一人で出来るもん!【やる気を奪う過剰ヒント】
悪意のない他人から差し伸べられた温かい手助けやヒントで、やる気を全て無くしたことはありませんか。
・赤ちゃんが初めて立つ瞬間
・完走目指して頑張ってきたトライアスロンのゴール直前
・あと少しで解けそうなクロスワードパズル
手を差し伸べた瞬間に全て台無しにしてしまう場面、ありますよね。
手助けするか、何もせず見守るか・・・、悩む前に手と口が出てしまうことがほとんどです。困っている人は助けてあげましょうね、って子供のころから教えられてきましたから仕方ないですね。でも、手助けの必要性は、問題に直面している本人が決める事です。困っている本人が、問題解決する能力を手に入れたり達成感を得ることを優先するのであれば、お節介はやめたほうが良いですよね。
人はなぜ無用な手助けをしてしまうのか?
頼られたい、自分の存在を認めてほしい、私がいなければダメなんだ、そんな承認欲求が作用しているのでしょうか。
さて、イルカのトレーニングの話。
トレーニング方法の一つ、シェイピングついて再確認から。
トレーニング≠シェイピング、ちょっと違います。
・シェイピング
①自発行動の中から目的に近い行動を選択して強化、褒めて育てる!
②せっかく強化した行動に対して、思い切って消去の手順を行う。
(今まで強化してきた行動を強化しない、突然のルール変更)
③バリエーションが広がった行動の中から、さら近い行動を強化する。
④この手順を繰り返しステップアップ、。
*タイミングを逃すと全部消去、または威嚇や攻撃されるかも、注意。
重要なのは自発した行動の強化、自発がポイント。
行動を引き出す働きかけはしません。
今ある行動のバリエーションの中から選択する、これが基本。
何度もいいます、行動を引き出すのではなく、選んで強化。
行動のバリエーションを広げるきっかけは、消去。
消去に対する混乱をうまく使う、これが技術の見せ所です。
それでもうまくいかない、そんなときに使うのがプロンプト(ヒントや手助け)です。
・プロンプト(ヒントや手助け)
目的の行動が起きやすいように使う補助的な刺激、行動の前に提示。
プロンプトは、少しづつフェードアウトが必要。
ヒントや手助けは使い方を間違えると、全てを破壊する猛毒になりますので、十分注意してください。感覚的には、罰と同じくらい危険だと思っています。過剰なヒントや手助けは動物から「考えて挑戦するチャンス」と「自ら気づき、発見する楽しみ」を奪います。また、何をすれば良いか理解した上で拒否している場合には、ヒントと手助けは「イヤでもやりなさい」強制の意味として動物に伝わります。ヒントや手助けは、使うリスクより、使わないメリットの方が大きいです。出来るだけ使わないことをお勧めします。ところが、プロンプトは、うまくいかない時に勝手に出現し、イルカの動きや反応に合わせてエスカレートする厄介者です。まじめで一生懸命なトレーナーほどが陥りやすい落とし穴、必死になればなるほどプロンプト使ってしまいます。焦りや緊張は特に要注意です。
では、どうすれば良いんですかって話ですよね。
強化する行動をあらかじめ決めてしまっていると過剰プロンプトにハマりやすいです。逆に良さそうな行動は全てOK、目的からかけ離れた行動ワースト20~30%だけを消去、強化しないイメージでトレーニングすると、多すぎるヒントや強制を回避しやすいです。
自分で考え、自分で行動し、答えを自ら見つけた時のイルカの(嬉しそうに見える)行動をイメージしながら、のんびりゆっくり行きましょう。きっと回り道した分だけ得るものは大きいはずです。余裕があれば挑戦してみませんか。
例)
ヘッドアップ+食事 ⇒ 吻タッチや餌を見せないで行動形成出来ないか?
回転 ⇒ ターゲットをそんなに動かさなくても回る?
採血・体温測定 ⇒ 手は添えるだけ?掴まなくても自分で止まれる?
トリック系ジャンプ ⇒ ターゲットはそんなに動かす必要あるかな?
ジャンプの助走 ⇒ 誘導不要?そのうち気づく?
イルカが自分で考えて、自分で答えが見つけられるように、強制をせず、選択肢を多く。くれぐれも無理の無い範囲で、遊びのつもりで。
プロンプトの悪用方法について、
闇の組織に所属する暗黒トレーナーが操るテクニックがありますので紹介します。イルカに頼られたい、イルカにとって必要な存在になりたい、私はイルカに必要とされている、私じゃないとこのイルカは扱えない、自分だけのイルカ、そんなイルカを育てたい独占欲と承認欲求にまみれたトレーナーが人知れず使うテクニック。正式なサイン以外に、自分にしかわからない内緒のプロンプトをいつまでも残しておきましょう。このタイミング、この場所で、こんな条件と順番じゃないと行動を起こさないようにプロンプトを仕込みます、すると・・・・。
「このイルカはアナタのサインしか反応しない」
アナタは社内で大切にされることでしょう。
もったいないですね、もっと素敵な世界が広がっているのに。
誰でもイルカが扱えるように、トレーナー同志が同じ言語で議論出来るように、諸先輩方はトレーニング現場に行動主義をベースにした理論を導入しました。行動という目に見えるものが評価基準となったので、言い訳出来なくなり、平和な時代が訪れました。しかーし、最近は理論を都合良く解釈して、自分の言い訳に使う新勢力が現れているようです。
また、幸せやエンリチッチメントなど、動物の情動や心に焦点が当たり始めているように感じます。行動主義に基づく古い理論の勉強だけで大丈夫でしょうか?
トレーニング技術を高めるためには、今まで思いもしなかった方面からのアプローチ(例えばトレーナーの心のケアーとか、飼育の理念についてもっと突っ込んでみるとか)が必要なのではと感じているのは私だけでしょうか。
結論
イルカのトレーニングは、子育ての達人、お母ちゃん・お婆ちゃんに教えてもらおう!