生成AIのためにGPUへの理解を広げよう。
今回は、画像生成AIや学習プロセスにおいて欠かせない「GPUの構造」について、簡単に触れていきたいと思います。この記事では、LoRA学習やモデルマージといった高度なトピックへの導入として、GPUがどのように学習プロセスに関与しているかを説明します。
LoRA学習やモデルマージをすでに試している方であれば、この記事を読むことで、GPUの構造や動作について直感的に理解できるのではないでしょうか。また、GPUの役割を知ることで、学習プロセスをより効率的に進めるヒントが得られるかもしれません。
GPUとCPUの違い
まずはGPUとCPUの違いについて説明していきます。
この二つは、演算処理をできるものとして設計はされてはいますが、どのような違いがあるのかを説明していきます
ざっくり言うと、CPUは全体を仕切る役割をしています。(指示役)
そして、GPUは、作業者です。
イメージとして言えば、スタッフが多数いて同時に作業することを得意とします。
GPUの役割としては、ゲームや映像のグラフィックスのレンダリング(描画)と、画面のピクセルごとに処理を行うので、並列処理が得意なのです。
(並列処理とは、複数の同時進行で作業できるということです。)
複数の処理ができるということは、科学分野においてはシミュレーション(気象予測、物理シミュレーション、DNA解析などの計算が膨大な分野)においてもその能力を発揮します。
また、動画編集においても3Dモデリングや動画のエフェクト処理にも利用されます。
GPUの仕組みについて
GPUには、三つのコアが存在します。
役割について、説明していきます。
・CUDAコア
・Tensorコア
・RTコア
・CUDAコア
元々、GPUはグラフィック表示に特化して作られてきました。
しかし、ゲームグラフィックをリアルタイムに作り出し表示させるには、膨大な計算処理が必要だったため、NVIDIAによって、CUDAコアが開発されました。
(CUDAというのは、Compute Unified Device Architecturの略称です。)
CUDAは、FP32とINT32の演算処理に特化した演算処理回路になっています。
・FP32とは、32ビットの浮動小数点
・INT32とは、32ビットの整数
・ビットとは、コンピュータは、すべて「0」と「1」で数値を表す。
この「0」と「1」のひとつひとつを「ビット」と呼ぶ。
・浮動小数点・整数のビット数は、1つの数値を表現するのに使うビットの数を意味します。
例えば:
・8ビットの浮動小数点は。一つの数値を表すのに8個の「0」また「1」を使う。
・16ビットの浮動小数点は。一つの数値を表すのに16個の「0」また「1」を使う。
これによって、整数と小数点を表現している。
このようにして、FP32(小数点)とINT32(整数)の計算回路が存在しています。
そして、小数点や整数の計算など単純な処理を、数千個以上のコアにより一度に処理することができるようになっています。
私たちが、普段見ているスマフォやテレビ、PC画面などの映像は、このような処理(0と1)によって、写し出されていて、もう少し詳しく言うと、これはピクセル(画素)という、0と1であらわされた色情報が含まれた点によって表示されているのです。
つまりは、ドットはただの点に対して、ピクセルというのは、色がある点ということです。
・Tensorコア
Tensorコアは、ディープラーニングやビッグデータなどの演算処理を高速で行うことのできる演算回路です。
ディープラーニングでは、行列同士の掛け算に行列を足すという行列積和演算が数多く存在します。
行列計算の例:
A・B + C
・A:行列(例えば、AIの入力データ)
・B:行列(例えば、AIの重み)
・C:行列(結果の初期値)
1.1 AIの重みとは
・ニューラルネットワークにおいて「入力の重要性」を調整する値。
・各入力データに対して設定され、モデルが学習する過程で更新される。
1.2 重みの仕組み
入力データがネットワークを通過するとき、それぞれの入力値に重みが掛け合わされる。
これにより、入力データがネットワークに与える影響を調整できる。
1.3 重みの初期化とは、学習を開始する際、重みは通常ランダムな値に設定される。
学習が進むにつれて、勾配降下法(AIモデルの損失関数(誤差)の最小化するための手法。)などのアルゴリズムで重みが最適な値に調整される。
2.1 結果の初期値(Bias)とは?
バイアスは、ニューラルネットワークにおいて出力を調整するための固定値である。
主に、入力データがゼロだった場合にもモデルが柔軟に出力できるようにするために使われる。
2.2 バイアスの仕組み
入力に関係なく、出力結果に一定の影響を与える値である。
重みと掛け算するのではなく、単純に足し合わせる形で適用される。
重みとバイアスの違い
重み
・重みは、入力データの影響を調整する。
・各入力ごとに異なる値が設定される。
バイアス
・出力全体に基本的な調整を加える。
・各ニューロンごとに一つ設定される。
3.1 学習における重みとバイアスの変化
重みはランダムな値で、バイアスも通常はランダムな値。
3.2 学習の過程
重みとバイアスは、モデルがデータを学習するたびに調整される。
誤差関数(モデルの出力と実際の答えとの差)を基にして、重みとバイアスが更新される。
最終的なモデルは、重みとバイアスが適切な値に収束し、モデルが正確に予測できるようになる。
AIモデルでの役割を直感的に理解
重みとバイアスを日常生活に例える
重み(Weight):
「各科目の重要度」だと考えると以下のようになる。
例えば、成績を出すときに「数学は全体の40%、英語は30%、理科は30%」と重み付けされるようなもの。
バイアス(Bias):
基本点数のようなもの。
例えば、テストの基礎点として全員に10点が与えられるような設定。
重みとバイアスが重要な理由
(1) モデルの柔軟性を高める
重みとバイアスが適切に設定されることで、AIモデルは複雑なデータのパターンを学習し、正確に予測を行える。
(2) 出力の多様性を確保
バイアスがないと、入力がゼロの場合に出力が常にゼロになり、モデルの柔軟性が失われる。
(3) 精度向上
重みとバイアスを学習で調整することで、AIは誤差を最小化し、より良い結果を提供する。
まとめ
重み(Weight): 入力の影響を調整する値。学習で更新され、AIがデータの特徴を学習する鍵。
バイアス(Bias): 出力全体を調整する値。出力の柔軟性と多様性を確保する。
関係:
重みが「データの重要度」を示し、バイアスが「基準値」を調整する役割を果たす。
・RTコア
レイトレーシングを、高速で処理することを目的としたハードウェアアクセラータのこと。
・レイトレーシングとは、光の挙動をリアルにシミュレーションして、影、反射、屈折を描画する技術。
・最近では、GPUの進化によりリアルタイムでのレイトレーシングが可能になり、ゲーム業界でも広く採用されている。
・ハードウェアアクセラレータとは、特定の計算タスクを高速かつ効率的に処理するための専用装置のこと。
まとめ
GPUは、その構造が特定のタスクに最適化された並列処理の強力なエンジンとして設計されています。数百から数千の小さなコアが、同時に大量のデータを効率的に処理することで、3Dグラフィックスの描画、AIのトレーニング、科学計算など、膨大な計算量を必要とする分野で不可欠な役割を果たしています。また、Tensorコアやレイトレーシングコアのような専用ユニットの導入により、AIやリアルタイムレンダリングといった新しい技術への対応も進化しています。
GPUの構造は単なる計算装置を超え、さまざまな分野での技術革新を支える基盤となっており、その設計思想は未来のコンピューティングを切り開く大きな可能性を秘めています。
以上で、今回の記事は終わりとします。
ここまで読んでくださりありがとうございました。