5. 病院探し

 納得いく病院探しだ。
 私の乳癌の状態は、今のところ非浸潤。癌については切除すれば治療は終わる。
 再建は絶対する。となると、形成外科のレベルが俄然気になる。乳房再建が得意なところ。かつ、乳腺外科と連携できているところが理想だ。

 自宅から通うことを考えると、このままK病院というのが一番楽。
 担当医はプライドが高くインテリな話し方だが、話す内容は真っ当だ。専門医で年齢が高い分、スキルもあるだろう。ただ、形成外科は、乳腺外科と同時に出来たばかり。地方から一人医師がやってきたのを知るだけで、得意分野もスキルもセンスも分からない。

 地域のがん診療連携拠点病院。通常選ぶならここだろう。
 だが形成外科のHPを見ると、得意分野は頭頸部らしく、乳房再建についてはあまり書かれていない。乳房再建手術数も少ない。担当医の顔写真にもピンとこなかった。

 近くで通えそうなところを検索すると、S病院が出てきた。
 そう大きな病院ではないのに手術数が驚く程多い。院長に絶大な人気があるようだ。確かに優しく穏やかな微笑み。
 再建については?医師の姿が見えてこない。乳癌手術数の割に形成外科の診察日が少なく、手術方法についても詳しく書かれていない。

 放射線治療がなく、手術だけで通院が少ないなら、都心の選択肢も考えられる。
 がんセンター中央、聖路加、有明、亀田…有名どころも頭に浮かんだが、ハナからそこまでして行く気はない。そもそもそんなところは重篤な人が優先で、非浸潤癌など診てくれそうもない。※

 Z病院はどうだろう?
 Z病院の存在は最近まで大して知らなかった。Dさんの大学時代の友人と3人で食事をする機会があり、そこでその友人のZ病院での乳癌治療談を聞き、乳癌で有名な病院だということを初めて知った。
 彼女は検診でひっかかり、仕事先に近い病院を探してZ病院に辿り着いた。仕事をしながら抗がん剤も放射線治療も乗り切り、7年経過したからもう平気、とエネルギッシュだった。かつての職場の子とはまるで違う。彼女の話は興味深く、印象に残っていた。

 Z病院の最寄駅はX駅。都内でもうちから近い方だ。電車の乗り換えを考えたら、通院時間はS病院とそう大差はない。

 HPを見てみる。
 乳腺外科医長のT先生は歳が近い。外科医として脂の乗っている時期だろうし、飾り気のない風貌にも好感が持てた。他は女医ばかりだが、科自体は風通しが良さそうな雰囲気だ。
 女医差別の意識は全くないが、女性的なものを診てもらうのは、男性の方がかえってうまく行くと思っていた(婦人科などそうでない場合もあるけど)。同性同士では些細な食い違いが許せないが、異性ならば割り切れる。

 形成外科は?乳房再建について特設ページがあった。術式、質問事項まで、細やかに分かりやすく作り込まれている。全体的にほかの病院より文面に温かみがある。「患者の気持ちや生活背景を考慮し最適な手術を」という言葉が印象的だ。乳房再建への確固たる自信も感じられる。なにより部長のY先生の柔和な顔立ちに安心感を覚えた。
 この2人に診てもらえたらどんなにいいだろう。
 Z病院への気持ちがぐっと高まる。


(2018年5月26日~6月6日)


※誤解のないよう付け足し※
当時の私の思い込み。
状況によることもあるだろうけど、どこの病院でも同じように受け入れてくれるはず。
乳癌の状態は十人十色。ステージで簡単に割り切れるものではない。
術前の診断が術後に変ることもままあるし、その人の体質などで手術自体リスクが高いこともあるし、同時再建の選択肢まで入れると、術前の診断が「軽く」ても、「軽い」治療なんてどこにもないんじゃないかな。…って、今なら分かる。

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