イルカが離れていく!何でだ!②(テクニックからの脱出、経験者の皆様応援バージョン)
仲良くなりたいのに、遠く離れていく、一生懸命に手を伸ばしても届かない、どれだけ叫んでも帰ってっこない、そんな素敵で魅力的な存在って何でしょうか?
それはイルカです。
イルカの離れって恐怖ですよね、特に経験年数が長ければ長いほど。
僭越ながら、今回は経験者の皆様を全力で応援させていただきます。
残念ながら最後までお読みいただいても、明日からイルカが離れなくなることはありませんのでご了承ください。本当に余計なお世話ですよね。
それでは行きますよ、最後までお付き合いください。
問題1、ステージに一人取り残され途方に暮れている皆様、あなたは何をお求めですか?
A.離れる事は特に問題視していない、むしろ離れたほうが良い
B.私は、イルカを離さない方法が知りたい
C.私は、離れないイルカを育てたい
問題2、ステージに一人残されたスタッフに対して、あなたはどうしたいですか?
D. とにかく今、イルカを離さないでほしい
E. イルカを離さない技術を持つスタッフを育てたい
F. 離れないイルカを育てられるスタッフを育てたい
G.関与したくない
お好きな課題は選べましたか?一つじゃなくていいですよ、いくつでも好きなものをお選びください。それでは、それぞれの課題ごとに、都市伝説級の解決策をご紹介します。
「役に立つか立たないかは、あなた次第です!」
A. 離れる事を問題にしていないアナタへ
非常に深いです。確かに状況によってはイルカが離れたほうが良い事もあります。是非、じっくりお話させてください。まさか、自分の能力のなさを隠すための発言ではないですよね。イルカの離れが怖い人を勇気付ける為には、離れを問題にしない姿勢が必要な時もあります。問題にしない理由は沢山あります、否定はしません、アナタの本心ならば。
B. とにかく今すぐにイルカを離さない方法が知りたいアナタへ
テクニックを使いましょう。テクニックを使う時には、どんなテクニックをどれくらい使ったか覚えておいてください。また、無意識に使用していないかセルフチェックしてください。むやみに多用すると効果が下がるので、大切に使いましょう。テクニックは、イルカの勘違いと消去抵抗で成り立っていますので(本当か?)、イルカを適度に混乱させちゃってください。テクニックの効果が無くなる時は、イルカに全部ばれてしまったときです。具体的な方法の一例は、「イルカが離れていく!何でだ!1」でご紹介しております。すでにすべてのテクニックが使われ、効果がなくなっている場合は、新たなテクニックを創作する必要があります。もう打つ手がない場合は諦めてください。テクニックには賞味期限があります。賞味期限を延ばすテクニックもありますが、どのテクニックもいずれ効果がなくなります。ちなみに、イルカを離さないテクニックでは、離れないイルカを育てる事はできません、欲張ってはいけません。
C.離れないイルカを育てたい
基本に忠実が近道です。離れない状況で、離れないことを強化する、これしかないです。
離さない状況とは全く違いますので注意してください。ほっといたら離れてしまう状況で、トレーナーが離さない努力(テクニックですね)を使って作り出した状況は、離さない状況です。悪い行動が始まった後で(イルカが離れそうになってから)、テクニックという強化子が提示されています。しかも、このような状況で離れないことに餌をあげても、強化されないことが多いです(餌の強化効力が低下します)。結果、自ら離れない事を選択するイルカからどんどん遠ざかってしまいます。この状況では離れないイルカは育てられません。
・イルカが自分で考えて、離れないことを選択しやすい状況作り
・離れないとイルカにとって良い事が得られる設定
かならず良い事はイルカが行動した後で出現する必要があります、強化子を出す順番を間違えないように。
イルカを変えようとするのではなく設定の見直しです。今まで正しいと思ってやってきた事でも変える必要があります。トレーナー自身の考え方を変える必要があります。今までの自分が否定されるように感じるかもしれませんが、でも変えないと離れは止まらないです。
「そんなことは分かっている、今までやってきたけどイルカが離れるんだ、どうにかしてくれ」
という切実な声が聞こえてきます。そんな時は躊躇なく問題の後回し、テクニックの使用をお勧めします。テクニック大切ですね。ただし根本解決は、後回しするほど困難になりますけど。
すぐには無理ですが解決できます、時間が必要ですが大丈夫です、チャレンジしませんか。
