第56回 スプリンターズSの回顧
結果を見れば、完全なインベタ天国。人気の牝馬2頭は、枠の並びの悪さに完全に持ち味を殺される格好となりました。
こうした傾向を示すことは、戦前にある程度予想できたこととは言え、それにしてもトラックバイアスが思った以上に極端ではありましたから、この着順が各馬のポテンシャルの高さをつぶさに反映しているとは言えないのでしょうね。
ただし、勝ったジャンダルムに関しては、状態の良さ、圧倒的な中山適性の高さ、枠の利、荻野極Jのロケットスタートとあらゆる要素が噛み合った見事な勝利でしたから、時計の遅さはやや気になるものの、ある意味「勝つべくして勝った」と評価してもいいのかな、と。
では、早速、レースを振り返っていくことにしましょう。
中山11R スプリンターズステークス
レースの全体観としては、ウインマーベルが僅差の2着に喰い込めるくらいの凡戦。おそらくそんな見方ができるのだろうと思います。
つまり、上位3着までの馬は、「自分の力をMAXに引き出したら馬券圏内に喰い込めた」というだけのことであって、特に人気薄馬の大駆けがあったとかそういうことではなく、単にポテンシャル上位の馬が自爆したと評価するのが妥当なのではないでしょうか。
勝ったジャンダルムは、「この馬がGⅠを勝つチャンスがあるとすればココ」というワンチャンスを見事に生かしましたね。
今回は、「荻野極Jの騎乗ならジャンダルムは出遅れない」という伝説にさらなる磨きをかけてのロケットスタート。馬の力はもちろんですが、今回に関してはジョッキーの腕に依存する部分が大きいGⅠ初制覇だった。個人的にはそう理解しています。
よって、再現性はどうか、ということになりますが、まずは純粋にジャンダルムのスプリンターズステークス母子制覇を祝福したいな、と。
2着ウインマーベルは、前が詰まってもインにこだわるレースをしたのが好走につながったのだと見ます。
このあたりは、この馬の長所である器用さを存分に活かすとともに、トラックバイアスを正確に見抜いてインにこだわった松山Jのファインプレーと言っていいのではないでしょうか。
3着ナランフレグは、この馬場でよくぞ3着まで差してきたな、と。
思ったよりも時計が掛かったのが奏功したとは言え、この厳しい条件の中でキッチリと脚を伸ばしてきたことは評価しないといけません。
中心視したダイアトニックは、惜しくも4着。メイショウミモザと枠が逆だったらおそらく勝ち負けだったんでしょうね。
このあたりは展開の綾としか言いようがなく、結果論、好スタートがアダとなってしまった印象ですが、岩田康Jの狙いは実に的を射たものでしたし、少なくともやるべきことはしっかりとやってくれた。そう評価しています。
5着ナムラクレアは、懸念していた浜中Jの安全運転が現実のものとなって、何とも煮え切らないレースになってしまいました。
まあ、力負けではないだけに残念な結果ではありましたけど、この馬にはまだGⅠ制覇のチャンスが残されていますから、来年こそは力を出し切るレースをしてGⅠ馬の称号を手にしてほしいな、と。
12着メイショウミモザは、こちらのイメージどおりのレースをしてくれましたから、上位に評価したことに後悔はありません。丹内Jも、イチかバチかの勝負を賭けた胆力ある騎乗を見せてくれましたし、、、
14着メイケイエールは、完全に外枠がアダとなってしまったわけですが、おそらく敗因はそれだけではないのでしょう。ただし、もともとこういう気性の馬ですし、常に大凡走のリスクをはらんでいることに変わりはありませんから、今回はちょっと過剰に評価してしまったなと、素直に反省です。