私の好きなゲーム実況者

※この記事は『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のネタバレを含みますのでご注意ください。


私が「ゲーム実況」というジャンルに出会ったのは、中学1年生のときである。

当時、私は某通信教育の教材として、生まれて初めて自分用のタブレットを手にしたばかりであった。もちろん、本来は学習用タブレットであるので、私はそれを使ってちゃんと勉強に励んでいたが、YouTubeを見ることもまた楽しみであった。テレビやゲームなどといった娯楽に関して厳しい家庭ではなかったものの、それまでYouTubeに関しては親のパソコンでごくたまに見る程度であったように思う。

その中で、私が初めて目にした「ゲーム実況」は、「ボルゾイ企画」というグループの『ゆめにっき』というゲームの実況だった。今こそ公式から動画が投稿されているが、当時はニコニコ動画からの無断転載だったように思う。当時は中学1年生でその辺りの事情には疎く、今思えば大変よろしくないことをしていた。この場を借りて謝罪したい。すみません。

なぜその動画に到達したのかはまったく思い出せないのだが、「何も知らない友人に無理やり実況させてみた」というタイトルに惹かれて再生したことだけは覚えている。ここでは『ゆめにっき』というゲームの詳しい紹介は割愛するが、『ゆめにっき』が想像力をかき立てるような内容のゲームで、そして何より実況させられている友人が、本当に何も知らないだけあってリアクションが頗る面白く、夢中で見た。部活の時間を忘れ、サボりかけたこともある。ゆるい部活だったので怒られはしなかったが。

それから、かれこれ10年ほどが経つ。今でも私はゲーム実況が大好きである。

私がゲーム実況を好きな理由は、他人のゲームに対するリアクションを見れることである。私は自分でゲームをプレイするのも大好きで、他人と協力してプレイすることもある。しかし、普通に生活していて、他人がゲームをプレイする様子をまじまじと見る機会はあまりない。私はポケモンが好きで新作が出る度にプレイしているのだが、他人が自分の好きなシーンに対してどのようなリアクションをするのか気になることがある。そんなとき、ゲーム実況で他人のリアクションが見れるのは、非常に新鮮で面白い。逆に、自分がプレイしたことのないゲームでの実況者のリアクションを見て、そのゲームに興味を持ち実際に購入することもある。

今回は、そんな私が好きなゲーム実況者を紹介したいと思う。基本的に私が動画を見始めた順に紹介するが、分量には偏りが出てしまったので予めご了承願いたい。

①キヨ


言わずもがな、YouTubeのチャンネル登録者数約460万人を誇る彼は、ゲーム実況界のトップである。彼はなるべくしてトップになった実況者だと、私は思う。彼の魅力は、本気でゲームを楽しんでいるところだ。他の実況者はそうではない、という意味では決してない。彼は、本気でゲームを楽しんでいるという事実が、しっかりゲームへの理解力とリアクションの面白さという結果に繋がっている実況者である、という意味である。

彼はストーリーに対する察しがいいので、見ていてイライラすることはまずない。ゲーム内の細かいところまでよく見て回るので、普通のプレイヤーが一発では気付かないところにもよく気付く。例えば、『ポケットモンスター スカーレット』の実況では、ゼロラボのホワイトボードに貼られているペパーとマフィティフの小さな写真や、楽園防衛プログラムとの戦闘が始まる前にほんの一瞬だけ表示されるセリフを、ゲーム実況中に発見している。

また、私は彼ほどゲーム実況中に我を忘れる人間を見たことがない。ゲーム内で難しい局面に入ってなかなか突破できなくなると、冷静なプレイができなくなり意味不明な発言を連発するようになる。そんなとき、彼はよく「一旦無言でやらせてくれ」と言うのだが、必ず喋り出す。彼がゲーム中にあげた叫び声は「急ブレーキ音」と称され話題になり、それを素材にした音MAD動画が流行ったこともあった。そんなリアクションがとにかく面白い。

彼の暴走は個人でのゲーム実況にとどまらない。下は、彼の所属する「最終兵器俺達」という4人組ゲーム実況者グループでの動画であり、途中の下ネタがひどすぎて紹介するか迷ったものの、分かりやすいので紹介する。見てお分かりの通り、彼は冒頭からボケ倒しているが、それも的確なツッコミを入れてくれる仲間と一緒に撮影しているからこそのことである。このように、周囲を巻き込んだ笑いを提供してくれるのも彼の魅力の1つである。

②こーすけ


彼は、先ほども紹介した「最終兵器俺達」という4人組ゲーム実況者グループに所属し、個人でも活動しているゲーム実況者である。個人での活動は、ゲーム実況にとどまらず、洋服のデザインや弾き語り、料理など多岐に渡っている。そんな彼の魅力は、自分の弱みと強みを認識し、強みを武器に活動しているところである。彼は、動画を「見たくなる」だけではなく、成長を「応援したくなる」、稀有な実況者であると私は思う。

