【12/18(水)セミナー開催レポ】経験を活かして地域で働いてみよう-R60-SETAGAYA-セミナー(保育事業者編)
これからの100年ライフに向けて、地域での新しい働き方を世田谷から創り出していく事業「R60-SETAGAYA-」。12月18日(水)に世田谷産業プラザ2階 三茶おしごとカフェ セミナールームにて、55歳以上の世田谷区民を対象に利用者セミナーを実施しました。
地域で新しいキャリアの可能性を拓く
セミナーの第一部では、経験を活かして地域で働くR60-SETAGAYA-のマッチング事例をご紹介しました。今まで慣れ親しんだ環境から飛び出し、自分がやってきた仕事とはまったく違う業界に足を踏み入れる「越境」にチャレンジしたり、健康のために場所を優先したりと、入り口はさまざま。また、違うものの見方をしてみたことで新しい可能性が拓くこともあることを確認しました。
私たちのライフスタイルは、「学校で学ぶ」「働く」「余生を過ごす」のスリーステージ制といわれるものから、それぞれを組み合わせたり、ニーズに合わせて自分で選んでいくマルチステージ制への過渡期にあります。
100年ライフと言われる中で自分らしい生き方を模索するヒントとして有効なのが、有形の資産だけでなく「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つの無形資産について整理すること。なかでも「変身資産」は、新しいステージに移行していく、まさに現在のような不確実な状況に対処する能力のことを指します。
・自分への理解を深めること
・躊躇せずさまざまな人とつながりを持つこと
・新しいことに対してもオープンな姿勢を持つこと
これら「変身資産」を活かすポイントをお伝えし、自分らしい生き方・働き方について考えるヒントにしてほしいとお話ししました。
その後、参加者のみなさんとともに、これまでのスキルと経験を棚卸するミニワークを体験。何度かセミナーに参加してくださっている方は、手がすらすらと動いているようでしたが、初めての方は悩みながら言葉を絞り出している様子が見受けられました。
自分自身のキャリアを見渡すときには、ビジネスキャリアだけではなく、ライフキャリアとよばれる生きてきたうえでの体験も有効です。自分と向き合う時間は、普段の生活ではなかなかとれないかもしれませんが、自分が気づいていない、盲点の部分も人からフィードバックしてもらうことで自己認識は広がります。また、積極的に自己開示することでより自分のことを分かってもらえるようになり、理解し合えるようになることもあります。ぜひR60-SETAGAYA-を通して、地域の中で自分自身を探索したり可能性を広げてほしいとお話しました。
多世代交流がうむ価値
第二部は、登録している事業者の声をご紹介。今回は社会福祉法人杉の子保育会 池尻かもめ保育園から園長の吉澤さんにご登壇いただきました。参加者からの質問にもお答えいただきながら、事業の説明と実際に働いている方の様子などをお聞きしました。今回一緒に参加してくださる予定だった、現在池尻かもめ保育園で勤務しているMさんは、体調不良のため欠席となりました。
1979年に創設された杉の子保育会は今年で45周年。世田谷区の社会福祉法人では長い歴史を持った保育会です。当初40名の小さな保育園からスタートしましたが、現在では世田谷区に11施設。300名ほどのスタッフが日々800名ほどの子どもたちの保育に携わっています。
30名定員の小さな園から100名規模の大きな園までさまざまですが、共通しているのは「ともに育ちともに生きる」をモットーに、子どもも一人の人間として真正面から向き合うという姿勢です。子どもたちにとって、保育園は朝から夜まで一日の大半を過ごす大切な場所。そのため、スタッフは『先生』ではなく、愛称で呼ばれています。これは、子どもたちとより近い距離感で、共同生活を楽しむための工夫のひとつです。
また、家にいるような感覚で色々なことを体験してほしいという想いから、本物の体験も大切にしています。保育スペースに観葉植物を置いて育てる機会をつくったり、園庭の実のなる木からシロップをつくって食べたり、染物体験や子どもたちでピザをつくる体験などもしています。失敗することもありますが、自分の手や五感を使って経験したことは子どもたちの記憶に残ります。経験から学ぶことの方が大きいと考えています。
また、普段の遊びの時間にも、自分で決めた遊びをとことんできる「コーナー保育」をとり入れるなど自主性を重んじた保育を行っています。
ーー「コーナー保育」をとり入れることのメリットについて教えてください。
