見出し画像

「未知な存在への恐怖を受け入れるには、人との対話の数だ」

『ターミナル』(2004)

☆監督
スティーヴン・スピルバーグ

☆出演
トム・ハンクス
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
スタンリー・トゥッチ


☆STORY
東ヨーロッパの小国からニューヨークの空港に着いたナボルスキーは、祖国で起きたクーデターのためパスポートが無効になり入国を拒否される。

だが、彼にはどうしてもニューヨークで果たさなければならないある誓いがあった。

彼は入国を目指して空港内に住み着き、さまざまな人々と出会っていく。

☆感想

実際にパリのシャルル・ド・ゴール空港に20年近く滞在した、メーラン・カリミ・ナセリという男性がいる。

ナセリは、パリの空港で20年近くを過ごした。

母国のイランから国外追放処分を受けたと主張したが、有効なパスポートを所持していなかったため、合法的にフランスに入国することができなかったためだ。母国への帰還を拒んだナセリは、出国も拒否。

唯一、イギリスへの渡航を試みたが、入国は許可されなかった。

その後、ナセリは体調を崩してパリの病院に入院し、今は福祉施設で暮らしている。


そんな事件とかなり重なるのがこの『ターミナル』だ。

本作は故郷の国内でクーデターが起こり、国が国として認められなくなってしまい、タイミング悪く空港に残されしまった無国籍人物として扱われてしまうトム・ハンクス演じる主人公と空港内で働く従業員達との友情を描くヒューマン映画。


起承転結はわかりやすく、発端は故郷の内戦といったシリアスなストーリーに感じたけど、内容はシンプル、かつ誰にでも見やすい作品だった。


そこには、当時のアメリカ社会を通底したリアルな空気感が投影されている。


というのも、本作の監督を務めたスティーブンスピルバーグは、『ターミナル』『ミュンヘン』『宇宙戦争』を発表した2004年~2005年のかけての3作品で、いずれも2001年に起きたアメリカ同時多発テロ(9.11)に言及していた。

彼は、『宇宙戦争』公開時のインタビューにて
「9.11事件の恐怖を反映すると同時に、極限状態における人間の姿を描いていた」とメディアに語っていたそう。

そして、クラコウジアという主人公のビクターの故郷で、不安定な情勢にある架空の國は、当時のアメリカが戦争に踏み切ったイラクのような国をモデルにしているとも考えられている。

クラコウジアないしビクターは
アメリカという国、そしてそこに住む人間からすると「未知の存在」であり、コミュニケーションの取れない人間であり、それは言わば恐怖や排除の対象なのだと言われている。

ここからが本題です。

ここから先は

620字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?