僕の御守り
「今年のしいたけ占いはね…」
そんな言葉を至る所で聞くようになった。
普段占いを信じなそうなほどロジカルな方でも、どうもしいたけ占いだけは違うというのだ。
サイトを見てみると、なるほど他の占いとは一線を画している。
深い人間理解に基づいて、適切な言語化がされている、占いというよりは素敵なコピーのような文たちだった。
僕は占いは信じないのだけれど、これはたしかに自分の心に置いておきたくなる。
心に置いておくということ
どんな人でも、心に何かを置いている。
そうしないと生きていけないのだ。
「心にぽっかり穴が空く」というのは、置いていたものがなくなるということである。
それは大きなところで言えば、大切な人や、宗教かもしれない。
小さなところで言えば、もらったイヤリングや、大事な言葉かもしれない。
しいたけ占いは、きっと多くの人にとって、そんな存在なのだと思う。
自分の心を宝石箱みたいにして、大きなものも小さなものも詰め込みながら、人は歳を重ねていく。
そうして詰め込んでいったものたちが、自分を守って、すこしだけ背中を押してくれる。御守りみたいに、運命をすこし進める勇気をくれる。
そんな御守りを、きっと誰もが持っている。
運命をすこしだけ後押しする
僕のiPhoneは写真が撮れない。
壊れているわけではなく、iPhone6のケースを、iPhone8に使っているのでカメラの位置がズレていて隠れてしまうのだ。
ケースの一面にスナフキンが書かれていて、とても可愛い。
まだiPhone8用のものが出ておらず、前のケータイから続けて使っている。
僕の風貌は彼によく似ているらしく、自己紹介で重宝させていただいている。
自己紹介する際に、吃音がある僕はうまく言葉が出てこないことが多い。
使い古した自分の名前すら詰まってしまい、その度に世界から拒絶されたような気持ちに陥る。
そんなとき、ケースを見せると相手はすこし笑ってくれる。
もちろん僕と彼とは似ているという接点しかないけれど、自分と誰かをつなぐ時に、そこにある錆びついたドアを開いてくれる。
それだけで存在が許されたような、止めていた息を吐けるような、生きた心地がしてくるのだ。
彼はいつも僕の右手に鍵を持たせる、大事な御守りなのだ。