4. 乳がんとは

 乳癌について調べる。浸潤、非浸潤、ステージ以外にタイプによっても分類されている。
 面倒くさい。ひたすら面倒くさい。なんでこんなこと覚えなくちゃいけないんだ。

 ネットの情報は玉石混交だと医師も言っていた。確かに世には謎の民間療法も出回っているのは見聞きしていたが、まったく興味がない。正確な、オーソドックスな事実が知りたい。
 オフィシャルはどこ?

 最初に目にしたのは、国立がん研究センターがん情報サービスのサイト
 次に日本乳癌学会の診療ガイドライン。Q&Aもあり、かなり細かくフォローされている。
 そしてがん研有明病院など、いくつかの大きな病院の乳腺外科のサイトで受診までの流れを掴む。


 乳癌は、乳腺組織にできる悪性腫瘍。乳管内に留まっている状態を非浸潤癌、乳管の外に広がったものを浸潤癌という。小葉にできる乳癌は小葉癌という。

 検査によって、癌の広がりの程度や性質が分かる。その情報から、進行度合い(ステージ)、指標(サブタイプ)に分類し、治療法が決まる。

 ステージは、しこりの大きさや腋下リンパ節・多臓器への転移の有無で0~Ⅳ期に、サブタイプは、ホルモン感受性の有無、HER2タンパクの発現状態、Ki67(増殖の速さ)を組み合わせ5タイプに分類される。
 女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)受容体が発現するルミナールタイプが全体の7割。HER2タイプが2割、ルミナール、HER2、どちらでもないのがトリプルネガティブ。
 癌の悪性度(異型度)というのもグレード1~3まであって、数値が高いほど進行速度や再発リスクが高くなる。前に医師が言っていた、私の癌は「顔つきがいい」というのはこのことか?

 何度読んでも目が泳いでしまって、頭に入ってこない。

 癌のある場所、大きさ、個数などによって、全摘なのか、温存できるか、が変わる。
 全摘、温存、でまた治療法が変わる。
 更に乳房を切除したあと、乳房再建をすることも出来る。再建するなら腫瘍の切除と同時か、それとも癌治療が終わってからか。
 再建方法は何を選ぶか、どの方法が自分に適しているのか。

 これらについて病院を替える前までに、ある程度頭に入れておかなければ…。
 医師に質問も出来ない!


 検査段階から状況を告げていた友人・DさんとNに、グループLINEで乳癌だったと報告をした。
 ただ、「0期でよかったね」と言われるのだけは我慢が出来なかったので、先手を打って「そう言われるのが一番辛い」と書き添えた。
 MRIの結果次第かもしれないけど…0期だって全摘なんだ。

 Nより
「Dさんも私も悲しんでます。」
というメッセージが入る。

 悲しんでるって、何。

 西洋医学を否定しているNは、立て続けに

「しなくてもいい手術ってあるよね」
「〇藤誠先生の本読んでみて」
と畳み掛ける。持論を展開する。

 自分の信頼する先生の病院だとURLが送られてきたが、緩和ケアのみのところだった。
 いや、手術すれば5年生存率100%なんだけど。
 「私、今度ここの先生に訊きに行ってくる。」
 いや、人づてに聞いた情報だけで病院行くなんて、そこの先生にも迷惑だからヤメテー。

 えぐられる。
 普段は適当にやり過ごせる健康話も、真実味を持って突き刺さった。
 私のガス抜きのためにとその後何度も会おうとアプローチされたが、会えば現状を説明し、自分の考えを話さねばならないかと思うとうんざりした。何故、わざわざ。


 翌日になって、悪さをしないかもしれないモノが乳管に存在しているのではなく、癌という凶悪なヤツが今は中に留まっているのに過ぎない、ということに、やっと気付いた。
 ただ、0期の乳癌は本当に手術をしなければならないのだろうか。このまま一生、浸潤しないでいるかもしれないのに?0期は前癌状態とは言えなくない?
 何度も考えが元に戻る。
 「しなくてもいい手術」という表現も一理あるような気もする。

 考え出すと頭の中がごちゃごちゃになった。
 私の癌は今は浸潤していない。細かいことを今は覚えない。シンプルに手術のことだけを調べよう。


(2018年5月26日~6月6日)


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