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元彼Y⑮プラトニックな関係

彼の会社での就業期間を終えた後、
私はすぐ別の企業へ転職をした。
会社で顔を合わせる事が無くなって
次第に熱も冷めていくものと高を括っていたけれど、仕事での接点が無くなった分より一層距離感が縮まるという逆転現象が起こっていた。
まるで業務報告をするかの如く毎日の電話が恒例になり、たとえ10分でも顔を見れるチャンスがあれば会って話をするという日々になっていた。
私の中でも彼の存在は特殊な形となって変化はしていったけれど、プラトニックな関係は続いていた。

彼は私と会ってバイバイした後
必ずメールをくれて安否確認をされるのが日課となっていたけれど、その日は帰り際、
“あぁちゃん、俺まだ昇格無さそう?”
いつもとは違う言葉を掛けられた。
“何もしない“時間は随分経っていたし
彼の想いが日に日に深くなっていることには
気付いていたけれど
私は答えを濁して待たせ続けていた。

家に着いてはじめて私から彼にメールした。
仲良くしてるけど
恋人にはなれないかもしれないよ
Yが知らない私はいっぱいあるし
私はそれを話せていないし
Yが想う私とは違うかも知れないよ
今というか、まだというか
勇気が出て来ないでいる

“俺はあぁちゃんの過去がどうであろうと関係ないよ”
“過去があっての今のあぁちゃんなんだから、それは魅力なんじゃないの?”
“過去なんて皆なにかあるじゃん”
“聞かないけど、敢えて知る必要も無いと思ってる“
“あぁちゃんが俺をどう想うかそれだけ”
“どんなあぁちゃんでも俺は今のあぁちゃんが好きだから”

そう言うよね
私が何を言おうと何を話そうと
動じるタイプじゃなさそうだもんね
出来ればこのままでいたいって思う自分がいる
ずるいけど怖いから
話したら、話せたら楽になるのかもしれないけど、その勇気さえも出ない
私に罪悪感があること、多分Yは知らない方がいい
Yとこうして逢うようになってからずっと
今でも迷いの中にいること、きっと知らないでいる方がいいことだと思うから


ある日の仕事の途中、彼からメールがあった。
“今日早く終われるから帰りあぁちゃんとこ寄るね”
夜8時頃、彼が来た。
いつもの様に下まで降りて車の中にいる彼を見た。
外から彼の顔を見つめていた。
彼が車から降りてきて
“どうしたの?”
“なんでそんな顔してるの?”って言った。
また悲しい顔してたのかなわたし笑
『ごめん』
『ねぇ、うち、来る?』
“あぁちゃんの部屋?”
『うん』
『今日はうちで休憩する?』
なんかラブホみたいなこと言っちゃったけど
彼は速攻で車のエンジンを止めて
コンビニで買った飲み物を取り出して
私の手を引っ張り嬉しそうに歩き出した。
お単細胞だな笑

遠慮のかけらも無い彼は
部屋に入るなりあらゆるドアを開け部屋の隅々まで見て廻った。
“俺の部屋と全然違うね笑”
普通、はじめて入る女の家でする行動じゃないと思うけど、逆にまんまで安心した
無神経だけどマイペースなその性格は
私の緊張をほぐしてくれた
好きなんだけどなそういうところ










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