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初めての中古物件購入:マイホームでも収益物件でも「こんな不動産には気をつけろ」大全

はじめて中古物件を購入するとなると、物件探しから契約、リフォーム、引き渡しまで不安なことが多いものです。新築物件とはちがい、「中古」だからこそ起こりうるトラブルや見落としが発生するケースがあります。不動産購入は人生の中でも大きな買い物ですから、できるだけリスクを減らしたいですよね。そこで本稿では、「こんな中古不動産には気をつけろ」というテーマで、注意しておくべきポイントをできるだけ網羅的にまとめました。マイホームとして購入する場合でも、収益物件として購入する場合でも共通することが多いため、気になるところがあれば詳しく調べ、必要であれば専門家に相談しましょう。

1. 築年数のチェック:昭和56年(1981年)以前の旧耐震基準の建物

1-1. なぜ昭和56年以前の建物が要注意なのか

中古不動産の購入でまず気にするべきは築年数です。とくに昭和56年(1981年)6月1日以前に建てられた物件は、旧耐震基準で建てられている可能性が高いため注意が必要です。旧耐震基準とは、現行の耐震基準(新耐震基準)に比べて地震対策が不十分な可能性がある基準です。建物自体が老朽化しているだけでなく、耐震性に大きな問題を抱えているリスクがあります。

たとえば、大きな地震が起こった際、旧耐震基準で建てられた建物は倒壊しやすい、あるいは大きな損害を受けるリスクが高いといわれています。地震リスクの高い地域であれば、なおさら注意が必要です。

1-2. 耐震診断や補強工事の確認

旧耐震基準の建物であっても、すでに耐震補強工事が行われていれば安心度が高まります。売主や仲介業者に**「耐震診断の結果」や「耐震補強工事の実施歴」**などを確認しましょう。もし耐震補強工事が必要な場合は、補強にかかる費用も購入予算に含めて検討しておく必要があります。

1-3. 融資の面で不利になる可能性

築年数が古い物件の場合、金融機関からの住宅ローンが組みにくくなる、または金利や返済条件が不利になる可能性もあります。特に旧耐震基準の建物は、耐震性のリスクを考慮されて融資を敬遠されることがあります。もし物件探しで昭和56年以前の建物にあたったら、ローンが組めるかどうかも確認しましょう。

2. 床の傾き:建物の状態を示すサイン

2-1. 床の傾きは何を示すか

中古住宅を内見するときに、意外と見落としがちなのが**「床の傾き」**です。たとえば床にゴルフボールを置いて転がしてみたり、スマホの水平器アプリで確認したりすると簡易的なチェックができます。床が傾いていると感じたら、建物の基礎や構造に問題があるかもしれません。
• 基礎の劣化や不同沈下:地盤の問題や施工不良などによって建物が不均一に沈下しているケース
• 柱・梁の劣化:経年劣化によって柱や梁がたわんだり、シロアリ被害などで傷んだりしているケース

2-2. 修繕が必要かどうかの判断

床の傾きが軽微な場合は簡易な補修で済むこともありますが、大きく傾いている場合は土台や基礎を改修しなくてはならない可能性があります。その修繕費用は多額になるケースがあるため、物件価格が安いからと飛びつく前に、床の傾きや基礎状態を専門家にチェックしてもらいましょう。

2-3. 床が傾いている物件でも投資価値がある場合

ただし、収益物件の場合は、床の傾きがあっても割安で購入し、補修工事をして付加価値を高める方法もあります。あくまで修繕費用と物件の将来的な価値を天秤にかけ、投資としてペイするかどうかを慎重に検討してみましょう。

3. 水回りのリフォーム費用:最もお金がかかるポイント

3-1. なぜ水回りは高額になりやすいのか

キッチンやお風呂、トイレ、洗面所といった水回りは、設備機器が複雑であるうえに給排水管や防水処理の劣化など、リフォームに大きな手間と費用がかかります。中古物件を購入してから大掛かりなリノベーションを行う場合でも、水回りは高額になりやすいポイントです。

3-2. 設備・配管の老朽化チェック

築年数の古い物件ほど、給水管・排水管の素材が旧式のもの(鉄管など)で錆びている、あるいは配管の取り回しが劣化しているなど、トラブルのリスクが高いです。漏水などが起こると壁や天井、床にもダメージが広がり、想定外の修繕費用が発生することも。
• 屋内外の配管材質を確認:鉄管の場合は錆びていないか、樹脂管の場合は劣化が進んでいないか
• 給湯器や水栓金具の状態:古い給湯器は交換費用もかかる
• シロアリなどの水回り被害:湿気の多い場所はシロアリ被害のリスクも高い

