第64回 アメリカジョッキークラブカップ/第40回 東海ステークスのみどころ
明日は、中山でアメリカジョッキークラブカップが、中京で東海ステークスが行われます。
過去の実績から、どちらも比較的好成績が残っている別定のGⅡ戦。的を射た見どころ解説にすることはもちろん、できることなら2打数1安打は目指したいなと思っているのですけれど、さてどうなりますか……。
では、早速、それぞれのレースの見どころについて、解説していくことにしましょう。
中山11R アメリカジョッキークラブカップ
ここは、出走メンバーをざっと見渡してみると、前走GⅠ組、中山金杯組、リステッド・条件戦組と、大まかに勢力を3分割できそうですね。
ただし、中山金杯組のレベルは、メンバー構成や走破タイムなどから、実質的にリステッド・条件戦組と大差がないことが明らかですから、ものすごく大雑把にカテゴライズするならば、「GⅠからの臨戦か、そうでないのか」と括ってしまうこともできるのでしょう。
そう考えると、常識的には前走GⅠ組がやや有利なようにも思われますが、「GⅠで好走してここへ」という馬が一頭もいない点には、ちょっとばかり注意しないといけません。
現実には、「単にGⅠを使っただけ」という残念な結果に終わった馬も複数いるわけで、こうした状況をきちんと踏まえるのであれば、今年のこのレースに関しては、各馬の臨戦過程だけに着目して馬券の検討を行うことにほとんど意味はない。そんな言い方ができるのではないか、と。
そうだとすると、前走のレースの格を重視するよりも、「各馬がこれまでに示してきたパフォーマンスを総体として評価する」というスタンスでこのレースに臨むほうが、より的中へと近づける。そうは言えそうです。
特に前走GⅠ組に関しては、2走前、3走前にどんなパフォーマンスを示していたかが大事になってきますし、その他の馬たちに関しても、前走のレースぶりだけに力点を置くのではなく、「どのような過程を踏んでこの地に辿り着いたのか」という点にも、しっかりと目を向けないとダメ。あくまでも個人的な見解ではありますが、そう思います。
GⅠを除く注目レースという意味で言えば、やはりセントライト記念ということになるのでしょう。
お恥ずかしい話、菊花賞前までは、個人的にこのレースの内容を過小評価していたフシがあるのですよね。その後2着馬が菊花賞を、5着馬が中山金杯を勝ち、3着馬と6着馬は中山金杯当日の最終レースでメインレースを上回るレベルの好勝負を演じましたし、さらに8着馬は次走で重賞級の素質馬サンストックトンと大熱戦、9着馬はリステッドを勝って、10着馬はエピファニーが勝ったノベンバーステークスでコンマ4秒差の3着と好走しているほどですから。
つまり、このレースの勝ち馬、ガイアフォースのポテンシャルの部分だけにフォーカスするならば、中山金杯組を軽く凌駕することはもちろん、他のGⅠからの臨戦組やリステッド・昇級組と比べても、明らかに一枚上の力を持っている。そうは言えそうですね。
次に、展開ですが、ここが結果を大きく左右するひとつのポイントにはなりそうです。
ハナが理想のシャムロックヒルとバビットがどのような並びになって、どんなラップを刻んで行くのか……。
この2頭の着順が最終的にどうなるかはもちろんですけど、ペース次第で後続の走りにも大きな影響を与える可能性は大きいですから、想定どおりになるかどうかはともかく、「こんな形になるんだろう」というイメージだけは、あらかじめしっかりと持っておきたいところでしょう。
ということで、中心には⑦スタッドリーを推します。
ここまで前置きをウダウダと書いておきながらこの結論ですから、それ相応の数の方から「えっ!?」とツッコミを喰らいそうですが、何はともあれ推奨理由を……。
この馬は、枠の並びが悪くて道中で外々を回されたり、道中のペースに恵まず差し損ねたりで、勝った前走を含め、これまでにハマり切ったレースを一度も経験していないと思うのですよね。
その中で、要所要所では確実に脚を使って見せ場はつくっていましたし、敗れたレースでも、常に「負けて強し」を感じさせるパフォーマンスを示してきましたから、少なくともこれくらいのメンバー構成なら、まったく歯が立たないということはないのでしょう。
条件面でも「外回りの中山2,200m戦」というのは、勝負どころから自分で動いて行けるこの馬にはピッタリですから、正直、ポテンシャル面だけを言えば、せいぜい3,4番手までかもしれないですけど、「馬券圏内の確率」という視点で見れば、この馬が最上位。そう自信を持って判断しました。
2番手は、⑩ガイアフォース。
シンプルに考えれば、この馬中心でいいと思うのですけれど、どうしても気になるところがあって、最後、信用し切るところまでは行かなかったので、一段評価を落としてこの位置としました。
その「気になるところ」ですが、この馬には説明のできない「ポカ」があるという点がひとつ、もうひとつは、真っ白な馬体から、基本、早熟傾向ですでに完成され尽くされているのではないかという点になります。
