2023_ルーキージョッキー デビュー半年後の現在地
今年もあと少しで、ルーキージョッキーがデビューして約半年が経過しようとしています。
そこで今日は、8月13日時点におけるJRAでの勝利数を確認しながら、各ルーキージョッキーの現在地について、考察してみることにしましょう。
なお、彼らのデビューから約1ヶ月後に書いた過去記事へのリンクをこちらに貼っておきますので、その記事と対比しながら読んでいただけると、点が線になってより興味深く感じていただけるかもしれません。
12勝 田口 貫太
今年は、昨年の今村Jや角田大河Jのように飛び抜けた成績を残しているルーキーはいませんが、田口Jのこの12勝は、さほど悪くない成績であるとは言えるでしょう。
これまでの田口Jの騎乗スタイルを振り返ってみると、減量を生かした先行策が目立っていますので、「デビュー初年度らしく、あまり考えすぎずにシンプルに乗っているな」という印象でしょうか。
ただし、他のルーキーと比較して圧倒的に乗り鞍数が多いのは確かなんですよね。「場数を多く踏めているアドバンテージを生かし、ここまで好成績を収めている」という側面があることには、少しばかり注意が必要かもしれません。
加えて、騎乗スタイルに目立ったストロングポイントがあるわけでもありませんので、将来性という観点から見れば、現状は他のルーキーに一歩譲るところがある。そんな評価が妥当なのかもしれません。
8勝 小林 勝太
デビュー当初は、徹底先行策ばかりに活路を見いだしていた小林勝Jですが、ここ最近は、道中で脚を溜める競馬を選択した時でも、デビュー当初と比べずいぶんとリズム良く運べるようになった印象があります。
特に、あの乗り難しいライラボンドで特別戦を制した騎乗は見事と言うほかなく、作戦の引き出しが確実に増えてきている点は、見逃せない大事なポイントであるとも言えるでしょう。
よって、現状の完成度はまだまだですけど、将来性という意味では、田口Jよりも間違いなく小林勝Jのほうが上。あくまでも個人的な感覚でしかないですけど、そんな気がしないでもありません。
7勝 河原田 菜々
あの騎乗停止事件があった中での7勝は、ルーキーJとしては十分に評価していい数字と言えるのかもしれません。
ただし、彼女の器はこんなものではなく、期待値だけで言うなら、来年、再来年あたりには、今村Jや永島Jを楽々と逆転して、すでに女性ジョッキーのフロントランナーとして独走しているかもしれない。それくらいの期待を抱かせる、素晴らしい騎乗をここまでは見せてくれていると思います。
時間のある方には、是非とも映像を観ていただきたいのですが、対象レースは8/13(日)の小倉3R。ファイブレイナに騎乗した彼女が見せた、1コーナーを回る際のエスコートの部分です。
このレース、外枠からゲートを出たファイブレイナは、1コーナーの入り口までにインに入れることができませんでしたので、そのままでは遠心力で外に振られる形になるのが普通。
ところが河原田Jは、手綱で馬のスピードを上手にコントロールしつつ、体を内側に倒し重心をイン寄りにずらすことにより、コーナーで馬の推進力が外に逃げるのを防ぎ、スタミナロスを最小限に抑え込んでいるのですよね。
つまり、最後の追い比べで競り勝つことができたのは、まさに1コーナーで彼女が見せた新人離れした高い技術あってこそのこと。一般的な女性ジョッキーからは想像できないくらいの体幹の強さは、近い将来の大ブレイクを下支えするに違いありません。
6勝 小林 美駒
夏に入る頃から一気に地力を強化してきたのが、この小林美J。類まれなスタートの巧さはデビュー当時から際立っていましたが、ここにきて脚を溜めることを覚え、作戦面に幅が出てきている点には、大いに好感が持てると言っていいでしょう。
特に、差しに回るとエスコートが一気に難しくなる新潟ダート千二戦で、ハナに行かずとも好成績を残しているのは立派のひと言。あの騎乗ができるなら、ダートの短距離戦ではどのコースに行ってもしっかりとした騎乗ができるに違いありません。
中長距離戦でのペース配分や、馬を動かすという部分でのパワー不足など、現状はまだまだ課題が山積していますけど、この先どんどんと成長して行きそうなジョッキーの一人であることは間違いありませんので、特にこれからの半年間は、1レースたりとも彼女の騎乗から目が離せない。そんな気がしています。
0勝 石田 拓郎
彼の場合は、「乗り鞍に恵まれていない」という明らかな事情がありますので、現時点でJRA初勝利を挙げられていないことも、致し方のない面があるように思われます。
騎乗技術的には当然まだまだですけど、場数を踏むごとに少しずつでも成長していることは確かですから、まずは1勝を目指して必死にがんばってもらいたいですね。
0勝 佐藤 翔馬
彼が現時点で0勝というのは、今年のルーキージョッキーにまつわる話題の中で、もっとも意外なことかもしれません。
確かに、所属厩舎の関係で勝つチャンスのある馬に乗る機会は限られていますけど、彼の競馬脳の高さを持ってすれば、すでに最低でも一つや二つは勝っていていいような気がしてならないのですよね。
気になるのは、彼らしいクレバーな立ち回りがデビュー当初よりも見られなくなっている点。ちょっと考えすぎかもしれませんけど、正直、師事する相手を間違っているのではないだろうかと、見ている側としては勘繰りたくもなります。
野球のピッチャーで言えば、最初からフォームや投球術に難癖をつけて自分の思う方向に直そうとするコーチっているじゃないですか。まさにそんなタイプの人が、彼の近くにいるんじゃないか、と。
これが単なる勘ぐりであればいいのですが、その答えはそう遠くないうちに出るような気がしてなりません。
最後に、競馬力向上に向けた参考として、2022バージョンの投稿、「ルーキージョッキー デビュー半年後の現在地」(無料記事)について、こちらにリンクを貼っておきますので、振り返りの意味を含め是非ともご覧くださいませ。
特に、当時はまだ2勝しかしていなかった佐々木Jに対する評価。結構イイコト書いていましたので(笑)
なお、JRA所属の全ジョッキーに関する評価表は、下記のマガジンにご登録いただくことで最新版をダウンロードできますので、よろしければご活用いただければと思います。
JRA騎手評価シート(平地編)はこちらから
JRA騎手評価シート(障害編)はこちらから