富山湾の進化する営み
「富山の海の幸は美味しい」は有名である。
しかし素材の良さだけに胡坐をかかない様々な取り組みをみた。
“日本のベニス“とも称される射水市の新湊内川の「IMATO(イマト)」は一見干物だが実は全く新しい商品を開発・製造・販売している。
旬の海産物の最も美味しい状態をいかに”新鮮に長く楽しめるように”できないか、という現役の漁師として漁にも繰り出す東海勝久代表ならではの発想から開発されたそれは、干物ではなく「干し魚」と表現される。
生魚の良さを最大限に残すために使う塩の量を抑えると雑菌の繁殖リスクも高まるが、設備投資によりクリーンな環境を整え、安定的な製造も実現。
誰が獲り、どのような環境とプロセスで加工されたかが見える化された保存の効く「干し魚」は、育児中の母親に特に人気だという。
“寒ブリ”で有名な氷見市で卸を行う「松本魚問屋」では、なぜ美味しいのかというストーリーも併せて届ける。
能登半島と佐渡島に囲まれた富山湾は言わば天然の定置網と言えるが、氷見での漁法もまさに定置網漁。
入った魚の実に7割は網の外に逃げるという環境配慮型な漁を400年も続けることで豊な恵みを今にも伝えている。
また定置網は陸から20-30分という近場にあり漁師はその日のうちに家に帰ることができる。
結果的に無理な乱獲を防ぎつつワークライフバランスが保てるサステイナブルな漁業だ。
魚と共にジオ的な背景や培ってきた文化・歴史といった背景を届け、食べる人が感じる美味しさをより豊かにするのが役目であると言う。