映画館でAKIRAを観た
12月4日より、全国に7館あるドルビーシネマにて、『AKIRA』が上映されている。大好きな作品。観ないときっと後悔すると思って、今日観に行った。
健康優良不良少年の金田と鉄雄が仲間たちと暴走中、奇妙な少年と遭遇し、転倒する。金田たちが呆然としているうちに、意識のない鉄雄は少年と共に軍の研究所に連れて行かれる。金田は鉄雄を救出するべく研究所に向かうが、そこには過度な人体実験を受けた末に驚異的な力を手にしてしまった鉄雄がいた。鉄雄は自身の力の謎を知るために、日本の最高機密である「AKIRA」という存在に接近するべく、オリンピック会場の地下へ向かう。
『AKIRA』を初めて観たのは今年の5月。サブスクを使って、自宅の小さなパソコンの画面からAKIRAの大きな世界に触れた。ストーリー、音、映像、全てに圧倒されて、最後はワンワン泣きながら観た。こんなすごい作品が、自分が生まれるずっと前にできていたのかと思うと、気が遠くなる気持ちになった。
それから漫画のAKIRAにも触れて、また圧倒された。映画とは少し違ったストーリーが、緻密に、力強く描かれていた。クラクラした。
自分の中で『AKIRA』という作品がどんどん大きくなるのを感じていた。こんな凄い作品を好きになれて自分は幸せ者だと思ったと同時に、公開当時生まれていなかったせいで映画館で観ることができなかった自分は不幸者だと思った。
そんな時「ドルビーシネマでAKIRAが観られる!」というニュースを知り、一瞬頭が真っ白になった。え?AKIRA観れんの?映画館で?良いの?
絶対に行かなきゃ、と思った。行かないと後悔する。今行かなかったら、次いつチャンスが巡ってくるか分からない。いや、二度とそんなチャンス無いかもしれない。そんな気持ちを抱えて、今回観に行った。
映画館で観る『AKIRA』、本当に最高だった。観る前から、最高だってことくらい分かっていたのに。
まずドルビーシネマというのが凄い。一体何なのかよく知らないままに行ったのだが、想像以上に良かった。なんでも「映像と音響のパワフルな技術に、卓越したシアターデザインが組み合わせられることにより、映画館を最高に魅力的なシネマ体験をお届けする空間へと変えます。(HPより)」とのことらしいのだが、本当に凄かった。
とにかく音が凄い。色んな音が色んな方向から刺さるように耳に入ってくる。迫力がありすぎて椅子が揺れているような気がした。ただでさえAKIRAの音楽って独特なのに。ドルビーシネマで聴くKanedaとかTetsuo、笑っちゃうくらい凄かった。
「知っている作品を映画館で観る」という経験は初めてだったが、とにかくずっと感激しっぱなしで、初めて観た時と同じようにのめり込んだし、やっぱり最後は泣いた。
『AKIRA』のことを自分は「泣ける映画」と認識しているくらい観るたびに泣いてしまうのだが、これっておかしいのかな。最後で絶対に泣いてしまう。力をコントロール出来なくなって怪物のように身体が膨れ上がってしまった鉄雄が金田に言う言葉が「助けて、金田」なのだが、このシーンを皮切りに最後までずっと泣く。
金田に向かって「俺のことをいつも子ども扱いしやがって」と言ってはいても、鉄雄はやっぱり金田のことが大好きだし、金田も鉄雄のことが大好きなんだな、と思って泣いてしまう。金田のバイクに執着しているところや、他にも色んなシーンで鉄雄の自己肯定感の低さなんかが見えて、すごく切なく悲しい気持ちになって泣く。
大きな力を使って色んな物を壊したり人を傷つけたり、赤いマントを身につけて自分を強く見せようとしたりしていても、鉄雄はずっと怖かったんじゃないかな、と思う。意図せず大きな力を身につけてしまって、怖くて、ずっと金田に助けに来てもらいたかったんじゃないかな、と思ってしまう。
そんなことを大画面で観て改めて強く思って、オンオン泣いた。
他にもいろいろ書いておきたかったのに、とにかく「映画館でAKIRAが観られてよかった」という気持ちでいっぱいになって何を書きたかったか忘れちゃった。
でも、本当に映画館に観に行って良かった。AKIRAが公開された当時1988年、僕はまだ生まれていない。自分が生まれる前に公開されていた作品を、月日が経ってこうやって映画館で観ることができるなんて、思ってもみなかった。大好きだけど、映画館で観ることは出来ないんだな、と初めて観たその日に諦めていた。だから、今日は本当に幸福な気持ちでいっぱいになった。
今は、テレビでも映画が観られるし、サブスクに入ったらスマホでもパソコンでも24時間好きな時に好きなものを探して観ることができる。僕は持ってないけど、プロジェクターを使って自宅に居ながら映画館の気分を味わうこともできる。映画館でしか映画を観られなかった時代に比べたら、本当に豊かになったと思う。
でも、それでも、「映画館で映画を観る」という行為は褪せていくことはないんだろうなと思う。どれだけ家での映画鑑賞ツールが豊かになっても、映画館で観ることとは何かが根本的に、決定的に違っている気がする。
昨今の流行病のこともあり、映画館に行くのが今年では今日が初めてだったため、そんなことを思った。映画館で観る映画はやっぱり良い。来年はもう少し、映画館に行きたい。
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