後者の論点については、単なる一般論でしかないので過剰に気にすることはないと思うのですが、前者の「ポカ」の部分に関してが、どうしても気になって仕方がないのですよ。
具体的には、あずさ賞でセントカメリア相手に取りこぼしたあのレース。セントカメリアは、次の月岡温泉特別でセントライト記念5着のラーグルフに完敗を喫しているわけですから、確かに素質馬ではあっても、ガイアフォースが取りこぼしてはいけない相手だったのではないか、と。
もっと言えば、前走の菊花賞とて、距離だの内枠だのと敗因についていろいろと言われていますが、なんだかんだそれにしても負け過ぎなのは確かですから、これも「ポカ」と言えなくもないわけで……。
つまり、説明のできない「ポカ」がある馬とは、とても心中する気にはなれないから、やはり中心視まではできない。そう表現しておきます。
3番手は、⑥ユーバーレーベン。
この馬にとってこのレースは、レース条件、体調面、相手関係のどれをとっても、久々に勝ち負けに持ち込める環境が整っているのではないか、と。このコースなら、外からマクる競馬でもいいですし、時計の掛かる今どきの馬場も歓迎材料になりますので。
ちなみに、以前にも一度書きましたが、トップの写真は、生後間もないユーバーレーベンと偶然「かくれんぼ」した時のもの。走る馬って、道路を散歩中にフットワークがチラッと視界に入ってきただけでも、ビビッとくるものがあるんですよね。
4番手は、④ノースブリッジ。
この馬は、前から離れた3番手でスムーズに流れに乗れそうですし、毎日王冠の時くらい走れれば、このメンバー構成なら馬券圏内争いには加われそうだな、と。
本質的には、この距離は1ハロン長いと思いますが、それでも得意の中山なら、うまいことコーナーで息を入れれば、なんとかごまかしが効きそうですしね。
その他、⑪エピファニーに関しては、デビュー戦を観た時に「ダービー馬はこの馬!」と思ったほど期待していましたからね。
ただ、2戦目の未勝利戦でガツンと行きたがって以降、折り合い面に不安が出て、なかなかフルパワーで走れていない現状ですから、素質だけならガイアフォースに肉薄するくらいのものを秘めているとは思うのですけれど、今回は一気の相手強化に加えレース条件も大きく変わっていますから、あえて積極的に狙う理由はないと判断しました。
⑤バビットは、シャムロックヒルとの先行争いで消耗する可能性がありますし、仮にそこをクリアできたとしても、この距離は本質的に1ハロン長い気もします。
もちろん、楽な単騎逃げになって逃げ残ってしまうシーンは当然ありえるのでけれど、確率論的には、さすがにそこまではケアできないな、と。
中京11R 東海ステークス
正直、サルサディオーネの回避はかなり残念なニュースでした。
この馬が出走してくれれば、道中でペースがガクンと落ちることはなくなるので、出走各馬の現段階における力関係が、より顕在化することになりますからね。
ただ、この残念なニュースがあったことを踏まえても、各世代で充実期を迎えた馬たちが多数出走してきたここは、非常に見応えのあるレースが展開されるのではないか、と大いに期待しているところです。
個人的には、「昨年暮れのGⅠチャンピオンズカップよりも、中身の濃いレースになるであろう」という見立てですし、展開次第で差しも決まる今の中京ダートの馬場状態を考慮に入れるならば、ゴール前で有力各馬が高いレベルでしのぎを削り合う、東海ステークス史上最高の素晴らしいレースになるシナリオまであっていいのかな、と。
さらに言うと、有力馬の脚質がバリエーションに富んでいるのもいいんですよね。
逃げ・番手 プロミストウォリア
先行 ハヤブサナンデクン
好位 ウェルカムニュース、オーヴェルニュ
中団前 ハギノアレグリアス、ゲンパチルシファー
中団 スマッシングハーツ
中団後ろ サンライズウルス
後方 クリノドラゴン、ロードレガリス
最後方 ヴァンヤール
不明 アイアンバローズ
こうやってざっと有力馬を並べてみても、非常にバランスの取れた構成になっていることがよくわかります。
だからこそ、返す返すもサルサディオーネの回避は残念なんですけど、その分、プロミストウォリアにはドスローにコントロールしたりせず、この馬を信じた強気なペースメイクをして欲しいのですけれど、ムルザバエフJですし、そこがどうなるかはちょっと微妙なんですけどね……。
ただ、あまりのスローになれば途中で動いていく馬が現れそうですし、いずれにしてもこれだけのメンバーが集まったわけですから、変に展開を深読みしたりせず、今の各馬の力関係をシンプルに評価して、シミュレーションを組むのが的中への近道。そんな気もしますね。
ということで、中心には、⑩プロミストウォリアを推します。
昨年行われた中央のGⅢ、プロキオンステークスとみやこステークス、そしてGⅠチャンピオンズカップのレースレベルがそれぞれ大したことなく、王者テーオーケインズが自爆した際には、馬券圏内の組み合わせがどのようなものになろうとも一切驚くことはない。それが、ダート界における現状であると私は考えています。
