秋華賞の見どころ
明日は、京都競馬場で秋華賞が行われます。デアリングタクトの3冠なるかに注目が集まっていますが、ここではレース全体を俯瞰した上で、レースをシミュレーションしながら見どころを解説していくことにしましょう。
もともと、京都の内回り2,000mは、圧倒的に内枠が有利なコースで、2,000年のティコティコタックのように、枠の利を存分に生かし切って勝利を収めた馬も過去にはいました。ただし今年は、土曜日の時点ですでに馬場の内側が痛んでいて、先行馬もそこを避けるようなコース取りをしていましたから、内枠のアドバンテージはほとんどないと考えるべきでしょう。かといって、外枠が有利なわけでもなく、相対的には真ん中あたりの枠の馬が競馬をしやすくなるイメージになります。ただ枠の並びが極端な印象もあるので、1コーナーでの隊列をやや読みづらい部分もあります。
問題は、馬場がどこまで乾くかで、9R、10Rの傾向を見ながら、直前までトラックバイアスを慎重に検討することが必要になるでしょう。馬場傾向次第でかなり着順が入れ替わってしまうような力関係ですから、トラックバイアスと騎手との親和性をどこまで見抜けるかが的中のカギを握ると言っても過言ではありませんね。
展開的は、⑰ウインマリリンの横山武Jと⑱アブレイズの藤井勘Jが、1コーナーまでにどの位置を取れるかが最大の焦点になります。おそらく②リアアメリアの川田Jは、好位のポケットに安易に下げるとは思えず、ハナに行ってもいいくらいの気持ちで内から張っていきそうな気がするわけですが、そこでどれくらいのストレスがリアアメリアにかかるのか、そこがひとつの読みどころになると思います。
ただいずれにしても、土曜日の雨がデアリングタクトに味方することだけは間違いないでしょう。道中で多少の距離ロスがあっても、今の馬場なら致命傷にまではなりませんから、そういう意味では、デアリングタクトは「持ってる女」と言えるのかもしれませんね。
ではここから、これらの極めて重要な前提条件を踏まえつつ、出走各馬について評価していこう思います。
①ミヤマザクラ
春シーズンの比較で言えば、デアリングタクトとは完全に勝負づけが済んでいた印象。絶好枠を引いたはずが、馬場悪化で威力半減とあっては、春からかなりの成長がないと、ソコソコは走っても勝ち負けまでは厳しい。
②リアアメリア
この馬は、春シーズンから大きくパワーアップ。前走は、展開に恵まれたとか、時計がもの足りないとかいろいろ言われているが、ここは先行して馬場のいいところを選んで走ってくるイメージが持てる分、枠のアドバンテージが半減しても好勝負の予感は十分。川田Jでもあり、デアリングタクトに出し抜けを喰らわせるようなイメージで強気に乗ってくると思うので、ゴール前でタレる絵面も想像はしつつ、ハイレベルな勝負に持ち込んでくれることを期待したい。
③マルターズディオサ
基本的に人気になりづらいタイプだが、春シーズンは馬のコンディションさえよければデアリングタクトに次ぐ評価をしてもいいくらいの強いレースを見せていた。紫苑Sを勝っての臨戦となる今回もまた、一部でトライアルホースなどと揶揄されているようだが、いやいやどうして、見せ場以上のレースを期待してもいいはず。レースで好結果を得るには、1コーナーの攻防を上手にさばくことがカギを握るだろう。
④ホウオウピースフル
春時点の比較では、ミヤマザクラあたりと遜色なし。大きな力差はないが、さすがに馬券圏内までは期待薄か。
⑤ウインマイティー
かなり外を回された前走とは打って変わって、ここは和田竜Jが絶妙の立ち回りで見せ場を作って来られる条件が整っている。あとは、純粋に力関係。オークスは完全に1強の競馬だったことを考えると、ギリギリ馬券圏内を期待できるかどうかのボーダーラインにいるのがこの馬という評価になりそう。
