第166回 天皇賞(秋)のみどころ
今度の日曜日、東京競馬場で天皇賞(秋)が行われます。
この週末は、ゆっくりと記事を書く時間が取れないため、今週は木曜日出しの投稿となりますが、どうかご容赦くださいませ。
では、早速、レースのみどころについて解説していくことにしましょう。
東京11R 天皇賞(秋)
各馬の仕上がり状態の確認、3歳馬と古馬とのポテンシャル比較、枠順による有利・不利の検討、どの馬がハナを切るかも含めたレース展開の読み、Bコース替わりに伴うトラックバイアスの変化への対応、日曜日午後の天候読み、などなど……
このように今年の秋天は、各馬がレースで見せるであろうパフォーマンスをさまざまな角度から比較・検討しなければならないため、「超難解なレースになったな」という印象は否めません。
「裏の裏は表でしたね」で当たっちゃうケースはともかくとして、すべての要素を正確に読み切り、その上で馬券の的中に導ける競馬ファンがいたとしたら、その人は間違いなくプロの領域に足を突っ込んでいる超人。そう表現しても、間違いではないでしょう。それくらい、今年のレースを正確にシミュレーションするのは難しいですね。
とは言え、最初からサジを投げてしまうのもいかがなものか、と思いますので、まずはひとつひとつのファクターについて、今週も丁寧に比較・検討していくことにしましょう。
まず、仕上がり状態ですが、ここがぶっつけ本番の馬に関しては、当然ながら「全馬パドック要注目」ということになります。
昨年は、エフフォーリアが夏を越して成長した姿を見せてくれましたけど、特に3歳馬は、全馬が春よりも成長して、また良い状態で出走してくるとは限りませんから、事前の調教データや厩舎からのコメントを決して偏重することなく、モニター越しにでも構わないので、当日、自分の眼で各馬の状態を確かめる必要があるのではないでしょうか。
よって、特に今年に関しては、どうしてもパドックを観ることができない競馬ファンの方は、このレースの馬券を買わない、あるいは買うにしても少額の投資にとどめるのが賢明。そんな気がします。
次に、3歳馬と古馬とのポテンシャル比較ですが、これがまた難しい。先週の菊花賞に出走したフェーングロッテンが、古馬との初対戦となった新潟記念で3着に善戦したことくらいしか、まともな比較材料がないのですよね。
マイル路線では、この先、先週行われた富士Sがいい参考になってくれるのですけれど、中距離路線ということになると、確信的なことを言える状況にはまだないのかな、と。
個人的な感覚で言えば、今年の3歳世代が特段にハイレベルであるとは思っていないのですが、迎え撃つ古馬陣にも、コントレイルやグランアレグリア級の馬はいませんから、3歳でも世代最上位クラスの馬であれば、ここでもいきなり通用していい。そんな気はします。ただ、この評価の精度に関しては、正直、なんとも……ではありますが、、、
ここからは、これらの点と枠の並びを踏まえつつ、レースをシミュレーションしていきたいと思います。
大枠として、有力馬が真ん中から内の枠に集中した印象ですが、それ自体がレースの結果に大きな影響を与えることはないと考えていいでしょう。Bコース替わりになることによって、突如としてインベタ有利な傾向が出現するとかならいざ知らず、おそらくそこまで極端なトラックバイアスの変化はないでしょうからね。
そうなると、あとは枠の並び。パンサラッサ、ジャックドール、バビットの3頭が、はたしてどんな並びになるのかには要注目だったわけですが、3頭の中で最も出脚が鈍いパンサラッサが最内に入った点は、波乱要素を増大させたと言えるかもしれません。
すでに控える競馬を視野に入れているジャックドールはともかくとして、バビットがこの鞍上でどんな競馬を仕掛けてくるのか、非常に読みづらいですしね。極端に言えば、「パンサラッサの機先を制しての大逃げ」もあれば、「ソロっと出しての最後方ポツン」まで想定しないといけないわけですから、この枠の並びは、ただでさえ難解なレースをよりいっそう難しくしてくれたな、と。
個人的に最も可能性が高いと考えているのは、パンサラッサが序盤からハイペースで先行。バビットが離れた2番手で折り合いを図り、さらに離れた3番手にジャックドール。こんな並びかな、と。
ただ、コーナーでペースを引き上げたいジャックドールにとっては、「後続がどこまでピッタリと追走してくるのか」がカギにはなるのでしょう。あまり仕掛けを待ちすぎると、ノースブリッジやマリアエレーナあたりが早めに動いてきそうですし、過去に東京二千m戦で好内容のレースを続けていた時ほどには、楽な戦いにならないような気もしています。
ただし、後続が互いにけん制し合って仕掛けが遅れるパターンもありますから、そうなったときには、一定の確率で前の馬が残るケースも考えられなくはありません。ただ、その確率がどこまでか、と考えると、過度な期待まではどうなのかと思ってしまいますけどね。
こうやってさまざまな角度からレースをシミュレーションしてみると、やはり正確な未来予想図を描くのは非常に難しい作業であることが、とてもよくわかります。
ならば最後は、ここでも通用するポテンシャルがあって、「ポツン、ポツン、ゴチャ」っとなりそうな展開がビタっとハマりそうな馬を狙うのが妥当。そんな結論にならざるを得ないのでしょう。
いや~、今年のGⅠは本当に難しいレースが続きますね。
ということで、最後に個人的な見解を。
