第37回 根岸S/第28回 シルクロードSのみどころ
明日は、東京で根岸ステークスが、中京でシルクロードステークスが行われます。
先週行われた2つの重賞に比べると、根岸SはGⅠの前哨戦、シルクロードSはハンデ戦ということで、考慮に入れるべき要素が増える分、的を射たシミュレーションを組むために越えなければならないハードルが一段高くなった印象もありますね。
できることなら、今週も2打数1安打は目指したいなと思っているのですけれど、さてどうなりますか……。
では、早速、それぞれのレースの見どころについて、解説していくことにしましょう。
東京11R 根岸ステークス
ここは、出走メンバーをざっと見渡してみると、昨年のこのレースで馬券圏内を占めた3頭が顔をそろえたほか、昨秋以降、ダートの一線級を相手にしても互角以上に戦える力をつけてきた馬が何頭か出走してきました。
よって、レースレベルとしては、少なくとも昨年以上、もっと言えば、ここ数年の中で最も粒揃いになった印象すらありますね。
例年、このレースで好走するために必要なポイントのひとつとして挙げられるのが、冬場の砂が重い馬場状態を味方につけられるのか、という部分でしょう。
その中で、リピーター組の各馬に関しては、すでにその課題はクリア済と言っていいわけですから、その点での一定のアドバンテージがある。そうは言えるように思います。
ただし、昨年の好走馬、テイエムサウスダン、ヘリオス、タガノビューティーのその後の成績に目を向けてみると、テイエムサウスダンのフェブラリーステークス2着、ヘリオスの南部杯2着が目立つ程度で、決して圧倒的な成績を残しているとまでは言えません。
タガノビューティーに至っては、ここでも上位人気必至のギルデッドミラーに、昨秋、東京ダートで2回続けて完敗を喫しているくらいですしね。
そうすると、むしろ昨秋の武蔵野Sで上位を占めた各馬が、今回の条件でも同じような力を発揮できるのか、と考えたほうがよりシンプルなアプローチなのかもしれません。
つまり、基本的には武蔵野S組が比較上位で、この組にリピーターと新興勢力となる各馬がどこまで迫れるのか。そんな構図になっていると理解したほうがいいでしょう。
あとは、展開とトラックバイアスですね。
展開面では、前々で揉まれずスムーズに運びたい馬が何頭かいますので、決して「とにかく行ったもん勝ち」というレースにはならなそうですが、この枠の並びだと「内枠勢がどこまで積極的にゲートから出していくのか」によって、ペースはスローにもハイにも振れそうですから、そこの読みが正直難しいな、と。
また、トラックバイアスについてですが、土曜日の傾向を見る限り、こちらはかなりフェアな条件になっていると理解して良さそうです。
例年どおりの時計がかかる馬場にはなっていますけど、まともに戦える力があってさらに流れが向けば、ちゃんと好走している馬が多い印象でしたから、基本的にはあまり神経質にならなくてもいい公平な馬場。そう考えていいでしょう。
ということで、いろいろと考えた結果、ここは素直に⑬レモンポップを中心視することにしました。
枠の並び的に外を回される可能性はありますけど、内で包まれるよりはよっぽどマシですし、東京千四というこの条件なら、好位差しの安定した競馬で勝ち負けのラインまでは普通に走ってくるのではないか、と。
さらに言えば、ペースが読みづらい中で、この馬の自在性は間違いなく武器になるでしょうから、このレースに関してはあれこれとこねくり回したりせず、人気でもこの馬には逆らわないという判断で行きたいと思います。
2番手は、⑭バトルクライ。
こちらも枠の並びがいいですし、レモンポップをマークする形で進めれば、この馬にとって自然と理想的なレースの形に持ち込めるような気がします。
加えて、この距離なら外目から長く脚を使える馬でもありますので、少なくとも脚を余して敗れるということはないでしょうし、仮にレモンポップを捕まえるところまでは行かなくとも、出し切る競馬をして馬券圏内に絡む程度の走りはできる。そう考えました。
3番手は、⑤アドマイヤルプス。
この馬にとって、今の時計の掛かる馬場、そして千四への距離短縮は確実にプラス材料となりますから、鞍上のエスコート次第の面はありますけど、もしも馬群をスムーズに捌けるようなら、意外に面白い存在になってくるのではないかと考えています。
できるなら、スタートを決めて積極的なレースをしてほしいところですが、仮に前に馬を置く位置からの競馬になっても、ガッチリと脚が溜まるスペースをうまく取り切れるようだと、一定の確率で好走する期待は残るのかな、と。
4番手は、⑯ケンシンコウ。
この馬は、もともと東京のマイルでベストパフォーマンスを示していた馬ですから、この条件でじっくりと脚を溜めれば、終いは確実に脚を使えると思うのですよね。
地力勝負ではまったく話になりませんけど、例えばレモンポップとバトルクライが外から一気に内の馬たちを交わし去ってしまうようなレース展開になれば、最後の最後に大外からこの馬が突っ込んでくるという絵面は、なんとなく想像できるよな、と。
その他、ギルデッドミラーに関しては、地力の高さは確かですし、この距離も申し分ない条件だとは思うのですけれど、やっぱり鞍上の不安定な騎乗ぶりには不安しかないのですよね。
