハクチカラによる1959年のワシントンバースデーH優勝から36年、史上初となる日本人騎手騎乗の日本調教馬による海外重賞勝利という歴史的なゴールに1分47秒0のレコードタイムで飛び込んだ。

 

翌年、本馬は所謂グレード別定とも呼ばれる別定条件の負担重量が課されるGII競走の金鯱賞に出走した際、GI勝ち馬に課される59kgを背負っている。

当時は香港国際Cも日本の大半のGI競走と同じくローカルGIという限定的な格付ではあったが、このことからもフジヤマケンザンは他の日本のGI馬と同様のタイトルを戴冠したと言って差し支えない。

後に更なる大仕事を成すトレーナー・森秀行の幅広い視野と積極的なレース選択がもたらした勝利。そして手綱を取った蛯名が「日本の馬がここまできたんだっていうことを、外国の人にも分かってもらえたんじゃないかと思う」と語ったように、英国で重賞勝ちやGI3着のある2着馬をはじめ、先に挙げた各国の実績馬をアウェー及び第三国で下したこの勝利によって、日本の馬の実力が確実に証明された。

昭和末期からの空白期間を破り再び活発化した同年の海外遠征を締めくくる大きな勝利であったと言える。

今年の香港国際競走は2年ぶりに日本でも4レース全て発売され、阪神JFと合わせて忙しい週末になりそうです。

香港ヴァーズはグローリーヴェイズが完全に抜けた存在と見てよさそう。相手は当レース2着のRedwoodを父に持つこの路線の安定勢力Columbus Countyやサンクルー大賞2着の仏国牝馬Ebaiyraあたりを狙いたいです。

昨年は日本のダノンスマッシュが優勝した香港スプリント。地元勢の世代交代がそろそろ進んできた感もありますが、中でも前哨戦を連勝してきたLucky Patchは楽しみです。昨季のクラシック世代はその後の重賞戦線でも層の厚さを見せていますが、本馬は一冠目のクラシックマイルを超Hペースで逃げて4着。得意距離のスプリントでGIを勝つ底力は十分にありそうです。

Silent Witnessの連勝記録更新に挑むGolden Sixtyが待ち構える香港マイル。上り2F21秒51を叩き出した前走の末脚も強烈でした。同馬不在の1400mGIクイーンズシルヴァージュビリーCをきっちり勝っているWaikukuがやはり相手筆頭でしょうか。

日本馬に最も分があるカテゴリーと言える香港C。QEIICとのダブル制覇がかかるラヴズオンリーユーはもちろん、GI2戦目で上昇を期待したいヒシイグアスあたりもいますが、一発狙いたいのはBolshoi Ballet。豪州で実績のある兄を持ち、本馬は米国でGI制覇。ここ2年連続好走のバリードイル勢ですが、A.オブライエン師の当レース初制覇はなりますか。

阪神JFは混戦模様ですが、インパクトがあったのはやはりナミュールの前走。連続開催10週目の阪神ですが、先週あたりからハービンジャーの名前もちらほらといった感じで、そろそろ同産駒向きの馬場になってきたかもしれません。

それではー

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