Chassez le naturel, il revient au galop.
亡き父は茗荷が苦手で、ある日理由を尋ねたところ、茗荷は物忘れをするからだと言う。
幼児期に聞いた落語の『茗荷宿』が深く残っているようだった。
私は私で、鹿肉が好物なのだが、美味いこと以外の理由を思い返すと、やはり幼少期にふれたシャルル・ペローの『眠れる森の美女』に由来していた。
やはり子供時分に鮮烈に刻まれた記憶は、衝撃と共にいつまでも色褪せず残るものなのだろう。
そういえば父が蛙を忌み嫌っていたのも、年の近かった大叔父が腹の裂けた蛙を幼い父に投げてぶつけたからだと言っていた。
本当にあの大叔父はろくでもない。
ところでタイトルにした
Chassez le naturel, il revient au galop.
これはフランス語で『三つ子の魂百まで』に相当する。
”本性は追い払ったところですぐに戻ってくる”といった意味。
因みに英語だと
A leopard can’t change its spots.
”豹は斑点模様を変えられない”。
こちらの方がわかりやすい。
それにしてもあの大叔父は本当にろくでもない。
そろそろ現世から離脱しそうな親戚の噂を聞きつけ、どこからともなく現れて突然甲斐甲斐しく世話をする。
頼んでもいないのに葬儀を取り仕切り、遺品整理の日をしつこく聞いてくる。
その嗅覚たるや!
そうした厚顔無恥な行動ができる大叔父は幽霊や妖怪よりずっと恐ろしい。
この大叔父の金銭絡みのやらかしは枚挙にいとまがないほどだ。
Il veut maintenant l'héritage de sa grand-mère…