彼は、長年キヨをはじめ仲間との差に悩み、それが活動にネガティブな形で表れてしまうことが多々あった。もちろん、中には深く反省すべきこともあり、私はそれを肯定的に捉えている訳ではない。しかし、彼はある年を境に、急に弱みであったプライドの高さを克服し、自分が言われてきた悪口すらもネタにし、「顔実況」という新たなジャンルを開拓し、界隈で「こーすけ語録」とも呼ばれる独特な名言を流行らせた。

ゲーム画面だけでなくワイプで自分を映す実況者は多くいるが、彼ほどアップで自分を映す人間はいないと思う。と言うか、彼のようにアップで耐えられるほど表情が面白い人間はそうそういない。少しでも気を抜くと、表情が死んでしまうところも笑える。声なしで顔だけ、つまりはゲームとその表情だけでゲーム実況をする斬新な動画も投稿しており、それでも普通に面白く成り立ってしまうのが彼のすごいところである。

このような、ゲーム実況の常識を覆す斬新な動画を作るところからもお分かりのように、彼は企画力もすごい。その他にも、自分の実況するゲームを実写で表現する、目隠しをした状態でゲームを実況する、インフルエンザの中叫んだら即終了のホラーゲームを実況する、など様々な企画に挑戦している。その企画力を活かした動画だけでなく、視聴者の日常に寄り添うような動画も多く投稿しており、彼の動画には安心感が生まれつつある。

③けい


彼は、「鬼畜ゲー」と呼ばれる難易度の高いゲームを多くプレイし、活動12年目に突入した実況者である。上記2人とは異なり、実況者は本業ではなく、副業として実況者をやっているようである。「鬼畜ゲー」を多くプレイするほどのゲームの腕前もさることながら、出身大学や留学経験も公表しており、そこからも察しがつく通り知性を感じさせるトークと、ゲームでピンチに陥ったときに見せるリアクションとのギャップが彼の魅力である。

私が彼のゲーム実況と出会ったのは、この動画だったと記憶している。冒頭で紹介した『ゆめにっき』のゲーム実況動画と同様に、なぜこの動画に到達したのかは思い出せないのだが……。このような難しいゲームだとテンションが上がりすぎてしまう実況者もいると思われるが、彼はあくまでも一定のテンションの枠内で実況している。その中で、独特の言葉選びによるツッコミや、腹から出たような叫び声が入るのが面白い。

上が彼のチャンネルで最古の動画なのだが、それを踏まえて最新の動画を見てほしい。落ち着いた喋り方にシンプルな編集、実況スタイルがほとんど変わっていないことに気付くだろう。視聴者も長く応援している人が多い。彼はゲームの腕前を磨き続けているが、その実況には良い意味で変わらない、安定感がある。彼自身は昔の自分を見て「ヤバい」と言っているが、傍から見れば今とそこまで変わっていないのもまた彼の面白いところだ。

④のばまん


彼は、あのHIKAKINも所属するUUUMという事務所のゲーム実況者である。となると真面目なゲーム実況者なのではないか、と思う人もいるかもしれないが、UUUMの紹介ページを見れば分かる通り、彼はちょっと変わった人である。彼の魅力は、ゲームをやっていて誰しもが一度は抱く、「やってみたらどうなるのかな?でも実際にやるのは気が引ける……」という疑問に答えてくれる、とても教育的な(?)動画を提供してくれるところである。

彼は下の動画抜きには語れないだろう。このようなゲームでは、「すべて無料にしたらどうなるのかな?」や「客を遊園地に閉じ込めたらどうなるのかな?」は少し気になってしまうものだが、実際にやろうと思う人はなかなかいない。しかし、彼は狂気の笑い声とともにそれをやってのけ、タダより怖いものはないということを教えてくれる。「スラムツーリズム」という言葉も登場し、やり方はさておき、我々に知るきっかけを与えてくれる。

上の動画を見て分かるように、彼の実況スタイルは好き嫌い、と言うよりは賛否が分かれてしまうだろう。しかし彼は、詐欺の注意喚起や感染症流行による生活困窮者への情報提供など、分かりやすく視聴者に有益な動画を投稿していることも事実である。また、彼は怖いものなしのように見えるが、意外とホラーゲームが苦手である。そのギャップが可愛らしく、どこか憎めないのも彼の魅力である。

⑤ひろちんくん


彼は、吉本興業が運営するよしもとeスポーツプロチーム「YOSHIMOTO Gaming」に所属する、プロゲーマーである。彼はここで紹介する多くの実況者とは異なり、動画ではなく生配信をメインとしているため、実況者と言うよりもストリーマーと言った方がイメージに近いかもしれない。彼の魅力は、もともとは芸人というだけあって、ゲーム内で面白い場面を作り出すのが圧倒的に上手いところである。

彼を一躍有名にしたのは下の動画である。このゲームに関しては鬼畜すぎて面白いリアクションを取らざるを得ないが、ただトラックを運転するだけのゲームでも、ただスイカを作るだけのゲームでも、面白い場面を作り出してしまうのが彼である。作り出してしまうと言うか、彼は生配信の中で面白くできそうな場面を見極めて、狙って作り出しているように私には見える。さすがは芸人だと思う。

