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No.7『47都道府県女ひとりで行ってみよう』

日本には47都道府県もあるのに、行ったことがない場所があるというのはもったいないなぁ。というわけで、全部行ってみることにした。33歳の終わりから37歳まで、毎月東京からフラッとひとり旅。名物料理を無理して食べるでもなく、観光スポットを制覇するでもなく。その時の自分にちょうどよいペースで、「ただ行ってみるだけ」の旅の記録。
(裏表紙より)

 いつからか、将来の夢の一つに「47都道府県全部旅行する」という項目があった。いつからかは分からないが、一つ確実に言えることは、この本の表紙を初めて目にした時からだということだ。それくらい、この本のことは割と前から知っていて、でもなぜか読んでいなかった。流行り病と自分に関することが原因でまだ旅行には行けていないが、最近ようやく「ここに行ったらこれをしよう」というスケジュールを考えるようになったので、読んでみようという気になった。

 この本のおもしろいところは、本当に著者・益田さんの気持ちが素直に書かれ過ぎているところだと思う。例えば、4県目にして早くもひとり旅に飽きて辞めようかと悩んでいたかと思えば14県目で毎月の旅が楽しみになってきているところ。多分この人、元々あんまり旅行とか好きじゃないんだろうなぁということがひしひしと伝わってくる。また、嫌いな食べ物が多すぎて出されたものをちょくちょく残している場面も結構ある。申し訳ないと言いつつも「でも食べられないもん、しょうがない」と開き直っているあたりが面白い。他にも、対応が良くないお店の人のことや、乗り合わせた嫌な客のことも素直に書いている。旅行先だからといって変に媚びたり気を遣ったりしないあたりが面白い。

 旅行に行くとなると、「せっかく行くのだから」と、予定を詰め詰めにしがちな人も多いと思う。僕もそうだ。あれも行きたい、これも見たいと、つい欲張ってしまうし、それと同時に「せっかく来たのにこの名物を体験しないなんて」と誰かに責められるような気もする。変な強迫観念というか、焦燥感がある。でも、この本を読んで、「旅行だからって、名物を全部クリアしなくてもいいのか」と、なんだかすごく安心した。よく考えたら当たり前だ。自分が行きたくて行く旅行なのに、謎の強迫観念に縛られる必要はないのだ。有名観光スポットに絶対行かなきゃいけないなんてルールはないし、名物を無理して食べる必要もない。有名無名関係なく、食べたいものを食べて、行きたいところに行けばいいのだ。一泊してもいいし、日帰りでもいい。延長できるのであれば、予定を伸ばして二泊、三泊すればいい。

 のんびりとした挿絵だから、ポジティブで明るいことばかり書いてあるのかと思いきや、愚痴やネガティブな要素が随所にちりばめられていて、楽しい旅行記を期待して読んだ人には、かなり期待外れな本かもしれない。読んでいて、この著者は人の目が気になって、一人行動がかなり苦手なタイプなんだろうなと思うシーンもたくさんある。否定的で、クレームまがいのことも結構言っている。読む人ににとっては、イライラして最後まで読み切れない人も結構いるのでは?と思う。でも、僕にとっては、「そうだよなぁ、こういう旅行があってもいいんだよなぁ」と、どこか安心させてくれる本だった。

47都道府県女ひとりで行ってみよう2

No.7『47都道府県女ひとりで行ってみよう』
著者:益田ミリ/出版:幻冬舎文庫

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