⑥ダンツエリーゼ
芝がはっきりダメとは言い切れず、展開がハマり切ったら大外からいい脚で追い込んでくることがあるかも。ただ確率論的には、そこまではケアしきれない印象も。
⑦ムジカ
前走は「なんでこんなに人気がないの?」という状況だっただけで、ある意味、力通りの好走だった。ただ、コース取りも含めすべてが完璧に運んだ結果でもあったので、対リアアメリアの力関係も含めて検討すると、さすがにここでは厳しそう。
⑧ソフトフルート
前走時計は、ローズSなら2着相当。馬場差を考慮しても、ムジカと同等かそれ以上の評価は必要になりそう。あとはそれで足りるかだが、確率論的に言えば大きな期待までは厳しいかもしれない。
⑨サンクテュエール
春から相当な大化けがないと厳しい力関係。ルメールJ騎乗でも、さすがに大きな期待まではどうか。
⑩クラヴァシュドール
成長を期待した前走が案外の結果。この馬も、ミヤマザクラあたりと差のない評価が妥当なのかもしれない。
⑪フィオリキアリ
同世代の一線級相手では、春も秋も入着級。好調の北村友Jが完璧な立ち回りを見せても、掲示板あたりがギリギリか。
⑫マジックキャッスル
この馬は、終いに必ずひと脚使えるタイプ。ロスなく回ってきそうな大野Jで、脚の使いどころがピタリとハマれば上位進出の期待もあり。ただし、タイミング良く前が開くとか、かなりの運を引き寄せないと馬券圏内までは厳しいかもしれない。
⑬デアリングタクト
3冠に向けての大きな不安要素であったこのトリッキーなコースも、馬場の内が荒れてきたことでもう恐れるに足りず。あとは、絶好調とまでいかなくとも普通の仕上がりがあれば、3冠達成の可能性は高い。あとは松山Jが、焦らずに平常心で乗れるかだけだろう。
⑭オーマイダーリン
本来的にこの距離は長い。能力的に大きな差はないが、さすがにこのメンバーではごまかしが利かないだろう。
⑮ミスニューヨーク
切れないけどバテないのがこの馬の長所。好位で流れに乗って、直線で一旦先頭に立つようなシーンをつくれると、意外に侮れない。長岡Jが同厩舎のデアリングタクトをアシストすることまで意識しているとするならば、勝負どころで自ら仕掛けていく可能性もあって、結果的にこの馬の長所が存分に引き出される可能性すらある。ただし、確率論的に言えば、さまざまな条件がジャストフィットしない限り、馬券圏内まではさすがに難しいかもしれない。
⑯パラスアテナ
ここ2走は、ともに外枠を引いて非常にロスの多い競馬を強いられている。特に前走の紫苑Sでは、開幕週の馬場で終始4頭分外目を回るロスを強いられながら、長く脚を使って2着。勝ったマルターズディオサよりも、明らかに強い競馬をしていた。そのマルターズディオサが上位争い必至ならば、この馬はさらに上を期待していいということ。関西への輸送は気になるが、その点には目をつぶってデアリングタクトに次ぐ2番手の評価としたい。鞍上が坂井瑠Jに乗り替わるのも、むしろプラス。武Jよりも積極的なレースを仕掛けてくるはずで、長くいい脚を使うこの馬にはピッタリだろう。
⑰ウインマリリン
春はフローラSを勝ち、オークスでも2着。地力は、このメンバーでも上位だろう。ただし、春は展開にかなり恵まれたところもある中で、今回は、休み明け、輸送、この17番枠とかなり厳しい条件が揃った。さらに、鞍上の横山武Jはここのtころ絶好調であるが、ここはその積極性が裏目に出る可能性も高いので、思い切って消しとしたい。
⑱アブレイズ
さすがにここでは能力的に荷が重そう。ただし展開のカギを握っている部分もあり、もし藤井勘Jが強気のレースメイクをすると、リアアメリアあたりが厳しい競馬を強いられることになるだろう。そういう意味では、序盤のレースぶりに要注目と言える。