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違法電動ファットバイクに捧げる挽歌 / 品質編

皆様、こんにちは!!
ラッコ店長です。

最初にお詫びを

新宿区で営業しておりますと、電動自転車のお客さんがとても多く、ご来店になります。
パナソニック、ヤマハ、ブリジストンさんなど、国内ブランドが定番です。
しかし、海外ブランドの電動自転車も多く拝見します。

本稿では、特に海外ブランドの電動自転車について述べます。
本稿における、違法電動ファットバイクとは、20インチx4.0インチなどの極太タイヤを履き、前後にサスペンションが装備されて、電動アシスト比率が既定値を超えている、あるいは電動のみで自走可能な車体のことをいいます。

本稿には辛辣(しんらつ)な表現が多くあります。
上記バイクにお乗りの方のご気分を害されたのであれば、申し訳ございません。
しかし、自転車業界にいる者のほとんどは、本稿のようなバイクに辟易(へきえき)していることでしょう。

急増

これらの車体は、2022年くらいから急激に増えておりまして、お値段は¥100,000から¥300,000くらいのものが多いです。

ところで、自転車で¥100,000、¥200,000、¥300,000という金額をお出しになった場合、高い買い物をした!!自分はすごい自転車に乗っているんだ!!とお思いかもしれません。

確かに、¥300,000という金額は少額ではないかもしれません。
しかし、GIANTでも、TREKでも、SPECIALIZEDでも何でもよろしいですが、世界レベルで戦えるスポーツバイクブランドの車体で、前後にサスペンションが装着されているモデルは、安くても¥500,000からです。
各社とも不当に値を吊り上げているわけではなく、一級のスポーツバイクブランドがマトモな耐久度、クオリティを維持して車体を作ろうとすれば、このくらいの値段はする、ということです。

つまり、前後にサスペンションが装着された電動自転車で、¥500,000よりもお安い車体は、お気を悪くしていただきたくないのですが、単なる安物です。

どのあたりが安物なのか フレーム

まず、フレームの素材、出来がありえないほど低品質です。
鉄のカタマリ!?といいたくなるほどのとんでもない重さ、さらに溶接も粗悪、精度も出ていないのでホイールがまっすぐ入りません。

それでいて、生意気にも(大変失礼)ディスクブレーキを採用しているモデルが多く、今どきのディスクブレーキ車体であれば、スルーアクスルであるのが当然であるところ、違法電動ファットバイクはフレームの出来がひどすぎるため、スルーアクスルでホイールを固定しようとした場合、シャフトがまっすぐに入らないのです。

この記事をお読みの方で、スルーアクスルのディスクブレーキロードバイク、マウンテンバイクにお乗りの方はたくさんおいでと思います。
スルーアクスルは当たり前のように、シャフトが車体の右から左に貫通して、そのままネジ止めできる。。。とお考えでしょう。

しかし、違法電動ファットバイクはフレーム、エンド処理の精度が低すぎて、右から挿入したシャフトが左の穴に入らないのです。
そのため、スルーアクスルではなく、今どきありえないでしょ、と思うナット止めになっているのです。
ナット止めであれば、ママチャリと同様、数ミリ、ズレてようが強引にネジ止めできますから。

これが笑わずにはいられるでしょうか。
ひどいとしか申し上げようがありません。

さらに、設計思想がドアホ過ぎて、分解、修理がものすごく大変です。
ノウハウのある会社が設計したのではなく、海外の工場で適当に、やっつけ仕事で設計、組み立てをしているとしか思えないクオリティです。

さらに、この手の電動自転車は、何故か折りたたみ機構を取り入れようとします。
車体がとんでもなく大きいため、折りたたんだところでたいしてコンパクトにはならないのです。

しかし!!
これはマーケティングの勝利といいますか、(ものすごく失礼ながら)自転車のド素人の方は折り畳めるのであれば、小さくなる、クルマにも載せられる!!、お家においても邪魔にならない!!と妄想して、折りたたみ機構を礼賛するのです。

しかし、折りたたんだところで、大して省スペースになるわけでもなく、かえってフレームの強度、剛性が大幅にさがるため、車体の走行性能が著しく下がります。
さらに、折りたたみ機構によって重量増となり、とんでもないゲテモノ(大変失礼)が誕生するのです。

あ、この折りたたみ機構、役に立つ場面がございました。
普段の走行、生活では役に立ちませんが、車体が壊れたときになんとかクルマに乗せることができる、という点で役に立ちます。
もちろん、皮肉です。
しかし、後述しますように、いざクルマにのせて自転車店に到着しても、修理拒否されるのがオチでしょう。

どのあたりが安物なのか サスペンション

価格を抑えなければならず、サスペンションはおもちゃ同様、もはやこんなクオリティではサスペンションと名乗るのがおこがましい品質のものが装着されています。
もちろん本格的なダウンヒルを志向するものではないでしょうから、サスペンションの作動量(トラベル量)が少なくても、それは良いとしましょう。

しかし、ブレーキをかけながら車体を前後させるだけで、ひどくたわむ、ゆがむ、すぐにヘタる等、失笑ものでしかありません。
こんな見掛け倒しのものを装着したおかげで、ますます車体重量が増し、さらに故障箇所を増やしています。