・出来る範囲の事だけやってたら、それ以上出来るようにはならない。
・出来ないことを求めても、出来ないものは出来ないので、トレーニングは進まない。
トレーニングが進むのは、出来る事と出来ない事のハザマ、グレーゾーンに挑戦している時です。このグレーゾーンが広い場合は、設定が簡単なので、だれがやってもトレーニングは進みます。逆に、グレーゾーンが狭く、適切な設定を見つける事が難しい場合、技術のあるトレーナーじゃないと動物の行動形成はできません。イルカの離れが改善していくトレーニングの設定をきっと見つけられるはずです。トレーニング計画が適切で、ブレずに毎回同じ設定をイルカに提示して、OK基準もブレなければ、動物の行動は変わっていきます。設定をするときには、取り組む種目の内容、種目の順番、挑戦できる時間と回数、使う道具、場所、餌量、強化子の効力、体調、個体関係に配慮、イルカの都合を考えてください。どうしても離れない状況を作ることが難しい場合は、イレギュラーですが、テクニックを使って離さない状況からのトレーニングする方法もあります(お勧めしませんが)。テクニックをトレーニング要素の一つとして盛り込み、計画的にテクニックの使用頻度や強度を少しづつ下げていきましょう。計画的に実施することで、テクニック不要の離れないイルカに一歩ずつ近づいてい行きます。ただし、設定に盛り込まれていないテクニックを無計画で使ってしまうと、イルカが自分から離れないことを選択するチャンスを奪う事になります。無計画なテクニックがすぐに入り込んでくるので、私はあまり使いません。
イルカが自分で考えて、離れないことを自ら選択し、トレーナーによって強化され、その結果離れない行動の頻度が上がってくるまでは時間がかかります。結果が出てくるまで我慢が必要です。我慢はつらいので離れる状況を楽しみましょう。イルカが離れる事を織り込み済みのプログラムやショーやトレーニングの構成を立てると一気に楽になりますので試してみてください。
D. 部下や同僚に「とにかく今だけイルカを離さないでほしい」と願うアナタへ
事前の細かな打ち合わせが必要です。どうしてほしいかリクエストをしっかり提示しましょう。イルカを離さないテクニックも必要です、どうすればよいか、どうしてほしいか対処方法について情報共有しましょう。有効なテクニックも教えてあげましょう。しかし、テクニックを使うことが出来ないスタッフに対してイルカを離さないことを求めてはいけません、無理です。その場合、目的はスタッフ育成になりますのでEへ進みましょう。
E. イルカを離さない技術を持つスタッフを育てたい
スタッフ育成には、説明と試してみるチャンス(失敗するチャンスとも言います)が必要です。イルカが離れないことがどれだけ大切な事なのか、また、どうすれば離れないのか、相手が頭で理解できるまで説明してあげてください。次は経験、やってみないと出来るようにはなりません。イルカが離れても大丈夫、失敗しても大丈夫な状況を作ってあげてください、失敗しても出来るようになるまで励ましましょう。
もし、自分自身がイルカを離さないテクニックを知らない場合は、テクニックを教えてはいけません、励ましだけで十分です。怒ったらダメです(反省)。
F. 離れないイルカを育てられるスタッフを育てたい
基本Eと一緒ですが、より難しくなります。人はだれしも楽な方向へ、その場しのぎのテクニックに流れてしまいます。離れないイルカがどれだけ素晴らしいもので価値があるものなのかじっくり説明してください。離れないイルカを育てられるということは、どういう意味があるのか、是非たっぷりと議論してください。この際、若干洗脳気味でも良いと思います。意思統一ができれば、あとはチャンスをあげるだけ、出来るようになるまで待ってあげましょう(私は待つのが苦手です)。
G.関与したくない
ステージに一人残されたスタッフに関与したくないと思っているアナタ、他にも関与したくないものはありませんか?
・離れるイルカ
・頑張っているのに出来ない自分
・批判や非難ばかりしてくる周囲の人たち
・テクニックを使って余計に離れるイルカを育ててしまうスタッフ
・離れるイルカに関心のないやる気のないスタッフ
・離れるイルカを放置している管理職や経営陣
今アナタに必要なことは休息と充電です。関与したくないものからしばらく距離を置きましょう。
今回はちょっと小難しくて理屈っぽかったので、まとめです。
・問題解決が難しい時には細かく分解しましょう。
・離さないと離れないは違います。どちらがお好みですか
・離れないイルカを育てたいなら、やっぱり基本通り、イルカの都合も考えて。
次回もお楽しみに。