見出し画像

ファイナンス(企業財務)の基本⑨:投資判断で使う「NRR法」と「IRR法」をまとめてみた

前回は、NPV法以外の「投資の意思決定」の具体的方法論である「内部収益率法(IRR法)」をご紹介しました。
今回は、「NPV法とIRR法の違い」に着目して、それぞれの特徴をまとめてみたいと思います。

まずは、前回までのおさらいです。

前回までのおさらい

正味現在価値法(NPV法)とは

NPV法とは、ある投資案に対して、投資案から生じる将来CFの現在価値から、初期投資額を引いた差額によって、投資の意思決定を行う方法です。

NPV法による投資の意思決定ステップは、下記となります。

  1. 投資案からのキャッシュフローを予測する

  2. キャッシュフローの現在価値を求める

  3. NPVを計算する(初期投資額を引く)

  4. 投資判断する。NPV>0:投資実行、NPV < 0:投資見送り

内部収益率法(IRR法)とは

IRR法とは、「投資によって得られると見込まれる利回りと、本来得るべき利回りを比較し、その大小により投資判断する方法」です。

IRR法による投資の意思決定ステップは、下記となります。

  1. 投資のハードルレートを決定する

  2. 投資によるキャッシュフローを予測する

  3. IRRを計算する

  4. 投資判断 IRR > ハードルレート ⇨ 投資する

という形で、これまで、2つの「投資の意思決定方法」をご紹介してきました。
今回は、この2つの方法の比較として「それぞれのメリット/デメリットは?」「どうやって使い分けるのか?」ということを書いていきます。

NPV法 / IRR法の比較

NPV法、IRR法の違いは、自分の理解として端的にいうと「NPV法は額(絶対値)」でみていて、「IRR法は率(相対値)」でみている、ということです。

投資判断などの「おカネ系の話」に限らず、定量的に物事を考える際には「額」と「率」の、両方を捉える必要があります(こういった「物事の考え方」のようなことについて、自分は偉そうに語れる身ではないので、必要に応じて、ビジネス書などをご参照いただければと思います)。

そのため、ここで言いたかったのでは、「投資の意思決定をする際、NPV法とIRR法の両方を実行する(場合が多い)」ということです。

その上で、それぞれの方法には、下表の特徴があります。

NPV法とIRR法の違い

IRR法については、「そもそも、条件によっては解が導けない(上表のデメリット記載内容)」ということがありますので、そちらについて、以下に補足します。

IRR法を使う場合の留意点

IRR法は、率(パーセンテージ)で投資の収益性があらわれるため、直感的に投資の意思決定を行いやすいです。しかし、いくつかの点で限界がありますので、その使用にあたっては注意が必要になります。

IRRが複数存在する場合や存在しない場合がある
下記Aのように、投資によるキャッシュフローが(ー、+、ー)といったパターンの場合は、IRRが複数(4.1% と 66.2%)存在することがあります。
たとえば、この投資に対するハードルレートが10% だった場合、投資を実施するべきかの判断は、IRR法ではできません。

また、下記Bのように、投資によるキャッシュフローが(+、ー、+)といったパターンの場合は、IRRが存在しないことがあります。この場合、IRRが存在しないので、投資を実施するべきかの判断は、IRR法ではできません。

IRR法が使えないケース

永続的にキャッシュフローが継続する場合には、IRRは算出できない
投資判断で将来CFを考える際に、「期間(いつまでのCFを投資判断の対象とするか)」を設定します。

NPVは、永続価値(※)を使うことで期間を無限大にすることができます。
一方、IRRは期間を決めなければ算出できません。
(※)永続価値などの残存価値の考え方については、まだ紹介していないので、次回書いていきます

今回は、ここまでにします。
次回は、投資判断時に考える「残存価値」について書いていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?