「神対応」

「先週、乃木坂のまなったんと握手して来たのね」
「あぁ、乃木坂の握手会行ったんだ」
「そうそう。私、握手する側は初めてだったから、緊張しちゃってさぁ。手が汗でビッチャビチャになっちゃったのね」
「うわぁ、それは嫌だね。出来れば、触りたくないねぇ、その手」
「息もさ荒くなっちゃって、こんな感じ。ハァハァハァハァ」
「気持ちが悪いねぇ。そんな奴に近寄りたくないよねぇ。」
「そんな私なのにさぁ、まなったんは、握手する時、向こうから近寄ってくれてさ、私の目をちょっと上目遣いで見つめながら、私のこの右手を、両手で握ってくれたんだよ」
「それは素晴らしい対応だね」
「そう、まさに神対応だよ」
「それは神だね」
「そう、だから私、神に触れてから、この右手は洗ってません」
「そうなんだ、凄いね!」
「で、おとといの話」
「なになに?」
「おととい、デーモン小暮閣下にバッタリ会ったの」
「へぇーそうなんだ」
「知ってる?デーモン小暮閣下って、10万年も生きてるんだって」
「まぁ、あの人、悪魔だからね」
「これはもう、握手してもらわないといけないと思ってさ」
「なんで?」
「そんで、お願いしたらさ、こころよくオッケーしてくれてさ」
「デーモンさん、優しいね」
「私はさ、右利きなわけよ。だから、右手で握手をしたいじゃない?」
「そうなの?ちょっと、よく分かんないけど」
「でもさ、この時私は、右手が塞がってるわけよ」
「何か荷物でも持ってたの?」
「神と握手をしたんだよ!」
「あぁ、神を残しときたいもんね、右手にね」
「そうなんだよ!だから、泣く泣く、左手で握手をしてもらったんだよ」
「握手してもらえたんだ、よかったじゃん!」
「そう、だから、それ以来、左手も洗ってません」
「じゃあ、手洗いを封じられちゃったわけだ」
「そう、だから、今、私の右手は神の右手、私の左手は悪魔の左手なんだよ」
「ちょっと、それはよく分からないけど」
「それで、今朝、家のドアをガチャリと開けたらさ、スズメがさ、ドアの前で死んでたのよ」
「あぁ、可哀想だね(悲)」
「可哀想だなと思ってさ、そのスズメをさ、右手でムンズと掴んでさ、拾ってあげたのよ」
「普通、そういう時、両手で拾うと思うんだけどね」
「ムンズと掴んでさ、どこかに埋めてあげようと思って、握ってたら、どこからともなく、チュンチュンチュンチュン、チュンチュンチュンって、聞こえてくるのよ」
「おぉ、不思議だね」
「そんでさ、ムンズと握った右手を見ると、なんかモゾモゾしているの」
「おぉ」
「私がさ、パッと右手を開くと、スズメが、生き返ってたんだよ!」
「凄いね!」
「私の右手にはさ、神の力が宿ったんだよ!」
「凄いね!」
「物質に生命を宿す力を授かったんだよ!」
「まなったんと握手したからかもね!」
「そんで、生き返ったからさ、スズメを右手から左手に、持ち替えたんだよ」
「ほう。」
「そしたらさ、さっきまで、暖かかったスズメがさ、また、冷たくなったんだよ」
「ヤバイじゃん」
「そんで、スズメが、そのまま、砂になっちゃったんだよ」
「ヤバイじゃん!」
「私、ピンと来たね。左手には悪魔の力が宿ったんだって」
「デーモン閣下と握手したからかもね!」
「全てのものから、生命を奪う力を手に入れたんだよ!」
「悪魔、すげぇ!」
「それでさ、ぺっちゃん」
「なになに?」
「ぺっちゃん、最近、手がカサカサだって言ってたじゃん」
「うん、私の手は老婆みたいだよ」
「だからさ、私の神の右手で触ればさ、ぺっちゃんの手、甦るんじゃない?」
「ヤダよ〜」
「でも、ぺっちゃんの手、ピチピチに甦るんだよ」
「ヤダよ〜」
「えっ!?なんで、そんなに私の神の手に触られるのが嫌なの?」
「だって、スズメの死体触ってから、手、洗ってないんでしょ」
「………うん」

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