第78回 セントライト記念のみどころ
中山11R セントライト記念
明日の中山は、午前中にまとまった雨が降る予報が出ていますが、どうやら大雨というところまでは行かなそうですし、地がしっかりしている超高速馬場であることを踏まえると、多少の影響はあれどレース結果を根底からひっくり返すようなことまではない。そう考えていいのではないでしょうか。
また、ここは外回りの2,200m戦となりますので、何より勝負どころで無駄なブレーキを踏まないことが大事になるわけですが、今の馬場で終始外々からという競馬も当然楽ではありませんので、そのあたりのバランスを上手に取りながらレースシミュレーションを組んでいく必要はあるでしょう。
今年は特に、「明らかに力は上だが、とにかく不器用」という馬が上位人気となっている現状を踏まえると、「いかにバランスの取れた予想を組み立てられるか」が、成否を分けるキモになってきそうな気がしています。
次に各馬の力関係についてですが、これはもう、皐月賞、ダービーを使ってきた春のクラッシック組上位とみてほぼ間違いないと思います。
ただし、コスモキュランダ、アーバンシック、エコロヴァルツという人気上位3頭が、揃いも揃って大味な競馬をしてきそうな点はやはり気がかりで、「道中の立ち回り次第では、伏兵陣のつけ入る隙も十二分にあるだろう」というのが、当研究所なりの見解となります。
最後に展開ですが、ゴメンナサイ、ここは前の並びがまったく読めません。「タガノデュード、アスクカムオンモア、ヤマニンアドホックあたりが前受けする形になるだろう」というところまではいいとして、その並びを正確に読み切るのはほぼ不可能。
だとすれば、極端に速いペースにはならないだろうと想定はしつつ、各馬が通ってきそうなコースにヤマを張りすぎるのは、あまり得策でないのかもしれないな、と。
いずれにしても、コスモキュランダは外々をマクる競馬にしかならないでしょうし、アーバンシックとエコロヴァルツの2頭も、インの狭いところを上手に捌いて……というタイプの馬ではありませんので。
ということで、中心には⑨アスクカムオンモアを推します。
この馬は、プリンシパルSで接戦を演じたメリオーレムとヴィレム、および1勝クラスの素質馬グランアルティスタとの比較から、スティンガーグラスとほぼ同等の能力を有しているとみており、そのスティンガーグラスよりも前の位置で競馬をできる点が、今回、強力なストロングポイントになると考えます。
右回りと距離に関しては、おそらく大丈夫でしょう。この条件がベストであるかどうかはともかく、過去2年の勝ち馬レーベンスティールとガイアフォースの走りを見てもわかるとおり、速い時計が出る秋の中山なら、距離をサクッとこなせてしまう傾向がありますので。
また、前走の走破時計は古馬2勝クラス戦を楽に上回る優秀なもの。
プリンシパルS当時よりも一段階パワーアップした印象もありましたので、ガチンコ勝負ではまだ足りなくとも、今の中山の馬場で前受けできる優位性を存分に生かせるようだと、ダービー組を喰ってしまう期待は大きい。
最終的にそう判断しました。
2番手は、⑫スティンガーグラス。
アスクカムオンモアを中心視するなら、この馬もこの位置には置いておかないとつじつまが合わないな、と。
2走前はプリンシパルS4着のヴィレムに敗れたものの、レース内容は互角かそれ以上。前走は1勝クラスの平場戦勝ちですが、同日に行われた3勝クラス日本海ステークスとのラップ比較から、少なくとも古馬2勝クラスで楽勝できるだけの能力は備わっているとみます。
さらに言うと、この馬は馬群の中でしっかりと脚を溜められるキャラクターですので、「勝負どころから強引な仕掛けをしてくるであろうコスモキュランダに先に脚を使わせておいて、相手の勢いが衰えたところをインから差す」みたいな競馬ができるのではないか、とも。
頭にあるのは、1994年の京都新聞杯で後の3冠馬ナリタブライアンを負かしたスターマンのレースぶり。当時、鞍上の藤田伸二Jは、ナリタブライアンの捲りをやり過ごす間、インに入ってジッと脚を溜め、最後の直線で弓矢を放つごとく鋭い脚を使って差し切ったわけですが、今回、武Jにやってほしいのはあんなレースだったりもします。
※ youtubeにアクセスして「スターマン 京都新聞杯」で検索すると当時の映像が見られます
3番手は、⑧コスモキュランダ。
中山外回り2,200mという条件は、この馬にとっておそらくベストなんだろうと考えており、さらに皐月賞2着の実績を踏まえるのであれば、本来なら素直にこの馬を中心視すべきなのでしょうがね。
ただ、皐月賞はモレイラJがこの乗り難しい馬を完ぺきにエスコートしたのが主たる好走要因ですからね~。
主戦のM.デムーロJに乗り替わり、「出遅れ必至、大外ブン回し必至という状況下においても信頼できるか?」と問われた時に、「ハイ、大丈夫です」と答える自信はさすがになかったので、ならば伏兵陣が演じるであろう「ハチの一刺し」に期待するほうが賢明かなと思ったところでした。
4番手は、⑪パンジャ。
この馬に関しては、それこそ長年の勘といいますか、最後の直線で脚を使ってくるイメージがドバドバっと湧いてきてしまったので、チャレンジ枠的な位置づけで最後に抜擢してみました。
うんちくを言えば、「中山外回り2,200mがおそらくベスト」とか「函館の未勝利戦勝ちが古馬2勝クラス級」などと理屈はつけられるのですが、今回に関しては、「この馬、ワンチャンあるんじゃない?」と直感的に思ってしまったその感覚を、最後まで信じてみようということに尽きます。
その他、アーバンシックは、今の中山の馬場では「外を回して届かず」とか「馬群に突っ込んでドン詰まり」という絵面しか浮かんで来なかったので、その直感を信じ選外としました。
もちろん、中山外回り2,200mへの適性は感じますし、地力も上位なんでサクッとやられちゃう覚悟は持ちつつ……ですけどね。
エコロヴァルツのダービーは、最後の枠入れだった分だけ好スタートを切れましたが、ここは十中八九出遅れるだろうというのが当研究所の見解となりますので、それを挽回して好勝負に持ち込めるほどの力は備わっていない。そう判断してビシッと消します。
ヤマニンアドホックは、ハナに行ってマイペースの逃げに持ち込むか、インのポケット脚で溜めて最後にひと脚を使うか、そのどちらかが好走パターンになるわけですけど、前者のパターンに多少の可能性を感じさせるものの、このレース条件、この相手だと過度な期待はできないな、と。
そのほかでは、エコロレイズ、ルカランフィースト、タンゴバイラリンあたりに多少の可能性を感じますが、この3頭にとってこの距離はさすがに長い印象もありますので、あえて拾っておくほどの理由はないと考えています。
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