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第38回毎日王冠(1987年) [競馬ヒストリー研究(14)]

秋シーズン本番の到来を感じさせる毎日王冠。特に東京競馬場をホームグラウンドとしている方にとっては、安田記念や宝塚記念の併催から3,4か月ぶりの来場にしていきなりビッグカードが目の当たりにできるともあってその思い入れはひとしおであると想像できる。

今回はそんな毎日王冠から、ダイナアクトレスが勝利した1987年の一戦をご紹介したい。


春の天皇賞と宝塚記念を制したミホシンザンとスズパレードは疲労や脚部不安で休養し、ターフに戻ってくることなく迎えた同年の秋シーズン。

毎日王冠には、安田記念と宝塚記念がともに2着で、悲願のGI制覇を目指す5歳馬ニッポーテイオーや、同世代のダービー馬で骨折休養明けのダイナガリバー、同年春までフランスを中心に約2年間欧州へ遠征し、ロワイヤルオーク賞3着、フォワ賞2着等の成績を残して帰国初戦となる2年前のダービー馬シリウスシンボリらがエントリー。

その中に紅一点出走した5歳牝馬がダイナアクトレスであった。

デビュー3連勝で重賞を勝ち、クラシック候補として期待されるも、4歳シーズンはアクシデントが相次ぎ思うような競馬が出来なかった同馬。

しかし5歳となった同年の春から徐々に復調し、前走の京王杯オータムHで56kgを背負いながらレコードタイムで快勝。2年ぶりの勝利を挙げると秋の天皇賞を見据えて当レースへ駒を進めた。


ニッポーテイオーが1番人気で、ダービー馬2頭を抑えた2番人気にダイナアクトレスが支持されてレースを迎えた。

トウショウサミットとシリウスシンボリが先団で併走し、前半は緩めのペースで流れる中、ダイナアクトレスは大外12番枠からスタートして中団の外々を追走。

じわじわとペースが上がりながら直線を向くと、残り400mでニッポーテイオーが早目に先頭に立つも、直後にいた函館記念勝ち馬ウインドストースが襲い掛かり、これを交わす。

そのままウインドストースが押し切るかに見えた次の瞬間、大外から脚を伸ばしたダイナアクトレスが一気に差し切り、頭差1着。3歳時には翌年のダービー出走も検討された素質馬が遂に本領発揮となった。


その後は重馬場となった秋の天皇賞を8着に敗れるも、日本の有力馬が軒並み回避する中出走したジャパンCでは「鉄の女」と呼ばれたGI8勝(当時)馬のトリプティクに先着する3着。日本の牝馬がまだ入着すら果たしていなかった時代だけに、その潜在能力がGI級であったことは言うまでもない。

母となってからもステージチャンプやプライムステージを送り出した同馬。子の世代では自身と同じくあと一歩でGIに手が届かなかったものの、孫のスクリーンヒーローはジャパンCを制覇して種牡馬としてもモーリスを輩出するなど活躍し、先週のスプリンターズSではご存知の通りモーリスの産駒ピクシーナイトが勝利した。

他にも現役の牝系産駒では孫のベストアクターが昨年の阪急杯を勝利するなど、”アクトレス”から連想した名を受け継ぐその血脈は今でもターフに確かな存在感を残し続けている。


前哨戦を使わずに本番のGIへ向かう有力馬も増える時代にあって、未だ毎年にわたって期待感を膨らませる競馬を見せ続けている当レース。

既に実績十分のGIホースや春のGIであと一歩に終わった実力馬が始動戦を飾るシーンも印象的だが、秋を迎えて上昇を見せた馬の勝利もまた、来たるGIへ新たな楽しみをもたらしてくれる。今年の毎日王冠は果たしてどの馬が最高の秋のスタートを切ることになるだろうか。

今年の毎日王冠も、春のGIで連対した3頭を中心になかなかのメンバーが揃いました。上がり勝負になればこれらが2枠まで占めることが濃厚かもしれませんが、前々で立ち回る馬も毎年1頭は上位に顔を出しています。

その中でもトーラスジェミニに期待したいところ。安田記念は今回の人気2頭に食い下がる5着で、欧州色の強い父に母父マンハッタンカフェの配合なら非根幹距離の1800mこそベスト条件ではないでしょうか。


それではー

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