初めてのダートスタートで躓くとか、道中でガツンとハミを取って行きたがるとか、まあいろんな凡走パターンが思い浮かぶわけで、この人気なら、来られたら仕方がないと割り切って消せばいい。最後はそう考えました。
テイエムサウスダンは、最後まで4番手にするかどうか迷ったくらいなのですが、昨年のレースレベルは、今年よりも明らかに低かったと考えられるほか、仕上がり面などを考慮すると、最後は拾い切れなかったというのが正直なところです。
その意味で言うと、ベルダーイメルもこの距離で気になるところはあったのですよね。ただし、枠の並び的にどうかというところもあって、人気薄の分、狙ってみたいというスケベ心はあったのですけれど、最後は少し冷静になって序列を下げるという判断に落ち着きました。
中京11R シルクロードステークス
今年のこのレースは、根岸Sに比べて実績馬と上がり馬の区分けがわりとはっきりとしている印象もありますが、なんせこちらはハンデ戦。
しかも、昨年の高松宮記念の大混戦ぶりもそうですし、「スプリンターズステークスの勝ち時計が前日の古馬2勝クラス戦よりも遅い」という事実もそうなんですけど、結局のところ、今のスプリント戦線に圧倒的な存在は一頭も見当たらないのが現実なのですよね。
つまり、今のスプリント界においては、GⅠ好走馬といえども「圧倒的に力が上」とまでは言えず、条件戦を勝ち上がってきた馬が、一度も壁にぶち当たることなくスプリント王の座にまで一気に駆け上がる可能性も十分。
そんな言い方ができるのではないでしょうか。
それから、今年からルール変更となった負担重量増の件。中・長距離のレースであれば、それほど神経質になる必要もないだろうと私は考えているのですが、短距離戦では露骨にその影響が出そうな印象もあります。
55㎏が56㎏になるのと、58kgが59㎏になるのでは、同じ1㎏増でも馬が感じるであろう負担の大きさを、同列で語ることはできませんし……。
さらにここは、この後GⅠを狙う馬たちのハイレベルな戦いになるわけですから、そのことまで考えると、本当に実績上位馬が盤石の戦いを見せるのかどうか、それなりに怪しい部分がなくもない。個人的には、そんなふうに感じているところです。
あとは、中京の芝千二というレース条件を考えるならば、枠の並びと展開は当然無視できません。
土曜日の競馬を観る限り、トラックバイアスに極端なクセはないようですけれど、馬場が堅く全体的に速い時計が出ていましたので、終始外々という立ち回りではさすがにノーチャンスなのかな、と。
また、展開面ですが、ここは前に行きたい馬がこぞって外枠に入ったので、この枠の並びだと、テイエムスパーダがハナ、キルロードが番手外という形になる公算が高いような気がしています。
そうすると、道中で極端にペースが上がるイメージは持ちづらいですから、中団よりも後ろから脚を伸ばしてくるような脚質の馬には、かなり厳しいレースになる可能性が高い。そんな見立てでいいのでしょう。
よって基本的には、ハンデの重い実績馬が比較上位ではあるものの、枠の利とハンデ差をうまく生かし切れば、軽量馬が上位に喰い込んでくる可能性を排除することはできない。そう理解すべきなのかもしれないですね。
ということで、ここは⑧マッドクールを中心視することにします。
この馬は、馬群の中で脚を溜めた前走が圧倒的な強さだったわけですが、ここも枠の並びが非常に良く、好位のインのポジションで、無駄脚を使わずにじっくりと脚を溜める競馬ができそうですからねえ~。
藤岡康Jなら、ストレスのない位置でスムーズに運んでくれる公算が高いですし、ハンデも手ごろで「時計勝負もドンと来い!」とくれば、一気の相手強化でも、この馬の好走確率が最も高いと考えるのが自然。いろいろと悩むところはありましたけど、最終的にはそう判断しました。
2番手は、⑬キルロード。
この馬の前走は、相手が悪かっただけで生涯最高と言っていいレースができていたんですよね。
さらにここは、得意の左回りに替わって、展開もこの馬向き。加えて、斤量面での相対的なアドバンテージまで追加されるのなら、今回に限っては、トウシンマカオよりもこちらを上位に採るべき。そう考えました。
3番手は、その⑮トウシンマカオ。
この馬にとってこの大外枠は痛恨ですし、3.5kg増の斤量、得意の阪神から中京へのコース替わり、あまりペースが上がりそうにないメンバー構成……。そのどれをとっても、今回は「これでもか!」と悪い条件が重なってしまったように見えます。
それでも、今のところ高松宮記念本番を勝つのはこの馬だと思っていますので、仮にロスの多い競馬になっても、それくらいのことで簡単に大崩れしてもらっては困る。そう考えて、今回はこの位置に置くこととしました。
上位は、ここまでとします。
あえて4番手を挙げるとすれば、ナムラクレアとウインマーベルが同列の扱いとなりますが、ともに人気馬でもありますし、いろいろと懸念材料がある中であえて拾うこともないと最後は判断しました。
ただしナムラクレアには、「好枠を引けた中で、この斤量をこなして一瞬の鋭い脚を使えるのか」という着目点がありますし、ウインマーベルのほうには、「外枠とこの斤量で、どこまで上位に肉薄できるのか」という注目点があります。
よって、本番に向けてという意味で言えば、「この2頭のレースぶりにも要注目!」ということだけ、最後に付記しておきたいと思います。