スルー・ザ・ゴールデン・レーンを読み直そう
◇note初投稿な◇
今回初投稿に至ったのは、ニンジャスレイヤー(と他の作品)の感想を語るにはTwitterの文字数制限が不便だったからだ。
俺がそんなにも語りたかった一話がこのニンジャスレイヤー第3部の「スルー・ザ・ゴールデン・レーン」だ。
(ここまでのあらすじ)
主人公であるニンジャを殺すニンジャ、ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジは、
敵対組織は「アマクダリ」による暗黒管理社会とその先にある野望を打ち砕くために戦い続けていた。
ある夜、アマクダリ打倒への最大の障壁、月面にある巨大UNIXサーバーの人工知能ニンジャ「アルゴス」を攻略する手立てを探していた彼は、
アマクダリ所属のニンジャに追われるピグマリオン・コシモトカンパニー社のエージェント、エシオ・カタリを見かける。
かつてアルゴスを創ったメガトリイ社の子会社であるピグマリオン社、その唯一の生き残りである彼は、
アルゴスの全貌とアマクダリの邪悪で崇高な野望の真実を知っていたためにアルゴスにネットワーク監視され、追われていたのだ。
電脳都市ネオサイタマにおいて、アルゴスからの監視とアマクダリの組織力から逃れることは不可能に思われたが……
最終章に向けて加速する物語!
ニンジャスレイヤー第3部において、この話は「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ」という一連のエピソード群と最終章「ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ」の間に位置している。
アマクダリによるネオサイタマの暗黒管理社会化はほぼ完了し、首領アガメムノンとアルゴスによる謎の野望が見え隠れする中、
ニンジャスレイヤーは仲間と共に必要な情報を集め、反撃のためのカラテを研ぎ澄ます、というのがこの時期の主なストーリーの流れだ。
そんな中、アガメムノンの真の野望と、それが実行されるまでのタイムリミット、そしてニンジャスレイヤーの世界における歴史の真実の一端が明かされる
この「スルー・ザ・ゴールデン・レーン」を契機に、物語はジェットコースターのように加速していくのだ。
“黄金の小径を抜けて”に秘められた多重構造
エシオは彼の持つ技術によりUNIX間に隠されたコトダマ空間(ネット空間のようなもの)上の通路“黄金の小径”を用いることができる。(つまりあるUNIXから経路の繋がった別のUNIX端末までワープできるのだ!)
これを使ってアマクダリの追っ手から逃げてきたのだが、ネット上を渡る性質上、アルゴスによる監視にバレる可能性が高く、
使用できる黄金の小径を潰された結果、かつてメガトリイ社の運営してた屋内型の廃遊園地まで追い詰められてしまった。
困ったことに、ここのUNIX端末は外部に黄金の小径が繋がっていない袋小路状態……そんな中にニンジャスレイヤーが助けにくる、というのがこの物語だ。
タイトルのゴールデン・レーンとは、単純に見れば黄金の小径のことであるが、読み返してみればこの物語の多重構造に気付くはずだ。
小径を渡って袋小路に追い詰められたエシオ
メガトリイ社が「輝かしい未来」と約束したはずのレールの断たれたジェットコースター
四人ものニンジャと、その後続のアマクダリ武装部隊により包囲された廃遊園地
アルゴスによるネットワーク監視がなされたネオサイタマ
追い詰められて先がない状態、このまま黙って進んでも全てが終わってしまう……そんな絶望感を打ち破る手立ては一つしかないのだ。
跳べ、ニンジャスレイヤー=サン!
かつてニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジは死せるサラリマンだった。妻子を喪い、自らも死の淵に立った彼にニンジャソウルが宿り、復讐の悪鬼ニンジャスレイヤーとして蘇った。
しかし彼の復讐の旅路にあったのは血と屍だけではなかった。
幾人かの師にインストラクションを受け、多くの人と出会い、カラテを積んだ彼は、この話の中で今を生きるニンジャとしてネオサイタマに生きることを決めたのだ。
そして彼は、逃走の足手纏いになることを承知で、エシオと彼を守護するオイランドロイドを背負い、
ジェットコースターから、廃遊園地の窓から、ネオサイタマの夜に跳ぶのであった。
アマクダリの白を塗り替える熱量
絶望の未来を打ち破るのは、未来を夢みる熱量である。
ニンジャスレイヤー3部最終章「ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ」においては、ニンジャもモータルも、オイランドロイドも、全てが未来を得るために戦った。
その熱量は、吹雪に覆われたネオサイタマに憎悪の赤い旗を掲げさせ、猥雑なネオン光を取り戻させる。
その熱量は、白い制服のアマクダリトルーパーに多様なファッションをしたネオサイタマの人々が立ち向かう勇気を与える。
ニンジャスレイヤーは忘れかけていた情熱を思い出させてくれる物語だ。
忙しい時こそ、読み返してみるのもいいのではないだろうか。