第82回 皐月賞の回顧
いや~、イクイノックスは強い!
もちろん、「ジオグリフは強い!」の間違いではありませんよ。レースを観た率直な感想としては、冒頭のこの言葉以外は出てきませんでした。そんな衝撃的な内容のレースだったと思います。
では、早速レースを振り返っていくことにしましょう。
中山11R 皐月賞
まず勝ち時計の1:59.7ですが、正直、う~んというレベルなんじゃないかと思うのですよね。
前日の山藤賞を圧勝したローシャムパークの勝ち時計が2:00.3ですし、そこから少しは馬場が乾いたことを考慮に入れるならば、この1:59.7という時計にはちょっと不満が残る。そんな言い方ができるのではないでしょうか。
ラップ的には、前半よりも後半が早く、さらに中盤で明らかな緩みが生じていましたから、決して外差しが有利という流れではなかったのですが、それを補って余りあるほど、内外で馬場状態に極端な差が生じていた。そうは言えるのでしょう。
勝ったジオグリフは、最もいい位置でスムーズに流れに乗れていましたし、適度に時計が掛かってくれたことも、この馬には幸いしたように思います。
テン乗りで、しっかりとゲートを出した福永Jの手綱さばきもお見事のひと言でしたから、つまるところ、あらゆる要素がガッチリと噛み合っての勝利。そんな評価でいいのではないでしょうか。
もちろん、この馬がこれまでに積み上げてきた経験値が生かされたことは、言うまでもありません。よって、「運がよかっただけ」の勝利でないことだけは強調しておかないといけませんが、その反面、10回のうち3回、4回とこのメンバー相手に勝てるのかと言えば、それははっきりないと言えるでしょうから、そこは冷静に評価しておく必要があるのでしょう。
個人的には、ノド鳴りの馬には高い評価を与えないと決めているので、この馬にやられるのは仕方がなかったと割り切れます。ただ、クラシックの舞台でこういうハズし方をするのはかなり残念なこともありますから、ジオグリフには、すぐにでもノドの手術を受けてほしい。そう願ってやみません。
2着のイクイノックス、いや~、バケモンですよ、この馬。
ルメールJが大外枠から積極的に出していった結果、前に馬を置けず終始行きたがっていましたから、個人的には、向こう正面の段階で「ああ、こりゃ大敗だな」と思ったほどでした。
ところが、、、です。勝負どころから持ったままの手応えで先頭に並びかけただけでもスゴイのに、一旦は完全に抜け出すところまで行きましたから、これはもう只者ではないな、と。結果は2着ですけど、内容的には圧勝したも同然。そんな評価でいいように思います。
3着ドウデュースは、一番人気でも弱者の競馬に徹して、キッチリと馬券圏内を確保してきたな、という印象ですね。
一部には、後ろから行き過ぎたんじゃないかという批判もあるようですが、もっと色気を持ってレースを進めていたら、おそらく掲示板が精一杯だったでしょうから、ここは武Jの好騎乗あっての好走という評価でいいように思います。
最近の武Jは、どうにも詰めが甘い印象が否めませんが、今回は自分の騎乗馬のポテンシャルを冷静に分析して、もっとも合理的な戦法を選択したんじゃないでしょうかね。その意味で、とても地味ではありますけど、ここは武Jの大ファインプレー。個人的にはそう評価します。
レース後のコメントは……。とりあえず敗因を馬のせいにしたくなかったのでしょうね。なんとも武Jらしいな、と。
4着ダノンベルーガは、結果的に馬場の悪いところを走らされる形になってしまいましたが、厳しいレースになってしまった中では、よく走っているほうという評価ができるのかもしれません。
ただしこの馬の潜在的な力を考えると、正直、もの足りなさが残るレースぶりであったとも思え、明確な敗因がどこにあるのか、そこを今ひとつ掴み切れていないというのが正直なところなんですよね。パドックを歩く雰囲気も絶好でしたし、デキに問題があったとは思えないだけに、今回の敗因については、ダービーに向けてしっかりと精査していかないといけません。
5着アスクビクターモアは、よく走っているほうだと思います。このペースだと、タメても最後にキレ負けすることは容易に予見できるわけですから、思い切ってハナに行った田辺Jの判断は正解でしょう。
結果論で言えば、極端な外差し馬場になってしまって、この馬の器用さが生かし切れない結果となってしまいましたが、その中で最後までよく踏ん張っていたとも言えますし、ここは純粋に力負け。でも馬は、最後までよく頑張った。そんな評価でいいように思います。
13着キラーアビリティは、いいところナシの惨敗となってしまいました。いくら何でもここまで走れない馬ではありませんから、やはりレース前に危惧していたように、体調面が本当ではなかったのでしょう。確かに出遅れはありましたけど、この馬のポテンシャルの高さからしたら、敗因がそれだけということは絶対にありませんからね。
正直、この内容だと、ダービーで一気に巻き返すというのは容易ではないかもしれません。多少の良化はあるかもしれないですけど、それはイクイノックスにも、ダノンベルーガにも言えることですから、ダービーの有力候補としては、完全に一歩か二歩後退。厳しいですけど、そう言わざるを得ない敗戦だったな、と。
さて、この結果を受けて、ダービーのシミュレーションをどう組み立てていくべきか。ここから、楽しみながら頭を悩ませられたらといいですね。
自分的には、今年はもうイクイノックスで決まりか、って感じなんですけど、なんとかドゥラドーレスにはダービーまで駒を進めてもらって、思わず息を呑むような激しい攻防が演じられることを、ひそかに期待していようと思います。
最後になりましたが、皐月賞で、見事、馬券が的中した皆さん、おめでとうございました!