どのあたりが安物なのか モーター

国産ブランドの電動ママチャリのほうが、遥かに良質なモーターを使っています。
違法電動ファットバイクは、とにかくお金が無いため、モーターも粗悪なものを使っています。
ペダルがちょこっと触れるだけで、どかーーーーん!!と加速したり、エンジンブレーキ!?と思うような急減速をしたりと、こんな低品質の車体、危なっかしくて、とても乗れたものではありません。

さらに、これまたお金が無いため、モーターをフレームに内蔵するのではなく(フレーム内蔵とした場合、専用のフレーム設計が必要となり技術的、工場の生産ライン的にも難しいのでしょう)、ホイール、車輪にモーターを装着するモデルがほとんどです。
これは、良く言えば従来の車体のホイールを電動式に替えて、どこか適用な場所にバッテリを積みさえすれば電動化が完了する、という簡便さがあります。

しかし、通常の車体と電動車は、やはり別の乗り物です。

まず、モーターという重量物をホイールに装着することで、車体のバランスが大きく崩れます。
(国内ブランドの電動自転車のほとんどは車体の中央にモーターを配置しています)

また、ハブ軸にあるモーターがホイールそのものを回転させるため、ホイール、リムに凄まじい負荷がかかります。
重たい車体と相まって、すぐにスポークが折れる、リムが割れるといった症状を頻発させます。

しかし、修理をしようにも、モーター内蔵の専用ホイールであるため、換えの汎用ホイールは市販されていません。
良心的なメーカーであれば、補修部品としてホイールの入手が可能かもしれません。
しかし、国外からの輸送となり、パーツ代、送料を含めて¥100,000は覚悟しておいたほうが良いでしょう。
(かつて違法ではない電動ファットバイクのホイール交換作業をしたことがありますが、¥64,130(税込)頂いたことがありました)

https://bikeport.bike/新宿都庁前店-電動車mate-city-メイトシティ-リアホイー/

このように、車体を購入する最初の金額こそ抑えることができますが、それ以後の維持費が高い、修理が不可能という、まさに安物買いの銭失いというのが、こういう車体なのです。

どのあたりが安物なのか ブレーキ

さらに、決定的に低クオリティなのがブレーキです。
完成車価格を抑えるため、一流スポーツブランド、日本ブランドではとても採用しない、超低クオリティのパーツを採用しています。
当店にお越しになる電動ファットバイクで、ほとんどの方はブレーキが効きません、壊れましたとおっしゃいます。

それはそうです。
人力よりも遥かに馬力のある電動自転車に、おもちゃ品質のパーツをつけているのですから、もって3ヶ月というところでしょう。
それ以上はブレーキがスカスカになって、まるで効かなくなります。
SHIMANO製では考えられないことですが、ピストンが元に戻らない、ブレーキキャリパーが振り切ってしまう(通常はありえない動きなのでこの文面では意味不明と思われます)といった症状が発生します。

皆、同じ症状になるため、ある種、品質管理が出来ている、と言えましょうか。
(皮肉です)

こうなると、もはや手の施しようがないため、ブレーキをSHIMANO製のものに換装するしかないでしょう。
パーツ代、換装工賃を含めて、¥50,000はかかるでしょう。
しかし、後述しますように、修理、カスタマイズも難しいのです。

いざ故障したときに、どのお店も修理を断る

違法電動ファットバイクの場合、当店では修理、カスタマイズをお断りしております。
しかし、この対応は当店だけではなく、新宿中のお店を探してもほとんどのお店がお断りするのではないでしょうか。

当店が考える理由は3つあります。

まず、お店が修理することで、違法車両の走行を手助けした、幇助(ほうじょ)した、と評価されかねないからです。
つまり、違法行為を助長してしまうから、違法行為には加担できない、ということです。

次に、上述致しましたが、違法電動ファットバイクはとにかく品質が低いのです。
分解が日本ブランドの電動ママチャリの数倍大変、車体が大きすぎて保管コストがかかる、車体が重すぎてスタッフが怪我をする、といった様々なリスクがあります。
ひいひい言いながら分解しても、パーツの品質、耐久度が低すぎて、修理は不可能。
結局SHIMANO製に総入れ替えしなければダメ、ということも多々あります。

そうなると、通常よりも遥かに高い費用を頂くことになりまして、お客さんとのトラブルになることは必定です。
自転車店としては、そのようなリスクをおかすくらいであれば、そもそも修理しない、門前払いをする、という選択になるのです。

最後に、このようなことを申し上げることをお許しください。
違法電動ファットバイクに乗っている人の客層が良くありません。

自転車店に無理難題をおしつける、もはや廃車といって良い段階であるのに無理やり修理させようとする、修理しても指定された時期に車体を取りに来ない、といった、お取引をしたくない人々が圧倒的に多いです。

冒頭で述べましたように、車体が¥300,000ということも多く、ドヤ顔とでもいいましょうか、良い自転車に乗ってる、俺様はすごいんだ!!と自信満々にご来店になる方が多いです。
しかし、前述しましたように、まったく高く無いのです。
専門家から見ると、すごい車体どころか、とんでもないポンコツ、低クオリティ車体でしかありません。

このような理由で、当店では、違法電動ファットバイクは修理、カスタマイズをお断りしております。

結論

どのようなお金を使い方、選択をなさるかはそれぞれの方の自由です。
しかし、すぐに故障が頻発、どのお店も修理拒否をして、使い物にならなくなるでしょう。

本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、ラッコ店長こと、奈須野でした。

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