【小説】星をつかまえて
午後二時を回ると、手で綿菓子をちぎるみたいに雲が晴れて、さっきまでの雨が嘘だったかのような青空になった。どこに隠れていたのだろうか、蝉の鳴き声が聞こえ始める。夏休み初日。ゆりは、パジャマから着替えもせずに、自室の床で大の字になっていた。
高校三年生。机の上に並ぶのは参考書や、中途半端に途中式を書いたまま放置されたノート。勉強も大事だけれど、初日くらいは。そんなことを思いながら意識が朧げになり始め、夢と現実の境界がついに曖昧になろうかというその瞬間、足元に放り出すように置い