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金髪と、黒髪と。

『精神が危険な状態にある人が、見た目をいきなり変えることって多いんです』

「え、似合ってませんか?」

『似合っては、いますけど。大丈夫ですか?』

「ずっとやってみたかったんです、金髪」

『大丈夫なら、いいですけど』

「なんだか、生との間にすこし距離ができてしまって」

『はい?』

「どっちでもいいなぁって思い始めて」

『・・・死んではだめですよ』

「産業医はそう言うしかないですよね」

『それはそうですが』

「ごめんなさい。そう思ったら、吹っ切れてしまったというか」

『それでも死んではだめです』

「たぶん、そこまでじゃないです。やってみたかったのはほんとうなので」

『大丈夫なら、いいですけど』

__________

『深刻にならないことが、生きることのコツなんだって』

「そう」

『深刻になるって、何かに囚われるってことでしょう』

「うん」

『それって、ちょっと怖いなって思っちゃう』

「怖い?」

『だって他にも、素敵なことはたくさんあるのに』

「囚われないなんて、できるのかな」

『私はそうしてきたけれど』

「僕は深刻にしか生きてこなかったかもしれない」

『・・・それはちょっと羨ましい』

「深刻になってる場所が違うのかな」

『場所?』

「何かに深刻な人と、深刻にならないことに深刻な人がいる」

『それはそうかもしれないけど』

「何かは、人によって違うけど」

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『僕はね、重力を感じたいんだよね』

「それって、疲れませんか」

『人は重力から逃れられないよ、忘れがちだけど』

「・・・どうやって感じればいいんですか」

『誰かと対峙するとき、自分がフェイクじゃないかを確認する』

「それに答えてくれる人なんているんですか」

『真面目に生きていれば、出会うよ』

「ほんとうに出会えますか」

『確証は、持てないけど』

「真面目に生きるって、なんですかね」

『それはね、いつでも剣を抜けるようにしておくってことだよ』

「そんな大人っているんですか」

『いろんな大人がいるからね』

__________

『ほんとうにいいんですか』

「まだすこし、迷っていますけど」

『こんなに綺麗に抜けてるのに』

「でも、なんだか戻してみたくなったんです」

『一瞬で、戻っちゃいますよ』

「ちゃんと生きようかな、と思って」

『お仕事ですかね』

「まぁ、そんなところです」

『ちょっとさみしいですね』

「はい、とっても」

『3ヶ月間くらいでしたね』

「短いような、長いような」

『まぁ、黒髪も似合いますから』

「そうですかね」

『そうですよ』

「へへ」

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すなふ
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