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「有言実行と不言実行、どちらがかっこいい? 半数以上が有言実行派」とかいう頭の悪い記事の件。

とても頭の悪そうな記事を見つけました。
と言うかだいぶ前から見つけてはいたのですが、いい加減な情報が垂れ流されているのを見ないフリするのも何なので一応叩いておくことにしました。

不言実行の意味とは? 有言実行と不言実行、どちらがかっこいい? 半数以上が「有言実行派」
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そもそも「不言実行」とは論語の里仁篇にある「訥言敏行。」を日本語に訳したもので、論語の訓蒙書(ビギナー向け日本語解説本のようなもの)で使用された言葉です。
論語に関する著書を数多く残している渋沢栄一もこの言葉を使用しています。
訥言敏行というのは「先行。其言而後從之。」を分かりやすく言い換えたものです。
意味をざっくり言うなら「つべこべ言ってないでさっさと実演して見せろ」です。
また、君子とはそういうものだという言葉です。
自分ではやろうとせずにいつまでも御託だけ並べているような状態を戒める言葉なんです。
ざっくり言うとね。
これが頭の悪い人たちに曲解され、有言実行の逆の意味、「目標を宣言せずに実行する」というような全く別の意味に捉えられているようです。
いやもしかしたら不言実行を誤解した上で有言実行という言葉を作り出したのかもしれませんが。
ちなみに子路篇には「言之必可行也。」言葉には実行が伴わなければならないとする一節があります。
言行一致の重要性を説く言葉ですが、有言実行にも近いと考えていいでしょう。

不言実行では目標は宣言してもいいんです。さっさとやってみせるならば。
当該記事では「不言実行とは、目標などを口に出したり、ああだこうだと能書きを述べたりせずに、実行に移すことを言います。」と書いてありますが、微妙に捏造が入っていますね。
目標を言うだけで一向にやろうとしないならば確かに不言実行ではありませんが、上記の解説はその辺りのニュアンスが抜けています。
ですから目標を宣言し速やかに行動に移すことで不言実行と有言実行は両立できますし、相反する言葉ではないのでどちらがかっこいいかと比べるようなものでもありません。

さらに言うと、結果を出した後も黙っておく、隠しておくという意味ではありません。
むしろ自分で実演して見せてから他人に説きましょうというような意味合いの言葉です。
ですから、当該記事中の

・「不言だと実行してもわからないから、かっこいいと思うタイミングがない」(女性/29歳/人材派遣・人材紹介)
・「日本人は不言実行の方がカッコイイとされがちだが、他人に気付かれなければ評価もされない。欧米人を見習うべきだと思う」(女性/27歳/機械・精密機器)

こいつらはまるで意味を履き違えていて的ハズレなことを言っています。
私は馬鹿ですと自己紹介しているようなもんなんですね。
馬鹿の中では意味が変質しているのかもしれませんが、馬鹿の中で別の意味になっているだけ、頭が悪いから知識が足りず勝手に思い込んでいるだけだということは覚えておきましょう。

なお、不言実行はあくまで君子に向けた言葉です。

・「不言実行は、出来なかった時でも逃げ道があるように感じる」(男性/26歳/情報・IT)

君子でない者はまさにこれをやるとして孔子も勧めてはいません。

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