3-3. 予算組みと事前見積もり

水回りのリフォームがどの程度必要かは、物件によって大きく異なります。購入前にリフォーム会社や工務店などに同行してもらい、リフォームの概算見積もりを出してもらうのが理想的です。その結果によっては、物件の購入価格を交渉する材料にすることもできます。

4. 前面道路:建て替え・融資への影響

4-1. 接道義務の確認

建築基準法では、建物を建てる際に幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという接道義務があります。中古住宅を購入するときも、前面道路が建築基準法上の道路かどうかは重要なチェックポイントです。
• 建築基準法上の公道なのか
• 私道なのか(私道の場合、幅員や持分、通行承諾書などの書面確認が必要)

4-2. 私道の場合のリスク

前面道路が私道である場合、通行承諾書が存在するかが大切です。承諾書がないと、再建築や増改築、融資の利用に不利になるケースがあります。私道の持分を一部でも取得できるかどうか、共有者の承諾を得られるかどうかなど、物件購入前に必ず確認しましょう。

4-3. 再建築不可物件

幅員が4m未満であったり、接道義務を満たしていないなどの理由から**「再建築不可」**に該当する物件もあります。再建築不可物件は値段が安い傾向にありますが、将来的に建て替えができないため、資産価値を維持するのが難しくなります。特に収益物件としては融資を受けにくいです。購入後の計画をしっかり考えた上で検討してください。

5. 調整区域の物件:建て替えや用途制限に要注意

5-1. 市街化調整区域とは

不動産の所在地が市街化調整区域に指定されている場合、建物を新たに建築したり、増改築したりするには原則として許可が必要です。そもそも都市計画上、市街化を抑制するための区域なので、基本的には建物の建築が制限されます。既存の建物がある場合、一定の条件を満たせば建て替えができるケースもありますが、用途が厳しく限定されることがあります。

5-2. 建て替え可能でも用途に制限がある

既存宅地として認められ、住宅の建て替えが可能な場合でも、専用住宅としてしか建て替えが認められないケースがあります。将来的に「古民家カフェにしたい」「事務所兼住居にしたい」など、多用途に使用する予定がある場合は要注意。調整区域での用途変更はハードルが高く、役所での確認が必須です。

5-3. 将来性と資産価値

調整区域にある物件は一般的に価格が安くなる傾向があります。ただし、用途制限などが厳しく、将来転売しづらい場合があるため、資産価値の面でもデメリットが大きいです。「自然環境が豊かで魅力的」といったメリットを感じる方もいるでしょうが、メリット・デメリットを十分に理解した上で慎重に判断しましょう。

6. その他、注意しておきたいポイント

ここまでは代表的な注意点を挙げてきましたが、中古不動産にはほかにもチェックしておきたいポイントが多数あります。一つひとつ見ていきましょう。

6-1. 耐震性以外の構造上の問題

(1) シロアリ被害

日本は湿度が高く、木造住宅でシロアリ被害が起こりやすい地域が多いです。シロアリに食害されると構造体に深刻なダメージを与えます。床下や柱、土台にシロアリの形跡がないか、専門家やシロアリ業者に調査してもらうのが望ましいです。

(2) 雨漏りや屋根の劣化

築年数の経った物件だと、屋根の防水処理や外壁のコーキングが劣化している場合があります。雨漏りは建物内部に深刻なダメージを与え、カビの発生や木材の腐食の原因にもなるので要注意です。天井や壁のシミなどがあれば、雨漏りの痕跡かもしれません。

(3) 外壁・基礎のひび割れ

モルタルやコンクリート壁に**クラック(ひび割れ)**がある場合は、その大きさや場所に注目しましょう。構造上の問題につながる大きなクラックなのか、仕上げ材レベルの表面だけのひび割れなのかによって、リスクや修繕コストは大きく変わってきます。

6-2. 立地・周辺環境

(1) ハザードマップの確認

中古物件であっても、自然災害リスクは常に考慮すべきです。洪水、土砂災害、津波などのハザードマップを確認し、その物件のエリアがどのような災害リスクを抱えているかを調べておきましょう。地震の際の液状化リスクもチェックポイントです。

