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金輪財雑魚の「汝はサイゼリヤ?」は失敗していない

・前書

 金輪財雑魚の考案したカードゲーム「お嬢様同士がサイゼで料理を取り合うゲーム(仮)」。

「どうだ ルールが全然ピンと来ねえだろ!!!」

 来なかった。
 「お嬢様同士がサイゼで料理を取り合うゲーム(仮)」でデスゲームをやらされたときに困るため、ルールを読解した。
 読解して分かったのは、ルールそのものは失敗していないことだ。ただ、煩雑すぎるだけだ。
 以下、ルールを解説する。ゲームデザインについてはブログ記事「ギャンブル漫画・必勝法と逆転劇一覧」を参照した。
 なお、仮題は長すぎるため、以下では「汝はサイゼリヤ?」と呼称する。

・ルール

①任意にポイントを配分。
②ポイントの昇順でアイテムを取る。アイテムはポイントが付帯する。
③X,Y,Z,Wの役職を指定。
③-1 Xは他人のアイテムのポイントを奪取する。
③-1' 奪取はサイコロによる。1なら10%、2なら20%… 5なら50%。6なら10ポイント没収。
③-2 Yは③-1の対象だったとき、それを無効化する。
③-2' そのとき、5ポイント獲得する。
③-3 Zはミニゲームをする。成否によって10ポイント与奪。
③-3' 成功のときは、他人のアイテムと交換できる。
③-4 YはZに5ポイント譲渡する。
③' ③-1から③-3の過程で、WはX,Y,Zのいずれかを名乗る。X,Zを名乗ったときはYが、Yを名乗ったときはXとZがWを告発。指名されたプレイヤーは5ポイント没収。また、Wでなかったときは役職が失効。成否によってYもしくはXとZに10ポイント与奪。
④ ③-3、③-4、③-2、③-1の順番で発効。

・読解

 ゲームとは確定性と完全情報性のどちらかが満たされないことだ。確定完全情報ゲームは手番の先後で勝敗が決定する。よって、ゲームではない。
 ゲームを成立させるものは、偶然と戦略的状況だ。これを分析したのがゲーム理論だ。偶然は期待値で、戦略的状況は戦略の組合せで分析できる。
 だが、ゲーム理論は原則として2人のゲームに対応するものだ。3人以上の場合、いちいち2人のゲームに分解しなければならない。
 このため「汝はサイゼリヤ?」は難解だ。
 したがって、まずWを除き、X,Y,Zの3者の基本型「汝はサイゼリヤ?」として読解する。

・読解-1

 前提として、任意にポイントを配分する必要がない。どのみち、アイテムの選択でポイントに差が生じる。アイテムの選択の順番を決めるだけでいい。(ゲームデザインの失敗1)
 まず、Xが奪取する対象を指名する。ここで、Xはポイントが最高のアイテムのプレイヤーを指名しなければならない。意思決定がない。
 よって、役職を指定したあとに、アイテムを選択すべきだ。これにより、偶然の代わりに戦略的状況が出来する。(ゲームデザインの失敗2)
 不完全情報性により、奪取の成否は不明だ。よって、さらにサイコロで不確定性を介在させる必要がない。プレイヤーが3人以上だと、組合せは指数的に増大する。すでに複雑すぎる。そのため、不要なだけでなく有害だ。廃止すべきだ。(ゲームデザインの失敗3)
 どのみち廃止すべきだが、不確定性を期待値で分析すると、対象のアイテムのポイントの1/4を奪取、10ポイントの1/6が没収ということになる。この両者は均衡しているほうがいい。アイテムのポイントが高すぎる。(ゲームデザインの失敗3')
 次に、Yは奪取を阻止できる。
 また、Zも交換は奪取に先行するため、奪取を妨害できる。
 つまり、「汝はサイゼリヤ?」は、基本型「汝はサイゼリヤ?」の時点でほぼ人狼ゲームだ。
 よって、ゲームとしては成功している。
 Zのミニゲームによる不確定性も不要だ。だが、Zは最終意思決定者のため、ここに不確定性を介在させてもゲームの明瞭さは保たれる。
 最後に、YのZへの5ポイント譲渡は、意思決定がない。廃止すべきだ。(ゲームデザインの失敗4)

 なお、拡張型「汝はサイゼリヤ?」では、人狼ゲームにおける狼として、基本型のXにW(「サイゼリ」)が加わる。そのため、役職名が混乱する。
 例えば、Xは「奢られヤー」、Yは「炎上系」、Zは「幹事」がいい。
 「汝はサイゼリヤ?」はほぼ人狼ゲームだ。そのため、役職のないプレイヤーを追加できる。役職名は「参加者」がいい。

・読解-2

 基本型「汝はサイゼリヤ?」ではX,Y,Zの勝率は均衡している。よって、拡張型も成立する。
 ダウトの成否による賞罰も問題ない。期待値が均衡しているためだ。
 ただし、指名されたプレイヤーの役職の失効は廃止すべきだ。でなければ、XはY,Zを奪取の対象にし、その2人目が現れたとき、奪取の対象を指名しなければいけなくなる。意思決定がない。(ゲームデザインの失敗5)
 Xが2人生じても問題はない。奪取の対象が重複したときは、各々1/4ずつ奪取する。X間でも同様。Yについても問題ない。Zについては、交換の順番をルールに追加する必要がある。Wを後にしたほうがいい。

・結論

 ゲームデザインの失敗1-5を修正すれば、「汝はサイゼリヤ?」は失敗していない。プレイする価値がある。
 「汝はサイゼリヤ?」の特長は、アイテムに料理を付番(紐付け)していることだ。ポイントと料理の選好順序は直交で、かつ、料理の趣味嗜好は選好順序の完備性と推移性を満たさない。そのため、良い意味でゲームに予測不可能性をもたらすだろう。


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