私の理解では、昨年の4着馬サンレイポケットは、どう乗っても上位3頭には敵わなかったであろうという中で、6着ポタジェよりも厳しい競馬をしていながらの先着。さらに同馬が、次走のジャパンカップでシャフリヤールと接戦に持ち込んだことを踏まえても、ポタジェを筆頭とした大阪杯組のほか、シャフリヤールを含めた古馬陣は、はたして本当に実績上位と言えるのかどうか、甚だ疑問に思うのですよね。
加えて札幌記念の1,2着馬は、それぞれ大阪杯、宝塚記念で馬券圏内を外し、昨年のこのレースの5着馬ヒシイグアスに先着を許しているわけですから、各レースのペースの違いなどを考慮しても、率直に言って、古馬の人気上位組が抜けて強いとは到底思えません。
このあたりの馬たちと…なら、夏のハンデ重賞を強い内容で勝ってきたマリアエレーナやカラテあたりでも、互角の戦いは可能でしょうから、そもそも古馬上位という見立てにはならないですし、さらに古馬の中でのポテンシャル比較も相当難しい。そう言わざるを得ないのでしょう。
ということは、3歳馬優勢の見立てで予想を組むほかなさそうなのですが、こちらはこちらで、「仕上がり面がどうか」という点に不安要素がまったくないとは言えません。
ただし、ダノンベルーガとイクイノックスの2頭の関しては、春も万全な状態で戦っていたとは言い難いので、仮に馬体面で目立った成長が見られなくても、精神面で走れる状態にあるようなら、好勝負する可能性はソコソコ高いようにも思えます。
自信満々に「3歳馬上位」と言い放てるほどの確信はありませんけど、さまざまな要素を総合的に考慮すると、どうしてもそんな結論になってしまうのかな、と。
で、もってここは、秘めたるポテンシャルの高さとコース適性を重視して、⑤ダノンベルーガを中心視することにしたいと思います。
このメンバーの中で、「過去に最上位のパフォーマンスを示した馬は?」と自らに問うてみると、真っ先に思い出すのは共同通信杯当時のダノンベルーガなんですよね。
皐月賞は、初の右回りで馬場の悪い内を回らされる競馬、ダービーは距離適性がどうだったのかというレースぶりで、ともに説明できる敗因はありましたから、レース条件が一気に好転するここは、デビュー2戦目でジオグリフを子ども扱いしたあの共同通信杯のレースぶりを再評価すべき。そう考えました。
2番手には、①マリアエレーナを抜擢します。
この馬は、ここ2走のレースぶりから、今年に入ってから確実に力を付けていることがよくわかりますし、今は右回りでも走れますが、もともとはサウスポーだったことを考えると、この東京替わりは歓迎材料になりますから。
また、この馬が負ける時は、キレ負けしている印象が強いわけですが、ここは前が速いペースで引っ張ってくれそうですから、好枠を生かして早め早めに動いていくことで、一瞬の脚に欠けるというこの馬の弱点を補うことができる。そう考えてのこの位置となります。
そして3番手に、⑦イクイノックス。
この馬に関しては、体調面だけが問題になってくると考えます。もしもいい状態でパドックに出て来られるようなら、勝ち負けまで十分に期待していいと思うのですが、事前に得られる情報の範囲においては、あんまりそのイメージが湧かなかったので、お茶を濁してこの位置としました。
ただし裏を返すと、状態さえまともならこの馬を中心視してもいいくらいですから、パドックの様子次第では、大胆に評価順をいじることも含めて検討しないといけないでしょう。ポテンシャルの高さだけなら、ダノンベルーガとこの馬の2頭が抜けている可能性もあるわけですからね。
最後4番手には、②カラテを拾っておきます。
この馬には、一瞬の脚に欠けるというはっきりとしたウィークポイントがあるわけですが、自らのスイートスポットにハマった時には、長くいい脚を使えるという明確なストロングポイントを併せ持っているのですよね。
そして今回、パンサラッサの逃げなら、中山記念の時と同じようにこの馬が力を出し切れるようなラップ構成となりそうですし、そして何より、転厩後では一番の体調でレースを使えそうな雰囲気もあります。よって、これくらいの相手なら、GⅠでも通用しておかしくないと見て、最後のひと枠はこの馬としました。
その他、⑧シャフリヤールは次点扱いとします。東京の二千はいかにもこの馬に合いそうなのですが、正直、「この馬ってそんなに強いの?」と思うところもあって、その感覚を大事にした結果としてのこの評価です。
⑨ジャックドールは、仕掛けどころがハマれば勝ち負けまであっていいと考えていますが、そのスイートスポットは決して広くないと思うのですよね。鞍上に対する信頼感も低いですし、序盤でバビットの出方に幻惑されるだけでも、自ら勝ち負けラインから遠のくことになりそう。そんな判断となりました。
③パンサラッサは、そもそも楽にハナを切れるのか、という部分で不安がありますし、仮にマイペースに持ち込んだとしても、ジャックドールあたりが早めにつついてくる可能性は高そうですから、小回りコースならまだしも、舞台が東京だと頑張っても善戦止まりなのかな、と。
⑥ジオグリフは、やはりノド鳴りが……。春から一貫して言っているのですが、ノド鳴り持ちの馬を狙うのって、やっぱり怖いんですよね。ポテンシャル面で抜けている馬でもそうなのに、100%の力を出し切って通用するかどうか、くらいの力関係だと、やはりこの馬にひと枠を使うという判断には至りませんでした。
いやはや、今年はGⅠレースが難しすぎ。
もちろん、あえてそのGⅠで勝負する必要性も低いのですけれど、最高峰の格を誇るレースで思いどおりにならないことが続くのは、やっぱり残念なことではありますからね。
さて、今週はどうなりますか? なにはともあれ、皆さまのご健闘を心からお祈りしたいと思います。
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