また、彼は視聴者にまったくと言っていいほど媚びを売らない。例えば下の生配信では、視聴者に配信者の敵とは何かと尋ね、「親フラ」や「肥満」といったコメントがあがる中、彼は「あなたたちです」と言い切る。このように、視聴者と煽り合いをして面白い場面を作り出すことができるのも、彼の強みである。私も彼に「見てるだけで分かったヅラしやがって」と言われそうだな、と思いながらこの記事を書いている。

⑥葉


彼は、YouTubeに公式チャンネルを開設してまだ約2年半の、新星ゲーム実況者である。彼に関しても動画ではなく生配信をメインとしているため、実況者と言うよりストリーマーと言った方がイメージに近いのかもしれない。新星とは言っても、そのチャンネル登録者数は約50万人である。現在22歳の大学4年生で、私と同世代なので勝手に親近感が湧いている。彼の魅力は、関西弁を駆使した的確なツッコミである。

彼はゲームの中で登場する様々なものに対して、次々とツッコミを入れていく。少なからず雰囲気を壊しているため褒められたものではないかもしれないが、それはホラーゲームも怖くなくしてしまうほどである。下の動画では、「昔のキムタク」や「ジブリ(のコダマ)」、「パーフェクトヒューマン」などといった言葉が登場し、彼のツッコミは例えの引き出しが広く、怖いものを面白いものに置き換えてしまうことが分かる。

彼はゲームに対するツッコミだけではなく、生配信での視聴者のコメントに対するツッコミもキレキレである。正直に言って質の低いコメントが目立つが(辛辣ですまない)、そのようなコメントに対しても的確なツッコミを入れ、面白くしてしまうのが彼のすごいところである。視聴者がコメントで彼をイジりまくるのも、彼が確実に面白い返しをくれるという絶大な信頼があるからこそのことであろう。

⑦しゅう


彼は、昔懐かしいゲームから最近流行りのゲームまで幅広くプレイし、チャンネル登録者数100万人を超えるゲーム実況者である。一風変わったイントネーションの冒頭の挨拶と、今時ほとんどの人が使っていないであろう一人称、そして自ら作り出した謎の言い回しが特徴的である。彼の魅力は、視聴者の好みを理解したゲーム選びと、視聴者を思わず笑わせてしまう天然な性格、一言で表すと親近感である。

彼は実況者の中でもプレイするゲーム選びのバランスが良い。『New スーパーマリオブラザーズ Wii』や『Wii Sports』、『トモダチコレクション』など、誰もが懐かしむであろうゲームから、『Only Up!』や『スイカゲーム』、『8番出口』など、近年大流行したゲームまで、幅広く実況している。彼自身苦手でプレイを避けているジャンルはあるものの、視聴者の好きなゲームを理解しており、何よりそれらを全力で楽しんで実況している。

上の動画で、「これで100%ストライク」と豪語しながらピンをまるで三大将のように残してしまうところからも分かるように、彼は少し抜けているところがある。下の動画では、かっこつけて歩いて転び唇をぶつけた結果、喋り方がおかしくなっている上に、ナチュラルに「ポケットに手を突っ込む」を「手にポケットを突っ込む」と言い間違えている。少し抜けているところだけでなく、リアルタイムな雑談をしてくれるところもまた彼の魅力である。

⑧味の染みたおいしいちくわぶ


彼は、『影廊(Shadow Corridor)』というホラーゲームをプロ級の腕前でプレイし、その他にも主にホラーゲームをプレイしているゲーム実況者である。『影廊』界隈では彼を知らない者はいないと言ってもよい。「味染み~」という定番の挨拶があり、最近は可愛らしい姿でVtuber化もした。彼の魅力は、淡々とゲームをプレイしていくスタイルと、謎のワードセンスによる破壊力のある一言との温度差である。

彼は『Shadow Corridor 2 雨ノ四葩』で新ステージが追加された当日にプレイする生配信を行い、翌日からは練習する生配信を行うほどである。今回紹介した動画メインの実況者の中でも、生配信の頻度は高い印象で、その他タイムアタックや縛りプレイにも挑戦している。生配信では口数はそこまで多くなく、喋りながらゲームを練習しているといった感じなのだが、彼のプロ級の腕前は練習にひたむきな姿勢から生まれていることが分かる。

また、彼は大きなリアクションを見せてくれると言うより、終始落ち着いて起こっていることを解説してくれるような、まさに「実況」をしてくれる。声もかなり渋いのだが、謎のワードセンスを持っており、発した一言の破壊力がすごい。『影廊』の実況では、きちんと正式名称のある敵に独自の愛称をつけ、下の動画では、敵に襲われた際「わろたにえんの広東風だねえ」という謎の言葉が飛び出す。この温度差が魅力である。

以上である。この記事を読んでくださった方々が、「ゲーム実況」というジャンルに少しでも興味を持ち、紹介した実況者を好きになってくれたら嬉しい。