暮れの東京大賞典でも、重賞初挑戦だったウシュバテソーロがあっさりと勝ち切ったことを見てもわかるとおり、今のダート界に「格」なるものは存在しないのでしょう。
摩耶ステークスでのこの馬の勝ち時計1:52.0は、取り立てて優秀というわけではありませんが、道中にラップ構成を考えれば、同タイムのベテルギウスステークスよりもこちらが上の評価になりますし、みやこステークスとの比較でも、馬場差を考慮すれば少なくとも大きく見劣っているということはないのかな、と。
さらに言うと、この馬にはまだ伸びしろがありますからね。「脚元に不安がなくなったわけではない」と言えば、心配材料にしか聞こえませんけど、その分まだまだ良くなる余地があると考えれば、むしろプラスと捉えることもできるわけですから、今の上昇度を加味するならば、比較上位はこの馬。そんな結論となりました。
2番手は、⑬ハヤブサナンデクン。
この馬の前走は、一旦完全に先頭に立つまさに「負けて強し」の競馬。太かった馬体が絞れてくるようなら、さらなる粘り強化が見込めますから、得意の中京で2番手からスムーズに運べるようだと、プロミストウォリアとの「行った行った」を十分に狙えるのではないか。そう考えました。
ただ、あんまり重いダートになると良くありませんから、午前中から時計がかかるレースが続いて、差し・追い込みがバンバン決まっているようなら、ちょっと割引が必要になりますけどね。
3番手は、⑪スマッシングハーツ。
この馬にはすぐに反応できない不器用な面があって、前走のように瞬時の反応を求められる瞬発力勝負は基本不向き。プロミストウォリアがつくる流れなら、さすがに前走ほどのドスローにはならないでしょうから、今回はこの馬らしい息の長い末脚を存分に活かせるのではないでしょうか。
脚質的に突き抜けるところまでは難しそうですけど、馬券圏内なら……という感触は十分にありますね。
4番手は、①ディクテオン。
この馬に関しては、このメンバー相手に最後方から行って届くのか……というそもそも論は当然ありますし、「中京替わり&距離短縮でも狙っていいのか」という視点で言えば、正直、躊躇するところはあったのですけれど、それでもこの馬の強烈な末脚は、ウシュバテソーロと遜色ないレベルのものですからねえ~。
さすがに頭まで突き抜けるのは厳しいかもしれませんが、馬券圏内に差し届く絵面は十分に想像できますから、とにかく道中は自分の競馬に徹し、最後はブロードアピールばりの末脚を発揮してくれることを期待しましょう。
一応、4頭には絞りましたが、このレースに関しては、このほかにも勝ち負けに持ち込んでおかしくない馬が何頭かいますので、パドックの状態やトラックバイアス次第で、場合によってはレース直前のタイミングで評価に微調整を加えることが必要になってくるかもしれません。
他の馬については、その点も意識しつつ、簡単に評価を付しておきたいと思います。
④ハギノアレグリアスは、みやこSが勝ちに等しい内容でしたし、体調面でもまだまだ上積みを見込める中で、鞍上もただいま絶好調の川田Jとくれば、無視できる存在でないことは明らかでしょう。
ただし、今回は先ほども書きましたけど有力馬の脚質がバラバラなので、正攻法の競馬をしてくるであろうこの馬には、ちょっと戦いづらいのではないか、と。
外を回って進出して行って簡単に勝てる相手でもありませんし、反対に追い出しを待てば、前残りを許すリスクが高まると同時に、待っているうちに後ろの馬の切れ味にやられてしまう可能性もあるわけですから、川田Jのエスコートが120%ハマらないと勝ち負けまでは厳しい。そう決めつけることにしました。
⑦ウェルカムニュースは、前にも行けますし、今のこの馬の充実度を考えると、やはり怖い存在ではありますよね。
ただ、前走の時計は平凡ですし、ここで勝ち負けを演じるには、パフォーマンスをあと2段くらい上げてこないと厳しい印象もあったので、泣く泣くはさすがに言い過ぎですけど、最後は消すという判断に落ち着きました。
⑧サンライズウルスは、対ハギノアレグリアスで考えた時に、明らかにこちらが劣勢と思われるので、ハギノアレグリアスを消すならこちらも……という理屈になります。
②オーヴェルニュにとってここは適条件のレースとなりますが、年齢的に少しずつパフォーマンスが落ちてきている印象もありますから、今年の骨っぽいメンバーが相手では、「頑張っても掲示板の下のほう」という評価でいいような気がします。
⑫クリノドラゴンは、マイナー種牡馬の産駒で、応援したい気持ちはあるのですけれど、能力的には、オーヴェルニュと似たり寄ったりのレベルと見ていいのかな、と。
⑮アイアンバローズは、血統面からも、この馬の走法からも、ダートで化ける可能性を秘めていることは確かなのでしょう。
ただ、ここはいかにも相手が揃った印象で、このレースで一発回答を出すためには、優にGⅠ級の能力がないとできない芸当のようにも思われますから、怖さがまったくないと言えばウソになりますが、現実的な判断としては「消しが妥当」と最後は割り切ることにしました。