「自分か何者なのかは自分で決めろ。」
『グリーン・ブック』(2018)
☆監督
ピーター・ファレリー
☆出演
マハーシャラ・アリ
ヴィゴ・モーテンセン
ニック・ヴァレロンガ
リンダ・カーデリーニ
☆STORY
舞台は1962年、アメリカ。
ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めていたイタリア系男のトニー・リップは、ひょんなことから天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが南部で行う演奏ツアーに運転手兼ボディガードとして雇われる。
☆感想
無論、この映画は“人種差別”をモチーフとした映画ではある。
まずタイトルの意味ですが、アメリカ南部の州では、1876年から1964年にかけて有色人種の一般公共施設の利用を禁止する“ジム・クロウ法”と呼ばれるものがあった。
そこで、ニューヨークの郵便配達員だったヴィクター・H・グリーンが、全米の黒人も利用できるホテルやレストランなどをまとめ、黒人向けの旅行ガイドブックとして"グリーンブック"が発行されていた。
“ジム・クロウ法”の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝され、車で移動する黒人たちの必需品となっていたそう。
そこからなぞられている。
話を戻すと、主人公はジャマイカ系の黒人とイタリア系の用心棒。
小学校の時に天才ピアニストとしてソ連で英才教育を受け、差別も知らなければ黒人差別も知らない。
しかし、1960年代の黒人と見れば殴られるような人種差別がひどい時代、黒人に、人権がなかったときにあえて南部のツアーに行く。
ツアーを通じて2人の価値観のズレが笑いを生むシーンも多く、泣いて笑って感動させられるコメディ。
非言語に対しての盲点が外れてると、非言語を捉えようと映画を見るから今までになくより前提を読むこと、音楽を感じる事が出来た。
ピアノを一音弾くだけでも思いや、仲間、過去の背景を感じる事ができ、全てストンと腑に落ちてくるような感覚になった。
中身の話をすると、大食漢で用心棒のトニーは、車の運転中もなにかしら食べていますが、ピアニストのシャーリーにフライドチキンをすすめたところ「食べたことがない」と言われ、驚く。
というのも、元々フライドチキンは南部の黒人奴隷のソウルフードとして知られているため。
安くて栄養価が高く、満足感の得られるフライドチキンは、肉体労働者が主な仕事だった黒人奴隷だけが食べるものだったのです。
シャーリーは、ジャマイカからの移民である両親のもとにフロリダ州で生まれました。
9歳からはロシアのレニングラード音楽院に入学。
その後はワシントンD.C.のアメリカ・カトリック大学でも学ぶなど、南部の生活とは無縁の暮らしをしてきました。
上品で教養のあるシャーリーは、黒人でありながら黒人文化になじみがなかったから。
そう言ったはぐれ黒人として生きるシャーリーを通じて、この映画は、“人種差別”が公然と存在していた時代の中で、黒人にも白人にも与することができず、なおかつそのどちら側からも距離を置かれ、ひとり孤独に苦しんでいる男の告白を描いた映画でもあると言える。
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