(2) 交通アクセスや生活利便性

マイホームの場合は生活のしやすさ、収益物件の場合は入居者を確保しやすいかどうかが重要です。公共交通機関の利便性、スーパーや病院、学校などのインフラがどれほど整っているかを事前に調べ、購入後の生活や運営をシミュレーションしましょう。

(3) 周囲の再開発計画

自治体やデベロッパーによる再開発計画がある場合、将来的に街の雰囲気が大きく変わる可能性があります。プラスに作用する場合もあれば、騒音や大規模な工事が長期化するなどマイナスに作用する場合もあるでしょう。役所や自治体のホームページなどで情報収集を行い、周辺の将来像をつかんでおくことも重要です。

6-3. 法的書類・契約関係のチェック

(1) 登記内容の確認

登記簿謄本を取り寄せて、所有者・抵当権・地役権などに問題がないかをチェックしましょう。稀に売主と登記上の名義人が異なる、設定されている抵当権が抹消されていないなどのケースがあります。

(2) 許可・承諾書の有無

前述の私道の通行承諾書のほか、増改築や用途変更の許可などが必要な場合があります。物件によっては管理組合の規約が厳しいケースもあり、マンションであれば長期修繕計画や管理組合の財政状況もチェックポイントです。

(3) 売主の契約不適合責任の範囲

2020年の民法改正以降、売買契約では「契約不適合責任」という形で、引き渡された不動産に瑕疵(かし)がある場合の修理請求や損害賠償請求が認められています。ただし中古不動産の場合、売主が責任を限定しているケースが多く、どこまで保証してもらえるのかが契約書で大きく変わります。免責となっている場合は、購入者側のリスクが高いことを認識しましょう。

6-4. 融資面での注意

(1) 物件評価と融資金額

中古物件は新築に比べて融資上限が低く設定されやすい傾向があります。古い物件ほど担保評価が低くなるため、頭金を多めに用意しなければならないケースもあります。

(2) リフォームローンと併用

中古物件購入時にリフォームローンを同時に利用する方法もありますが、金融機関によって条件や金利が異なるので比較検討が必要です。耐震基準や接道義務などの問題があると、そもそも融資審査が通らないこともあるので注意しましょう。

6-5. 価格交渉と引き渡し条件

(1) 価格交渉の材料

中古不動産は、物件のコンディションや売主の事情によって価格交渉が可能な場合が多いです。たとえば、床の傾きや設備の老朽化、水回りのリフォーム費用、耐震補強の必要性などを根拠に、交渉を試みてみるのも一つの手です。

(2) 引き渡し時の状態や残置物

引き渡し時に家財道具やゴミをそのまま残した状態で売却されるケースもあります。処分費用や撤去費用を買主側で負担するのか、売主側が行うのかをあらかじめ取り決めましょう。特に収益物件として購入する場合、入居者がいる状態での引き渡しなのか、空室渡しかによっても条件が変わります。

7. まとめ:中古不動産には魅力もあるが、リスク管理が大切

ここまで、中古不動産の購入にあたって気をつけるべきさまざまなポイントを挙げてきました。築年数(昭和56年以前の旧耐震基準)や床の傾き、水回りのリフォーム費用、前面道路の権利関係、調整区域による建て替え制限など、チェックすべき項目は多岐にわたります。さらに、シロアリ被害や雨漏り、ハザードマップ、登記内容、融資面での制約など、購入後に後悔しないよう入念に調べておく必要があります。

一方で、中古物件ならではの価格の安さや味わい深い雰囲気、立地のよさなどのメリットを活かせる物件もあります。うまくリフォームやリノベーションを施すことで、オンリーワンの住まいや収益物件へと生まれ変わる可能性も大いにあります。大切なのは、リスクを正しく把握したうえで、総合的なコストや将来性を考慮することです。

初めて物件を購入する場合は、不安が尽きないものです。不動産会社の担当者や建築士、工務店、司法書士、行政書士などの専門家の力を借りながら慎重に進めることで、トラブルのリスクを大幅に減らすことができます。実際に物件を見学したり、周辺環境を歩いて確認するなど、足を使った情報収集も重要です。

ぜひ、ここで挙げた注意点を参考にしながら、「初めての中古不動産購入」を成功させてください。マイホームでも収益物件でも、自分にとってベストな形で中古物件の魅力を引き出し、後悔の少ない選択をしていただければと思います。少しでも不安を払拭し、理想の暮らしや投資を実現できるよう願っています。

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