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わたしは、俗に言う「宮藤官九郎脚本が好きだと素直に言えない症候群」です
同時に、俗に言う「三谷幸喜脚本が好きだと素直に言えない症候群」でもあります。
俗に言う、とは言ったものの、一般的にそんな呼称があるかどうかは知りません。
クドカン作品は、実際のところ好きだ。中3の時期に『池袋ウエストゲートパーク』を見て、高校で『木更津キャッツアイ』や『マンハッタンラブストーリー』。『タイガー&ドラゴン』なんか今見ても最高だし、『未来講師めぐる』の深田恭子は、多分あの時世界で1番可愛かった。唯一全部見た朝ドラは『あまちゃん』だし、今は『俺の家の話』の話の最終回をハラハラして待っているところ。
クドカン作品を全て網羅しているわけではないけれど、普段ドラマや映画をほとんど見ない私にとって、「クドカンか、なら見てもいいか」と言う程には信頼感がある。で、実際見れば面白い。
コメディもシリアスもあり、セリフにちょっとしたクセもある。展開にスピード感もあり、非常に飽きっぽい私が1時間ずっと見てられるドラマというのは、貴重だ。
世間的にもヒットメーカーのイメージが強いと思うし、事実私の世代にファンも多い。私も好きなのは好きなんだけど、やっぱり何故だか、「宮藤官九郎脚本が好きって、素直に言えない」のです。
実際に『タイガー&ドラゴン』は何度もレンタルして見たし、『あまちゃん』が見終わった時は「あまロス」も体験したのだけど、
「クドカンのドラマって面白いよね」
と言われると、
「えっと、クドカンのドラマって、何があるっけ……?」
と、とぼけてしまう。
前述の通り、クドカンだから見てる、ということもあるのに、「別にクドカンって意識して見てないですよ」と、アピールしたくなる。いったい何故だ!?いったい、自分の中の何の気持ちが邪魔しているのだ!?
以前、「クドカンドラマや三谷映画を素直に好きって言えない」と言ったところ、クッと私の目を見つめ、
「それって、なんか、わかる気がする……!」
と、共感してくれた女性がいた。もしかして、「宮藤官九郎脚本が好きだと素直に言えない症候群」の人って、思いの外いるのかもしれない。
その人と他にも素直に言えないシリーズを挙げてみたところ、ふたりとも「世界の果てまでイッテQが好きだと素直に言えない症候群」であることが発覚。
一応誤解のないように。確かに私はイッテQを高頻度で見ているわけではないけれど、見れば確かに面白いと感じる。なんなら声を出して笑うこともある。出ているレギュラータレントが嫌いということも決して無い。むしろ森三中や椿鬼奴は好きな方だ。
けど、なぁーんでだか胸を張って好きだって言えないんだよなぁ。
それらの「素直に好きって言えない症候群」の原因について、ずっと不思議に思っていたのだけれど、最近、もしかしたらこれが原因かもしれない、と言う2つの要素に気がついた。
「誰が見ても面白いと思うものを好きと言ってしまうことで、深みがない人間の様に思われる気がして怖い」
つまり、自分はちょっと変わったセンスや一癖ある人間だと思われたいんだな、という心理かもしれない。だとしたら……だ、ダサい!ダサすぎる!
以前、下記の記事で書いた通り、人は好きな音楽で人を判断することがある。
映画やドラマは音楽ほど顕著じゃないけれど、それと同じで、好きなドラマやテレビ番組でも人間性を判断されるのではないか、と言う部分が気になってしまい、誰が見ても面白いと思うラインを避けているのかもしれない。
確かに、是枝裕和が好きって言えば、なんとなく社会派っぽいし、問題意識のある人間に見える。園子温を好きといえば、ちょっとダーティで、ひねくれた変わり者っぽい人に見える気がする。
それと比較して、クドカンや三谷幸喜が好きっていうと、なんだかお気楽なやつだなぁと思われてそうな恐怖感がある。
でも、こればっかりは仕方がない。逆に私も、
「岩井俊二の作品全部大好き!」
と公言する女性に対しては、ちょっと気を遣って丁寧に接してしまう。これは偏見というよりも、ある種の保険である。
もうひとつは、
「クドカン、三谷作品に含まれるコメディ要素にハマってると思われたくない」
という思いかもしれない。ああ!なんだか、こっちの方がしっくりくるかも!
クドカン作品は笑いどころが多い。パロディも多く、台詞回しや展開で笑ってしまう事もある。三谷幸喜もそうだ。『マジックアワー』のラストなんて、声出して笑った。
けど、それで笑ったと公言する時に、ちょっとした後ろめたさや恥ずかしさを感じる時がある。やっぱりここが原因なのかもしれない。
いずれにせよ、この病気の原因がわかったとしても、特効薬はない気がする。
我ながら、他人からの評価を気にして好きなものを公言できないのだとしたら、なんともダサいなぁと恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。穴があったら落ちて欲しい。私以外の全員が。