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婚活で悩む友人の話を聞いていたら、言いたかった事を逆に言われた話。
「超大事な相談なんだけど、私すごい悩んでるの」
居酒屋の席でAはBに言った。Bが優しく、どうしたの、と聞き返すと、
「やっぱり結婚するなら顔かな?それともお金?」
とBに質問した。私は、寝言に返事をしてはいけないという迷信を知ってはいたのだけれど、思わず、
「なんでどっちかは得られる前提なの?」
と聞き返してしまった。Aは私の質問が耳に届かなかったようなので、やっぱり酔いが回って寝言を言っていたんだと思う。
どうやらAは婚活中らしい。Bは充実した結婚生活を満喫している女性。一方の私は結婚もしていなければ彼女もいない。当然私に発言権はない。ただ、Aの発言があまりにも面白くて、これは芸人でいうところの「楽屋コント」だな、と理解し、
「確かにA程の女だったら顔もお金もどっちも両方取れると思うけど、まず両方持ってる男って中々いないもんねぇ」
と、乗っかった。Aは困った顔を浮かべながら、
「そうなんだよねぇ。やっぱり結婚後は自由な仕事をさせて欲しいし、でも顔が好きになれないとムリって周りのみんなが言うからさぁ」
と答えてくれた。良かった。やっぱり、コントだったようだ。オーディエンスのBはずっと引き攣った顔をしているが、いずれ乗ってきてくれるだろう。私はどこに「オチ」があるのか見当もついていなかったが、まずはいずれ来るであろう大オチに向かって、どんどんフリを効かそうと判断した。
「やっぱり条件が整ってる人ってわざわざ婚活サイトとかに登録なんかしないだろうし、すでに相手も居たりするだろうから、掠奪っきゃないね!リンフーよ!リンフー!」
私は盛り上げたが、どうやらこのフリはお気に召さなかったらしく、Aは能面のモノマネをした。もしかしたら、やっぱりコントではなかったのかもしれない。
だったら、私も言わせてほしい。お前、ずっと良い女スタンスでいるけど、この前別の友達がお前のこと貴景勝に似てるって言ってたからな!良い女スタンスの貴景勝。周りからしたらすでに立派なコントである。
Aが席を外した時、Bはため息をつきながら私に言った。
「あの子は、あの考えのままじゃ、もう婚期逃すね……」
私の価値観、ものの見方が特別おかしいのではないと知り、少し安心した。本当にあったちょっぴり怖い話である。
多分Aは、被害者なのではないかと思う。
Aの話を聞いていると、周りの女性は極端なことを言う人が多いようで、例えば前述の彼女の発言の通り、
「かなりのお金持ちと結婚したけど、やっぱり顔が好きになれないからダンナとは別の彼氏が数人いるよ!」
という自慢や、
「ウチは共働きだけどとにかく顔が良いから顔見てるだけでなんでも許せる!」
などのマウントの取り合いを見ているうちに、自分の中のバランス感覚が狂ってきているのではないだろうかと思う。もしかしたら、そんな彼女らをみて、それ以上の相手を見つけてやる!と言う気持ちもあるのかもしれない。
身近な友人の話から顔、金に囚われているのかもしれないが、もしも世の人間の結婚の判断基準が金と顔だけしかなければ、人類はとっくに滅亡している。「愛だろ、愛っ。」と、永瀬正敏も言っていた。
それに、よく考えてみてほしい。お宅のご両親、2人とも美形なの?そうじゃないよね、わかるよ。じゃあ、実家はお金持ちなの?あ、そう。それならごめんね。
金が大事なのはわかる。あるに越したことはないし、キレイごとなんて置いといて、あればあるだけ良い。私だって今すぐ油田の権利が欲しいし、何かの間違いで聖書の著作権が私に紐づけられないかと思っている。
