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宇治田原の緑レンジャー 浅田賢茂さん
トレードマークの緑のジャケットを着て、浅田 賢茂(たかしげ)さんは、待ち合わせ場所の総合文化センターのホールに、颯爽とお越しになりました。
先月、某所でうかがったお話がとても宇治田原愛に溢れていたので、一度しっかりとお話を聴いてみたいなぁと思っていました。
「インタビューさせてください!」とお願いしたところ、ご快諾いただき、じゅんさんとヤギノリでお話をうかがうことができました。
これまで、「流域」の話をいろんな人にしてきましたが、浅田さんほど、すんなり理解してくださった方は、なかなかいませんでした。
以前、ゼネコンで働いておられたときに、山の木をなくして更地にすると、雨が降ったときに土砂が流れて、土嚢を積まないといけなくなった御経験があったこと。
現在、茶農家を営まれている中で、お茶も木なので、山の表面をカバーし、山が保水するのをうながしているのを、体感としてわかってらっしゃること。
このような御経験の中で、源流部である山の役割について理解されていたから、流域の話もすぐにわかってくださったようです。
そんな浅田さんの、子ども時代のことをうかがいました。
現在33才。ものごころつかれた頃には、もうすでにインターネットもコンピューターゲームも普及していました。
なのでゲームでも遊んだけれど、たくさん屋外で遊ばれたようです。
「昔は、今ほど夏が暑くなかった。30度より気温が上がることはなくて、学校にはエアコンもなかった。プールは寒くて震えながら入ったけど、でも楽しかった。
それに、ヒルがいなかった。鹿も今ほどいなかった。工事をするたびに、鹿や猿が増えたように感じる。だから山で遊べたのかも。」
と当時のことを振り返る、緑レンジャー浅田さんは、いはゆるガキ大将のような子ども時代を過ごされたようです。
友だちと、田んぼの水を抜いたり、あぜ道を自転車で走ったりというイタズラもして、よく近所の人たちに怒られたとのこと。
お家の鉈やのこぎりを持ち出し、山で竹を伐り、ロープをかけて秘密基地を作ったり、川を全部歩く(河口から源流まで)という、聴いているだけでワクワクするような思い出も。
お話をうかがい、きっと浅田さんには、宇治田原の大地の凸凹を映し出した母地図がおありなんだろうなーと、感じました。
母地図については、「流域思考」の岸 先生とヤマップの春山さんのインタビューをどぞ。
春山
岸先生のご著書では、川遊びや川歩きのご経験が、よく書かれています。たしかに、こどもの頃に自然経験を積み重ねることで、自分の生きている場所の輪郭が描けるようになって、暮らしの感覚(センス・オブ・ハビタット)が育まれ、大地を含む流域に対する愛情も湧き上がってきますよね。
岸
こうした人間の土地感は、「母地図(マザーマップ)」とでもいうべき地図的な地域理解をもとにつくられていくと私は思っています。母地図は、成長の過程で人の体の内に形成されるもので、それぞれの経験にもとづいた非常に感覚的なものです。
母地図が形成される原体験は、「10歳から13歳ぐらいのとき、本当に親しい友達と、目的を決めずに遠くに遊びに行く経験なのではないか」という仮説を持っています。
10〜13歳ぐらいといえば、青春映画の名作『スタンド・バイ・ミー』の主人公たちの年齢です。狩猟採集をしていた頃であれば、仲間と一緒に食べ物を狩ったり、採ったりしながら自立していく頃にあたります。
その頃に記憶されていく大地の経験は、都会であれ田舎であれ、その人の母地図の形成につながる。宇宙から足元までの世界が入れ子構造になっていることを認識するのも、だいたい小学5年生前後のはずです。
浅田さんは、ご結婚後しばらく宇治田原を離れて、街で暮らしたことがあるそうです。
しかし、ストレスを感じて半年で宇治田原に戻ってきたとか。
「やっぱり水が合うんです。」
とおっしゃる浅田さんの中には、宇治田原の野山の母地図がしっかりと宿っておられるよなーと感じました。
浅田さんは、昨年、町会議員にもなられ、公務でもご活躍されています。
「子どものころは悪さをしたこともあったし、その頃からいっぱい地域の人に育ててもらったことを、とても感謝している。
いろんな人の話を聴いて、違いを認め合いながら、宇治田原のまちづくりができるといいと思っている。」
とおっしゃっていました。
宇治田原の緑レンジャー浅田さん。
お話しを聴かせてくださり、まことにありがとうございました!
流域探検隊うじたわらのメンバー、心はスタンドバイミー世代です。
竹や木や蔓で秘密基地を作りたいし、田原川の河口から源流まで歩くのも、めっちゃしてみたいです!!!
宇治田原探検の先輩として、浅田さんにもまたご一緒いただけると幸いです。
以上。
宇治田原に母地図がある方々にインタビューするのをシリーズ化したいヤギノリでした。