7. 選ぶ!
6月8日、子宮頸癌検診のために、レディースクリニックへ。乳癌治療に向かう前に、調べられるところは調べておこう。
乳癌検診と同じく、40になってから、2年に一度の子宮頸癌検診は欠かしていない。
30代で、子宮ポリープ切除、子宮体癌疑い、とそれ以前にもお世話になることがあったし、生理不順があれば出向くので、なんだかんだ、だいたい一年に一度は行っている。母もかかったことがある、女医が経営するレディースクリニック。産科がないので余計なストレスがない。医師はテキパキとして明朗で、看護師さんたちも気さくで優しい。
これが男性医師だったら?ずかずか細かいことに口出しするタイプだったら?こんなに気負いなく受診していないかもしれない。
内診台に座る。
ゆっくり椅子が回転しながら背もたれが倒れ、同時に両脚が左右に離れていく。座面の前側半分が下に折れ曲がり、セット完了。
「あのー。実は乳癌になりました。」
「あら…。そうですか。」
カーテン越しの医師の手が止まったまま固まっている。
げげ!しまった、このポーズの時に言わなきゃよかった。はよぅ、はよぅ検査を…!
診察室に戻るといつものようにハキハキと笑顔で対応してくれた。
ついでにホルモン剤について訊く。前年末に生理の量が増え、貧血になった際に使ったピルはプラノバール。その4年前の生理不順では中用量ピルのソフィアA。それらと、今後治療に使うかもしれないホルモン剤との違いは?
「まったく逆よ。女性ホルモンを増やして生理周期を整えるのと、ホルモンの働きを止めるものだから。」
うーん。そういうことか。
治療が必要になるような生理不順にまたいつなるか分からない。毎回生理が来る度に、今回は普通で終わるか、この半年ビクビクしている。ピルが使えない場合はどうすればいいのだろう。
「漢方とか、止血剤とか、なんとかして止めます。その時はこちらでなんとかしますから!」
断言。よし、あとは先のこと考えます。
後日、頸癌異常なしの通知が届いた。
6月13日、MRI検査の日。
MRIは今まで2度受けたことがあったが、造影剤を入れるのは初めてだった。うつ伏せになり、胸元をはだけ、二つに開いた穴に胸をセットしそのまま約30分。肋骨が痛い。
検査を終えた後、紹介状を受け取る為に乳腺外科の受付へ行く。
看護師が転院前だが検査結果の説明を受けるかと訊いてきた。先日の診察が長引いたことを謝ろうか。
扉を開けると医師は、前回までとは違う高い猫撫で声で、
「はい、これが癌の部分ですね。治療法に関しては、転院先の先生が決めるということでね。」
とあっさり終わらせた。これ以上話しかけるなオーラ。
「ありがとうございました。」
とだけ言って診察室を後にした。詳しいことは分からないままだ。
もうこの医者と顔を合わせることはないだろう。
帰宅後、夕方に体が熱くなった。微熱。薄ら気持ち悪さも出たが、どちらも数時間で治まった。
翌日、また訓練校の踊り場からZ病院の予約センターに電話をかける。
希望の医師がいるか聞かれる。
「T先生お願い出来ますか?」
「T先生なら、一番早くだと翌週火曜、10:00だけ一つ空きがあります。」
「それでお願いします。」
火曜なら、形成外科のY先生も入っている。両方の先生に診てもらうことが出来るかもしれない。火曜がベストだ。
乳癌治療は選択肢が多い。いつも目の前に二つの道が現れて、どちらを選ぶか尋ねられる。道を一本間違えてもなんとか修正出来るが、いくつか間違えたらとんでもないところに辿り着く。
自分が選んだ道は、果たして合っているだろうか。
(2018年6月8日~6月14日)