#168 従業員の挑戦を促進するように人事制度は運用する 24/5/12
みなさん、こんにちは。
今日は、従業員のチャレンジをどんなしかけで促進するか、考えます。
考えるきっかけは、今年の新入社員からの人事制度研修でした。
(実例を基に編集しています)
質疑応答の時間に、こんな質問をしてくれた新入社員がいました。
「専門コースを変えることはできるのでしょうか。その際に、給与は変わりますか」
まず、人事制度をしっかり読み込んだ、いい質問だなぁ、がファーストインプレッションでした。これの回答はこうです。
「変えることはできます。ポスティング(公募)制度を使う、スカウト制度に登録してオファーを待つ、上長との1on1や目標面談などで希望を伝えておく、の3つあります。専門コースそのものは、担当する職務=所属組織のジョブ領域に依存しますから、ジョブを変えることでコースも変わりますね」
これが前段質問に対するわたしの答えです。
後段の給与は変わるのか、に対する回答がこちらです。
「給与は変わりません。なぜなら、従業員のキャリアのチャレンジ・挑戦を後押ししたいからです」
これが今日の主題です。
ポスティング制度、スカウト制度、ローテーション配置、いずれも同じです。経験していない業務ドメインと職務に異動することは、ポータブルスキルを除けば論理上は未経験です。
ですから、給与を変える選択肢もあり得ます。そして変えない場合と、どちらが良い、悪いはありません。なぜなら、経営や人事の価値観、思想のプライオリティの問題だからです。
さまざまな職務経験を通じて、従業員の成長とキャリア形成を支援していく人材マネジメントの仕組みと考えるのが1つのあり方です。
もう1つは、マーケット(外部労働市場)の原理を前提に、従業員自らが成長とキャリアを自己決定することを重視する人材マネジメントの考え方です。
どちらも0か1ではなく、グラデーションの強度、重心の置き方の話です。
当社は、前者の職務経験を通じて、の考え寄りを適用しています。
その場合、給与が変わることは、そのチャレンジを阻害する作用が強いと考えています。それは当社従業員の特徴を考えると、阻害につながる影響のほうが強いリスクも高い判断もあります。ですから、前者を選択する企業がすべて給与を変えないことではありません。
この選択肢のデメリットは、新たな経験のない職務に就いた場合、しばらくはテクニカルスキルは見習いレベルのため、パフォーマンスが出づらいことです。
結果、上長や周囲から、「等級に見合うパフォーマンスではない」と言われて、不整合が生じやすいことです。
一方、後者のマーケット原理を前提にすると、明らかに当人のマインドセットが異なり、本気で自身の新しい仕事に取り組みます。一旦給与が下がったとしても、活躍し、給与も戻る、伸びる可能性は高くなると考えます。
デメリット は、その組織のカルチャーによっては、手を挙げてチャレンジする行動そのものが少なくなってしまうことです。制度を活用する従業員が限られる点です。
折衷案的に、現在給与の何割かをベース給として補償し、残りの数割をマーケット原理を適用する方法が良いと考えます。ベース給は、ポータブルスキル、内部労働市場価値と説明することもできますから、論理的にも整合させやすいと考えます。
さて、みなさんの会社はチャレンジを促すどんな仕組みがありますか。
それでは、また。