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【N/S高 政治部】「開かれた」市議会に必要なこと

初めに

みなさまはじめまして。
N/S高 政治部4期生 Dチームのナリカワと申します。
私は山口県下関市で生まれ、それからずっと同市に在住している高校2年生です。

私が住む下関市は、山口県及び本州の最西端に位置する、人口243,811人(2024年1月時点)の山口県内最大の都市です。少し前まで総理大臣を10年以上勤めた国会議員の選挙区であったり、ふぐやくじらなどの名産品があったり、全国的に有名なものがいくつもあり、前述の人口も加味すると、とても賑やかな都市であると見えるかもしれません。

しかし、私の主観ですが、それらがあるにも関わらず下関市は寂れている街であると思います。具体例を挙げるとするならば人口減少です。これは全国的な問題ではありますが、下関市の減少の度合いは中核市 ( 政令で指定する人口20万人以上の都市 ) の中でも顕著です。(※1) 1980年に約32万人だった人口は今に至るまでずっと減少し続けていて、2040年には80年から4割減の約19万人になってしまうとされています。(※2) また、高齢化も挙げられます。2021年時点の下関市の高齢化率 (65歳以上人口が総人口に占める割合) は35.6%でこれも他の中核市と比較すると2位であり顕著です。(※3)

実際に下関駅周辺を歩いてみても、シャッター街と言えるほどではないのですが、人口約24万人の都市にある風景ではないと感じます。周囲の人などから「昔はここはこうだった」などの昔話を聞くたびに私は今と比較してしまい、物寂しい気持ちになります。

とにかく、今の下関市は私が「他人に誇れる街」ではありません。

どうして下関市が寂れているのか。他の街と比較しても、少しそのペースが早いのではないかと思います。

そこで、私は下関市のどこが変われば街に活気が出るのだろうかと考え、調査研究を行いました。
その中で「議会って何をしているのだろう」という疑問が生じました。市長や行政に関するニュースはよく見るのですが、議会に関するニュースはあまり見たことがありません。市報に載っている活動報告は小さく、選挙公報や各議員の市政報告なども選挙期間中にしか見ないので、正直何をしているか知りませんでした。

下関市役所(下関市議会)

議会傍聴に行ってみて

そこで、私は9月に行われた下関市議会定例会の傍聴に行ってきました。
しかし、議会の様子は私が考える普通の地方議会そのもので特に感想がありません。事前に抱いていた「先進的な質問がない」や「若者に焦点をあてた質問が少ない」「どんよりとした空気感」といった想像通りでした。
けれども、私は傍聴席の様子が気になりました。
全席ではないけど、半分ぐらいの席が埋まるだろうと思い、早めに市役所にいったのですが、蓋を開けてみると当日は私を除いて年配の方が5人程度で、傍聴していた時間を通してなんとも言えない気持ちになりました。インターネットでも傍聴をすることができるので、ほとんどの人はそちらで観るでしょうし、何より平日だったので少なかったと思うのですが、もうちょっと傍聴席に人数と幅広い層の方がいても良いと思いました。

家に帰って振り返りをする中で、一つ考えたことがありました。
それは「市民の市議会に対する興味関心があまりにも薄い」ということです。
もちろん興味関心が薄いこと自体は悪いことではないです。しかし、薄すぎるのではないかということです。
興味関心の度合いを測る基準の一つとして、投票率があると思います。最新の下関市議会議員選挙の結果によると、全体の投票率は約42%で全国平均と同程度ではあるのですが、これでは市民の関心が議会に向いているとは言えないと思います。

