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国防論と日豪安保

日本の国防論を話すと、右も左も二言目には「アメリカがー」という。
米国が世界一強大な国であることは疑いようがないが、かといって日本の安全保障を語るのにそれだけでよいだろうか?
実は日本が軍事同盟を結んでいる国はアメリカの他にもうひとつある。
それがオーストラリアである。

安全保障協力に関する日豪共同宣言、日豪安保は締結済のれっきとした相互防御同盟。架空でも仮定でも未来の話でもない。

日本人は南半球のオーストラリアを日本から遠い国と思っている人が多いが、実はアメリカ西海岸どころか、ハワイよりも近い。
また、外交的に自主性が高くWW1、WW2共にアメリカより先に参戦し、常に最前線の激戦地で奮闘している。
イギリスの影響は強いものの、他国に追随するだけの外交をする国ではない。
軍は精強、資源は豊富。日本からすれば魅力的な同盟国である。

さて、同盟であるから文言の約束事があるだけでは足りない。
相互協力には理屈と感情の両方が必要だ。
要は「助ける」約束と条文に書いてあるだけでは、人は本気で助けてはくれないもの。「助けたい」という感情もあってより効果を発揮する。
つまり両国の信頼関係醸成は不可欠だろう。

そこで日豪関係における次の3つの事項について、現状の説明と、それを発展させる方法について議論・検討したい。

1.牛肉
アメリカが抜けた以上、環太平洋パートナーシップ協定、TPPの基軸は日本とオーストラリアである。
TPPには様々な項目があるが、豪州との貿易関係で特筆すべき項目は牛肉だろう。
オーストラリアの牛肉は激安だ。
関税をかけないと日本の牛肉産業は壊滅してしまう。しかしTPPの協定の為に関税率38.5%から9%まで下げるともう決まっている。

おそらく、これによって日本の廉価な牛肉はオーストラリア産に完全に席巻されてしまうだろう。
国内産は今後、高級和牛路線で対抗することになる。

つまり、オーストラリア人が「日本のアニメが好きだ」と言うぐらいに、日本人が「豪州産の牛肉は好きだ」と言えるようにならなければならない。
今後、すき家や吉野家で食べる牛丼はオーストラリア産になる。
これを受け入れる覚悟が必要である。

2.ニセコ
オーストラリア人に大人気なのが北海道の倶知安、つまりニセコのスキー場である。
理由はオーストラリアには良いスキー場がないのと、季節が日本と反対なのでオーストラリアの夏にスキーするのにちょうど良いからである。
だが、不便が過ぎるといくら人気でも離れてしまう。コロナの所為もあるだろうが、ニセコへのオーストラリア人観光客の客足は減少傾向ともいう。

そこで一案だが、いっそのこと北海道新幹線を千歳空港まで延伸し空港直結してはどうだろうか。そうすればオーストラリアからのスキー客が倶知安に行く移動時間を大幅に短縮できる。

北海道新幹線 ※JR北海道のサイトより

現在は観光バスで行くわけだ。しかし、すごく遠回りな上に、倶知安まで直接繋がっている高速道路はない。しかも冬だと除雪しないと通れない険しい山道なので不要な時間がかかることもあるだろう。
これはちょっと観光客に酷くないだろうか?予定が立たないからと、見送る人も多いのではないか?
千歳から札幌までの輸送は地元企業の縄張りがあることは知っているが、そんな小さな利益の為に地域経済を、強いては国防を疎かにしていいのだろうか?
北海道新幹線がニセコを通るなら千歳と直結すれば定刻で快適に大幅に早く到着できるだろう。

3.車
日本からオーストラリアへの輸出品目の半分以上が車である。乗用車からトラックまで何でも。
日本車はオーストラリアで圧倒的に強い。理由は非常に簡単。日本車が右ハンドルだから。
日本国内は<br>アメリカの圧力で<br>左ハンドルの車でも運転できるが、オーストラリアで左ハンドルの車は禁止だ。
右ハンドル用の工場を作るのはそれだけコストがかかり、だからアメリカ、中国、韓国の企業は参入しにくいわけだ。
つまり日本超有利。TPPで関税も減って、さらに有利。このアドバンテージは今後の日本に活かしたいだろう。

ところがである。
日本は独自規格が多い。日本人は自分達だけに通用する規格が大好きなのだ。
ハンドルの規格は豪州への輸出が超有利なのだが、実は他にも細かい規格があって、それが豪州に合わないこともある。
具体的な例でいうと、日本のチャイルドシートはオーストラリアでは使えない。他にはEV車の急速充電の出力の規格が違う。とか。

日本の自動車会社には、国内企業独占の為にオリジナル規格を作るんじゃなくて国際標準、せめて豪州に輸出しやすい用に合わせろよ。と思う。
そうしなければ、せっかくの有利を活かせない場合もあるだろう。

牛肉、ニセコ、車。
「豪州産牛肉に対する偏見を無くす」「ニセコへの交通を便利にする」「車の規格を輸出しやすいように豪州に合わせる」
以上3点。

これらは豪州との関係を考える上で超重要項目である。
まぁ、大学入試の地理か政経の問題に出てもおかしくない一般常識。

今後の日本の安全保障を考えるなら、すでに重要項目であるこれら豪州関係をさらに一歩踏み込んで、より健全化できるように一考してもいいのではないだろうか?