顔だってそうだ。美人と一緒にいると気分が良くなる。もし深田恭子が毎朝ご飯を出してくれるなら、そのご飯が近所の野良猫の食べ残しでも良い。
勿論、金と顔を求める事自体は決して悪いことではないと思う。だけど、顔と金だけが基準でいいのか?顔と金に執着するよりも、「長い結婚生活」を思うのであればもっと別のところに目を向けなくてはならないのではないだろうか。
例えば、子供への教育観とか、お互いの生活態度とか、休日の過ごし方とか。物の好みや、それらの言葉で表せない、空気感であったりとか。婚活で挙がる条件の話って、そういうことじゃないの?と私は思う。
まぁ、その辺は各個人の価値観だし、自分が本当にそれで幸せになるので有れば、それを求めるべきである。なにより、金も顔も持ってない独身男の私に言われる筋合いはなく、言ったところで負け犬の遠吠えにしか聞こえないだろう。
しかし、私が本当に言いたいのは、その話ではない。サビはここからである。
「なんで求めるものが得られる前提なの?」
これである。頭の部分でもサビを出していた。小室哲哉お得意のフォーマットである。
私が言うまでもなく、婚活とは、条件のマッチングの世界であるはず。年収2000万の男を狙うなら、それに見合う何かを提示しなければならないのではないだろうか。
顔だってそうだ。私はこれまであなたの顔に群がってきた女と違い、こんなことが出来ますよ、と言うアピールポイントが必要なのではないかと思う。
それなのになぜ、この貴景勝は高めのチョイスができるスタンスなのだろうか。もし私が吉岡里帆に求婚するとしたら、まず持参金で8億円用意するところから始める。
吉岡里帆が金で動く女、と言うことではなく、私と吉岡里帆の間にある溝を埋めるには、最低それくらい用意してようやくイーブン、という話である。
恐らく、貴景勝は周囲からの無責任な励ましに乗せられているのではないだろうか。確かに、「あんた可愛いから大丈夫だよ」とか、「なんだかんだ言ってあんたみたいなのが最終的に幸せになるのよ」とか、「私が男だったら良いと思うけどなぁ」と無責任に励ますシーンをよく見る。その度、我々仲間内の一部は(その励まし、責任とれんのか?)と渋い顔をする。
まぁ、Aも実際に婚活を始めれば婚活の難しさを知り、Bにもっと具体的な相談を持ちかけるようになるのだろう、と思っていたのだが、それからしばらく経って、別の飲み会の現場でも同じようなことを言っている。
これは、もしかすると私の考えや私の常識が間違えているのか?
もしかして、最近の婚活市場って、とんでもないインフレ現象が起きているのだろうか。自分がどうであれ、求めれば金や顔と言ったわかりやすいステータスのうち、両方は難しくてもどちらかは確実に手に入るような市場になっているのだろうか。
モーニング娘。が歌っていた、「どんなに不景気だって恋はインフレーション」というのは、どうやら本当のことらしい。
これは、すごい学びを得た。もしかしたら、私のような月収が6万とどんぐり3つの男でも、バツ8で盗癖があるけど、見た目だけはミランダカー、みたいな女性と結婚出来るのかもしれない。
盗癖があっても、ミランダカーなら全然良い。散々偉そうなことを言ったけど、結局私も見た目が良ければなんだって良いのである。
Aが使っていると言う婚活アプリを使えば、もしかして、犬だって人間と結婚出来るのかもしれない。善は急げ。今すぐAにその婚活アプリを紹介してもらわなければならない。そんな物欲しそうな私の顔を見て、何かを察したのか、
「そういえばあんたも結婚してないよね。結婚興味ないの?そもそも、芸能人でいえばどんな人がタイプなの?」
と、Aに聞かれた。私は少し考えて、
「好きなタイプね。強いて言えばミランダカーかな」
と答えた。するとAは、少し怒った素振りをみせながら言った。
「はぁ?現実見ないとダメだよ」