ワゴンセールの首飾り
30を超えてもいまだにわからない事がある。
いや、わからないことだらけなんだけど世の中。少しずつわかってきたところ。辛い。
過去のわからないことを一つ書いてみる。
まずは一部始終から。
場所は東京の下町商店街。
友達とふらふら歩いていたところ、商店街の一角で見るからに怪しい閉店セールをやっているお店があった。
お店の前には閉店セールののぼりが立ち、デカデカと閉店セールという遠くからでも目立つ横断幕を掲げていた。
景気のいい閉店セールだ。
少し店内に目線を向けるとアクセサリーをワゴンセールで売っている様だった。
予想すると、本当に閉店する店から安く在庫を引き取り、空き店舗を借りて売っているのだろう。知らんけど。
店内には年配の女性客が5、6人おり、背中を丸めて品定めをしている様だった。
友達に少し見ていっていいか許可を取り、店内で婦人向けのアクセサリーを物色した。
アクセサリーなんて一つもしない私はその良し悪しが一切わからないが、物は悪くなさそうな気がした。
値札を見ると、安すぎて逆に怪しい。ただこの安さなら騙されてもショックではない。
「これとか、安くて綺麗だしお母さんに買って帰ろうかな」と、ぼそっと友達に言ったところ
「そんな安いやつプレゼントしない方がいいよ。ちゃんとしたやつ買って渡しなよ。」と友達に返されてしまった。
この日のこの後の記憶はデリートされた。
値段の問題なのだろうか?
私はこの閉店セールのアクセサリーと、百貨店で売っているアクセサリーを目利きできる自信がない。世の中の男性は殆どできないだろう。
いや、良い悪いの問題ではないんだろう。
彼は「プレゼント」には相応しくないと判断した。
今でもたまに思い出してしまう。
他人の意見でプレゼントを買わなかった後悔であろうか?
彼は私の母を知らない。
私は母の持っているアクセサリーをぼんやりとだが知っているし、私が学生の頃にお土産で買ったガラスでできた小さな花束が今でも化粧台に乗っているのも知っている。
そこに普段使える様なものを一つセールで買うだけだった。
なんで言われたのか?なんで従ったのか?
多分友達はこのことを覚えていない、私もすぐに忘れたらいいのに。
高かったら買わないだろう?
ろくに誕生日も祝わないだろう?
図星だから忘れられないんだろう?
言い訳だろう?
あの場面は走馬灯候補の一つになっている。
幸せな光景で埋めていくしかない。
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