実は一斉保育をする方が、大人の側は楽なんです。しかし、保育園は朝7時30分から来る子もいれば、9時に来る子もいて登園時間がバラバラなため、気持ちの整い方にも時間差があります。一斉保育を行うことで気持ちがついていかない子どももいるのです。その点、コーナー保育は、そのときに自分がやりたいことを途切れずにできるため、子どもたちの満足度も上がりますし、心も整いやすくなります。
もちろん、好き勝手してもいいというわけではありません。ある程度の時間は決めておくので、子どもたちは、遊びの中で自分で時間を調整する能力を身に着けていくことができると考えています。
ーー現在、池尻かもめ保育園で働かれているスタッフについて教えてください。
MさんはR60-SETAGAYA-からご応募いただき、2年ほど前から働いてくれているスタッフのひとりです。当初は子どもたちの乗り物小屋製作をお願いしていたのですが、完成後も保育園内の細かな修繕をするなど、園内の困りごとを解決してくれるスタッフとして週に3日、1日3時間保育園で働いてくれています。
もともと手作業を得意とされ、ご自宅には工房もあるというMさん。勤めていた会社を定年退職後、おもちゃを直す活動などをされているそうです。現在は保育園内の施設で子どもがケガをする可能性がある場所を見つけると修繕の提案してくれたり、使わなくなった資材を有効に利用する方法を考えてくださったり、保育園では欠かせない存在になっています。
また、もうお一方R60-SETAGAYA-を通して来ていただいているスタッフは、子育て経験はありませんが、お花を植えたり剪定を得意としており、いつも園庭をきれいに整えてくれています。
それぞれ保育園内で子どもと接する機会はありますが、まずはご自身の得意を活かして働いてくださっているように思います。
そのほか、スタッフの中にはさまざまな事情を抱えた方がいらっしゃいます。杉の子保育会では個々の働く意欲を大切に、面談を通じてそれぞれに合った分野で活躍できる環境を整えています。
ーーR60-SETAGAYA-のミドルシニア世代が保育園で働くことについて、どうお考えですか。
現在池尻かもめ保育園では、20代から80代までの多様な年代のスタッフが働いています。誰が教えたわけでもないのに、年代の上の人と接するときには大きな声で話したり、相手に合わせて子どもが向き合い方を変えることがあり、その調整能力に驚かされます。人に対する配慮が自然にできるようになっているのかもしれません。多様な人が集まり、人と人が対峙する保育園は、社会に出る前のプレ社会として世の中を学ぶ場になっていると感じています。
また、働く若手のスタッフにとってもミドルシニアの方々がお持ちの経験や多様な価値観に触れることは、大きな刺激になっており、世代を超えたつながりが生まれています。
応募をいただいた当初は、これまでの経歴とは違う分野の職場で働いていただけるのかと半信半疑な部分もありましたが、新しい提案をしてくれたり、どんどん仕事も進めてくれたり、園を活性化してくれています。両者をつなぐR60-SETAGAYA-というプラットホームの存在があってこその出会いに、とても感謝しています。
参加者からは、参加してみたいが従来とは異なる保育の方法に自分がついて行けるか不安だという声も。吉澤さんからは「保育方法に関して毎回保育士からのレクチャーがあるので心配ない」という説明があったうえで、年代が違えばいろいろな考え方があり、子どもたちがその多様性に触れることも大切にしていきたいというお話がありました。
世田谷区では一時期1200名ほどの待機児童が発生し、保育園に入れない子どもたちが行き場を失った時期がありました。現在、保育園の状況は緩和しましたが、今度は小学生の待機児童の状況がひっ迫しています。その状況を受けて2025年より杉の子保育会でも小学生の学童クラブ「さくらっこ」を開設することになり、現在スタートスタッフを募集しています。
(ワークショップを受けて)
9月より1セミナー1事業者に登壇事業者を絞って開催しているR60-SETAGAYA-セミナー。会社の雰囲気をお伝えしたり、これまで持ってきた業界へのイメージを刷新してもらいたい、という想いがありました。
今回参加したきっかけについて「R60-SETAGAYA-に興味があったから」を挙げた方は半数以上。スキルの再構築をして新しい働き方を選択するという生き方に関心があるまっていることを感じます。また、セミナーの中でも熱心に質問が飛んだり、セミナー後に個別相談に進まれた方もいました。皆さんの一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
R60-SETAGAYA-について
R60-SETAGAYA-では、ミドルシニアが「自分らしい働き方に出会う」ための仕事作りを行っています。
これまで暮らしてきた身近な地域・世田谷で、ミドルシニアからの新しい働き方をはじめてみませんか?
【現在、R60-SETAGAYA-に掲載されている杉の子保育会の事業所一覧】