私の考え

なぜ興味関心が低いのか。
私はその理由は、そもそも市議会について気軽に知る機会が少ないからではないかと考えました。
今現在、市議会についての情報を得る方法は大きく分けて3つあります。
まず1つ目は定例会や委員会を傍聴することです。どちらも市役所もしくはインターネットで観ることが可能です。しかし、定例会の一般質問は一人当たり1時間程度、委員会も平均1時間程度なので一般の人がこれを観るのは大変です。
2つ目は、SNSやブログから情報を得ることです。これは前者に比べ気軽です。しかし、そもそもSNSのアカウントやホームページを持たない議員がいたり、それらを持っていても運用をしていない議員がいたり、XかインスタグラムかFacebookの内、いずれか一つしか運用しておらずアカウントを見つけるのが困難な議員がいたりします。また、「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といった現象によって得る情報が偏ってしまう可能性もあります。高齢者のことも考えればSNSは少し難易度が高いように感じます。
3つ目に「しものせき議会だより」を読むことです。年に4回発行され、発行月の市報に挟まっているほか、インターネットでも見ることができます。しかし、文字がメインで若者と呼ばれる層にはマッチしないと思います。また、今年の9月号からは委員会中心の構成となり、一般質問については主な項目と録画が視聴できるQRコードのみで物足りない印象を受けます。
また、これ以外に市議会が6月から定例会閉会後の記者会見を始めたそうなのですが、私が調べた限りではYoutubeなどの動画投稿サイトで配信されていませんし、肝心な内容も新聞などでしか手に入れることができない上、私が読んだ毎日新聞の記事(※4)では内容が少なくよくわかりませんでした。毎日新聞が下関市議長に行ったインタビュー(※5)には「議論の中身を多くの市民に知っていただきたいという思い」で記者会見を始めたとあるのですが、その目的は到底達成されていないように思えます。

現状は市議会について知ろうと思ってもかなりの努力が必要とされるだけでなく、そもそも外への情報発信を全く行っていない議員もいます。
そこで、外から気軽に市議会の情報を得られるようにするため、以下の2つを提案したいと思います。

1つ目は議会報告会を開くことです。
議会報告会とは、議員ではなく議会が常任委員会や特別委員会などでの議会活動の状況を報告する会のことです。全国ではこのような報告会が議会基本条例に明文化され、定期的に行われている自治体が数多く存在します。下関市にも議会基本条例はありますから、こちらに明文化して議会報告会を開くべきです。また、市役所の小さい会議室で人数を限定して開くのではなく、YouTubeなどの動画投稿サイトを使い、誰でも気軽に観ることができるようにすべきです。個人的には新潟県上越市の例(※6)を参考にしたら良いのではないかと思います。
2つ目は議員だよりを発行することです。
現在のしものせき議会だよりでは、議員一人一人の一般質問での質問内容は知ることはできますが、一般質問を経ての議員の感想や委員会での発言内容、議会外での活動などの個人の見解や活動については知ることができません。SNSでそういった情報を発信されている議員もいらっしゃいますが、全ての議員をまとめて俯瞰できる媒体を用意することで、市民による議員の監視や次に投票する議員を決める際に大いに役立つと思います。

以上の2つ以外にもアイデアはあると思いますが、とにかく市民が今よりも下関市議会と下関市政に興味関心をもち、気軽に意見を言えるような街ができれば良いと思います。そして下関市が過去を超える賑わいを見せてくれたら良いと思います。

あとがき

「議会傍聴に行ったとして、自分の考えは変わらないだろう」と傍聴に行く前の私は思っていたのですが、結果として傍聴席の様子という予想できなかった新しい視点を得ることができました。それから私は結果が想像できたとしても、実際に行動することの大切さを今回の議会傍聴で改めて痛感しました。私のように政治について日々調べたり考えたりしているけど、その考えを心の内に秘めたままにしているという人は少なくはないと思います。地方議会の傍聴は行くだけで良いので、「第一歩」としては良いのではないでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


参考文献
※1 都道府県市区町村 “中核市 人口減少率ランキング” https://uub.jp/rnk/chu_n.html
※2 下関市 “下関市都市計画マスタープラン” 8ページ https://www.city.shimonoseki.lg.jp/uploaded/life/2620_97633_misc.pdf 
※3 毎日新聞 “第4期下関市地域福祉計画・第4期下関市地域福祉活動計画” 13ページ https://www.city.shimonoseki.lg.jp/uploaded/attachment/67081.pdf 
※4 毎日新聞 “議長ら初の報告会見 「活動わかりづらい」の声、受け 下関市議会閉会 /山口” https://mainichi.jp/articles/20230624/ddl/k35/010/253000c
※5 毎日新聞 “定数減、身を切る改革 香川・下関市議会議長インタビュー 重要案件は委員会設置で対応 /山口” https://mainichi.jp/articles/20231223/ddl/k35/010/322000c
※6 上越市議会 “議会報告会(令和5年3月定例会)” https://www.youtube.com/watch?v=KI82tPi2UXI


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