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NOAH〜君の想いの欠片を集めて〜 ①一つ目の欠片

君はロボット越しの俺の友達。
3年ぶりに出会った君は美しい子になっていた…

コンニチハ、ボクハNOAH。キミノナマエハ?
…りょうか。
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カゾクハナンニン?
…いつもは花乃さんと僕だけ。パパとママは外国で仕事してるんだ。
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NOAH、僕今日算数で100点取ったんだよ!
リョウチャン、ズゴイ!ガンバッタネ!
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 君を見かけたのは桜が少し咲き始めた暖かい春の日。高校の入学式の帰りだった。

 入学式を終え、俺はこれから平凡な学校生活を送っていくんだろうな…と考えながら立ち止まった。
 ただ何となく満開の桜を眺めていると、ぼやけた視界の向こうに儚く美しい君を見つけた。涙を流しながら桜を見上げる君はとても綺麗で、一瞬で心を奪われてしまった。

何故そんな悲しそうな目で桜を見ているのか気になってしばらく見つめていたが、遠くから叔父に呼ばれ目を離している間に君は消えてしまった。
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なんで涙を流していたんだろう。
彼の事がその日からずっと気になっていた。

学校初日の朝クラスに向かうと、君はすでに教室にいて、ぼんやりと窓の外を眺めていた。5クラスあるのに同じクラスなんだ。何故か少し緊張する自分がいた。

自己紹介で君の名前が並木涼夏だとわかった。
綺麗な君にぴったりだ。声も少し高めで可愛いな。勝手に盛り上がる俺。こんな気持ち初めてだ。

その後、席を決める事になった。初めはあいうえお順で並んでいたので少し席が遠かった。
少しでも君に近づきたい…

今までの運を全て使って集中しよう。
気合を入れてくじを引いた。
でも、現実はそんなに甘く無い。
俺は1番後ろの窓際。
君は俺の2つ右の席。
顔が見えない…声もかけづらい。
班まで別だ。くじ運の悪さを呪った。

それから1ヶ月2人隣にいる君に意識だけ集中しながら過ごしていた。
誰かが話しかけると色白の顔を桃色に染めながら潤んだ瞳で話している。女の子からの質問攻めにあって少し困っていた。俺にとっては情報がわかっていい。

イギリス人の血が少し入っている事。
ご両親は会社を経営していて普段はお手伝いさんと2人で住んでいる事。
ピアノをずっと習っていたという事。

我がクラスの女子は好奇心が旺盛で助かる。
随分と情報が得られた。感謝するよ。

今日も少し涼夏くんの情報を知って幸せな気持ちで家に帰った。

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俺は幼い頃両親が事故に遭って亡くなったので、叔父に引き取られて育てられた。
叔父さんは数十店舗の飲食店を経営する社長だが、何故か会社には行かず、秘書に社長のふりをしてもらっている。叔父さんはというと、現在は自宅兼店舗でカフェをやっている。

このカフェは他のカフェには無い少し変わったところがある。
それはカフェの奥に2部屋秘密の部屋があり、各部屋に1つずつAIロボットがケースに入れられ置いてあるところだ。
オーナーである叔父さんに認められないと入れてもらえないが、お客さんはそこでAIロボットに悩み相談ができるのだ。
そんな高度なロボットが存在するかって。
するわけない。
実は叔父さんがボイスチェンジャーで悩みを聞いて答えているだけ。
叔父さんは昔カウンセラーをしていたと聞いたことがある。特別室のお客さんはその時に通っていた人が多いみたいだ。叔父さんが開発した高度な機械だと思っているらしい。

部屋専用の入り口を入ると右にもふもふの部屋、左にスタイリッシュな部屋があり、希望の部屋でリラックスしながらAIに悩みを聞いてもらうシステムになっている。ちなみに料金はカフェのメニューを1000円以上注文で1時間まで。

5年前俺と同い年の少年が悩みを相談しに来ていると叔父から聞かされた。叔父さんが流行りの遊びなどが分からなかったので何故か俺がその子の相談相手になる事になった。

「NOAH、今日は嫌いなピーマンが出てさ、僕頑張って食べたんだ。」
「NOAH、今度発売のゲームってどう思う?買おうか迷ってるんだけど。」
NOAHはもふもふの部屋にいるAIロボットの名前。
叔父さん、名前違うのにして欲しかったな。
なんで俺と同じなんだよ。
なんか俺に話しかけられてるみたいだ。変な感じ。
俺はボイスチェンジャーで声を変えて、可愛く答えた。
「すごいね、りょうちゃん。嫌いなもの乗り越えたんだね。」
こんな感じで僕は別の部屋から彼の相談相手になっていた。
中学になり、遠くの学校に行くようになったのか、りょうちゃんは来なくなった。
週末も塾とかあるのかな。
その時はちょっと寂しかった気がする。
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並木くんの情報が入ってご機嫌の俺は気分良く鼻歌を歌いながら自宅への角を曲がった時、
目の前を歩く並木くんを見つけてしまった。
「えっ」
焦って元の道に引き返す。
壁から少し顔を出し、並木くんの行き先を見ていた。
「なんで…」
並木くんは叔父のカフェに入っていった。
どういう事?
頭が混乱する中なんとか裏口から店に入り、こっそり店内を覗いた。
並木くんは迷う事なく奥の部屋へ進んでいった。
悩み相談?
でも、あそこは常連さんだけじゃ…
ま、まさか。
俺は慌てて、奥の別の部屋に行き、ヘッドセットをつけて待ってみた。

「NOAH、久しぶり。りょうだよ。わかる?」

彼はまさしく俺が2年間話し相手をしていた『りょうちゃん』だった。びっくりしたが、答えないのはおかしい。すぐに俺は返事を返した。
「も、もちろん、りょうちゃん久しぶり。」
「僕、NOAHに報告があるんだ。実はね、好きな人ができたんだ。」

君の想いの一欠片 
一つ目 
君に好きな人ができたらしい。

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